もう4年か5年は経つだろうか。ある日、家で父が私に「人生は夢物語」と言ったのを覚えている。私は「夢じゃないよ。現実なんだよ!」と返したのを覚えている。庭に出ている時の、ほんの短い時間のやりとりだったような。そんな記憶。

 

父が亡くなってもう結構過ぎてしまった。父がいつもいた時のことは現実だった筈なんだけど、夢のように思えてしまう。父はあの時、きっと祖父母のことを思い出していたのかもしれない。

 

どちらかと言うと父は上手に感情を話せる方ではなかったような。質問に答えられないことも幾度かあった。親子ならいつかは解るだろう。そんな感じでもあった。私はその時に話してもらいたいのだが・・・。

 

同じ家に一緒に長く暮らしていても、伝わらない事はあるんだなぁと。寧ろ、その伝わらない事こそが大切で大きなことなのかもしれない。ある時、自分から自然に気づいて初めて共感できたということなのかもしれない。

 

それでももっと父に感謝を伝えておけば良かったと悔やむばかり。財産の多くない我が家では、相続登記申請書に書けないことのほうが多かったのかもしれない。