草野くん、それが普通だよ。 | clover chronicles Ⅱ

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b-flower・Livingstone Daisy 八野英史の音楽年代記 クローバークロニクル2

スピッツの草野くんが倒れた。急性ストレス障害。
「今回の大震災の地震自体の体験したことのない大きな揺れ、続く余震、想像を絶する被害の甚大さ、
 その悲惨すぎる現実が連日連夜メディアで報道され続けること、福島第一原子力発電所の深刻な状況
 など、それらすべてを感じ、目の当たりにし続けることで、本人に急激な過度のストレスが襲い
 かかってしまい、精神的な障害にまで発展してしまった」との公式HPでの発表。

15年以上も前に一度雑誌の対談で顔を合わせただけの僕が、知りあい気取りで何を寝ぼけたことをと
言われるかもしれないけど、草野くん、こんなことが起こったら人間そうなるのが普通だよ、きっと。
人としてマトモな証拠だから何も気にすることはないと僕は思う。

b-flowerはデビューしてからというもの、あらゆるところでスピッツを引き合いに出されて比較を
されていました。
僕はその対談(草野くんとフィッシュマンズ佐藤くんと僕の3人)当時は、かなり英国インディーズ
狂いが強くなっていた時期だったので、何をもって「匂いが似てる」と言われるのかが、あまりよく
理解できなかったのですが、実際、b-flowerのファンにはスピッツファンが多く、僕らのライブの
アンケートでの「他に好きなバンド」の欄にはスピッツが最多登場バンドでした。
(だから今回、このブログを読んでくれてるb-flowerファンの中にいはるスピッツファンに向けて
 書こうと思ったのです)

あの対談での草野くんには明らかに「メジャーに立ち向かって、何が何でも生き抜いてやる」という
静かな闘志が感じられました。それは肉食動物がその力で他を制圧して君臨するのとは正反対の、
草食動物が「生態系になくてはならないもの」として存続し続けようとするあり方とでも言えばいい
でしょうか。
今でこそ「草食系」なる言葉が氾濫していますが、その頃は、そのようなあり方は稀だった
と思います。

その後、ご存知のようにスピッツは、迎合するでも頑になるでもなく、しなやかに自らの音楽を
貫きながら多くの人に受け入れられていきました。

僕は草野くんの、そしてスピッツの草食動物としての強さに驚くばかりでした。
この弱肉強食のポップミュージック界で常に自分たちの音楽を作り続けながら生き抜いていく
さまは見事の一言です。

今日、僕は何気なく聴いていたFMラジオからアホすぎる曲が流れて来て久々に頭にきました。
なんでも震災の次の日だかなんかに風呂に入っててうかんだ曲だそうで、さっそくアレンジして
CDにまでしたのだそう。ぬるいバラードで「今できることをやりましょう~」っていうような歌詞で、
「なんじゃそれっ、そんなことみんなわかっとんのじゃボケ」と声に出して罵ってしまいました。
「感受性」というものを0.1mgでも持ち合わせていればそんなクソみたいな曲は歌えないはず。

そんなものの対極に存在する草野くんがこの状況にやられてしまったのは、人としてとてもマトモな
証拠であり、それは一時的なショック状態にあるだけで、一過性の症状であるのは間違いあり
ません。だからなんの心配もないよ草野くん、そしてスピッツのメンバーさんやファンのみなさん。
だってあなたとあなたのバンドは草食動物界最強なのだから。