クルーネック・セーター | clover chronicles Ⅱ

clover chronicles Ⅱ

b-flower・Livingstone Daisy 八野英史の音楽年代記 クローバークロニクル2

$clover chronicles Ⅱ-cafe blue

You're The Best Thing / The Style Council
            Album「cafe Bleu」


セックス・ピストルズ、クラッシュとともに、パンクロックのメインストリームを
突き進んでいたと思われていたThe Jam を解散し、ポール・ウェラーが83年にスタート
したのが、ご存知このスタイルカウンシル。

ジャム時代、モッズスーツに身を包み、髪の毛を立て、エレキギター、ベース、ドラムの
3ピースで荒々しくがなり立てていたあのポールウェラーがクリームイエローのクルー
ネックセーターにオールバックで、しかもシンセベースすよ!

確かに後期のジャムはパンクの性急さよりも、どちらかというとモッズらしくモータウンや
リズム&ブルースの色を濃く出して、ブラスセクションを導入したりはしていましたが、
スタイルカウンシルになってのメジャー7thや9thコードを多用したメロウなソウルや
ファンク、ボサノバタイプの楽曲は僕らの世代の音楽をやっている人に大げさでなく
「衝撃」を与えました。

パンク精神(くだらないものは「くだらない」と唾を吐く)に共鳴していたはずが、
いつのまにかパンク、ニューウェーブの「くだらない形式」にとらわれるように
なってしまっていた僕たちに「パンクというのはスタイルじゃないんだよ」と
まさに「スタイル評議会」というバンド名通りの新しい道を指し示してくれたのです。
その音楽性は、ポール・ウェラーの持つ本来の意味でのパンク精神と誠実さの表れだと
強く感じます。

それは音楽性だけでなくファッションにも表現されていました。
それまでのパンクも含めたロックミュージシャンの硬直化したイメージを意識的に
打破してやろうという「毒」が感じられました。

先に触れた「You're The Best Thing」もそうですが、
Long Hot Summer」のプロモビデオではボートに寝そべってデニムのショートパンツと
半袖の赤いシャツ、肩にはセーターを羽織ってます。相棒のミックタルボットはブリティシュ
トラッドな紺のダブルのブレザーに白いパンツ、胸には赤いチーフと、およそそれまでの
ロッカーとはかけ離れたファッション。

My Ever Changing Moods」ではサイクリングファションでただ自転車を走らせるだけ。

強烈なカウンターパンチです。

ただ国民性の問題でしょうか、なぜかスタイルカウンシルの評価はイギリス本国では
ジャムほど高くなかったようです。

日本では「オシャレな音楽」として多くの人々に消費されていき、ある意味それは
ポール・ウェラーにとって思惑通りだったんじゃないかとも思います。

「オシャレ」という上澄みだけすくいとってスタイルカウンシルの音楽の真似をしようと
しても、なかなかカッコよくならないのは、ポール・ウェラーの「音楽的才能」プラス
彼の音楽に対する誠実さという「人間的魅力」の違いによるものだと僕は思います。