夫は先日、久しぶりに男性不妊外来を受診した。
一つは、夫は今周期の頭に新型コロナにかかったため、造精機能に影響が残っているのではないかと懸念があったため。特に、空胞精子の多寡を確認したかった。採卵を現在のクリニックで計3回やっているが、顕微授精でIMSIを用い、高倍率の顕微鏡で観察した時に、2回は「空胞精子多数。」、1回は「空胞精子少数。」との指摘を受けていた。卵子の年齢的な老化とともに空胞精子も多いことが、私たち夫婦が良好胚を作る目標下では一番気になるところだ。
また、空胞精子を減らすためにできることを再確認してくるのも受診の目的であった。
結果、新型コロナ罹患の影響はもう無さそうだ。高倍率の顕微鏡下で手作業で空胞精子の有無を確認する検査はしていなかったので空胞精子の多寡はわからなかったが、その代わりにDNAの断片化の検査を受けて、標準の範囲内だった。
空胞精子を減らす方法は、今まで通り、運動やサプリメントや食生活に気をつける以外には無さそうだ。地道にこれまで通りの努力を続けていこうと思う。
今回のように、気になることがあれば、夫も男性不妊外来を気軽に受診できることはありがたい。週に何日も外来をやっているので多忙な夫もスケジュールを合わせやすく、同じクリニック内なので不妊治療に関する情報共有も楽だ。また、副次的な効果もあった。不安があるなら受診しよう、と夫婦で決めたところ、夫はいつもよりジムに頻繁に通ったり暴食が減ったり、目に見えて行動が変わっていた。受診という行為によって、「自分も不妊治療の当事者である。」という意識が増す気がする。この効果は、夫が男性外来を受診する度に感じるところだ。その昔、夫の知人(生殖専門)に話を聞きたいと思った際、「妻の、人工授精について聞きたいことがあるんだけど、少し相談してもいい?」と声をかけた夫が懐かしい。その当時、夫にとって不妊治療は「妻の」治療であり、既に我が家は人工授精フェーズを通り過ぎていたのだが、夫には人工授精と体外受精の区別もついていなかった。
男性不妊外来は、男性にとってハードルが高く感じられるかもしれない。また、男性不妊外来がないクリニックの医師に、必要ない、と断定されることも多いかもしれない。私たちもそのような経験がある。
以前別のクリニックで不妊治療をしていた時、Amazonの定期便で取り寄せたエナジードリンクを毎日がぶ飲み、という不摂生のせいで人工授精や採卵の際の夫の精液所見は、今よりずっと悪く、正常形態率も1パーセント以下と出ていた。そこで、そのクリニックの院長*1)に「男性不妊外来に行きたいので夫の紹介状を書いていただけませんか。」とお願いしたところ、「精液所見を見ると、精索静脈瘤ではないので受診の必要はないです。」と断られたことがある。その方は婦人科の医師で、夫に関して精液所見を見た以外は何も診察していないにもかかわらず。そして、院長自ら専門外なのに夫に関する生活改善指導をした。(夫はその採卵後診察に同行していなかったので、聞いたのは私である。)
しかしながら、精液所見が悪いなら、少なくとも一度は専門家の意見を聴くべきだと思う。理由は二つあって、本質的には、精液所見改善のための努力の方向性を間違わないため。特別な治療は必要なく、方法は生活改善だけだとわかったなら、それはそれで意味のあることだと思う。副次的には、受診の機会が上記のように夫の当事者意識を生む機会となるため。
時間や労力を注ぎ込む方向性が間違っていたら、どんなに地道に努力を重ねても結果は出ない。例えば新日本監査法人が昔、JALの会計監査で最初の「重要性の判断」の段階で判断を誤り、監査項目に投入する人員配分や時間配分をミスって会計不正を見逃したように。
だからこそ、精子の質を上げるために各家庭が何をすべきかは、少なくとも体外受精に踏み込んだ最初の段階で、専門外の医師でなく専門の医師に聞くべきだし、適宜確認すべきだと思う。
我が家の場合、少し遅れたが、男性不妊外来を受診して、良かったと思う。
*1) この院長が過去に、男性不妊外来のあるクリニック(今私たちが不妊治療をしているところ)に勤めていたことがあったのを知っていて頼んでみたのだ。