今回の採卵は某氏不在だった。正確に言うと、院内に不在ではないが、我々夫婦にとっては事実上の不在だ。そんな中、卵巣刺激のコントロールにおいて工夫した点は3つだ。
・MPAの服用量を微調整する
・採卵日を医者が勧める日より前倒しに決める
・DHEAを1日に1/2カプセルにする
卵巣刺激9日間を経て採血した際、LHが1.6だった。排卵させないためにLHは抑えるべきであるが、一方でLHが下がりすぎると、FSH製剤を投与してもE2の上昇が鈍くなったり、卵胞の成長や熟成が滞ったりする。卵胞の数の割に卵子数が取れないことが多かった私は、未成熟や成長の鈍化を避けたい。
「某氏だったらどうするか。」と考えた。例えば6回目の採卵で、8日刺激したあとにLH1.4となった時、某氏はMPAを1日2錠から1錠に減らしている。
今回のLH1.6は直ちにLH低値と判断すべき数値ではないが、私は卵巣刺激の後半になると(MPAの服用が続くと)LHが日ごとに下がる傾向にある。今回も後半4日間で5.5から1.6まで下がっていた。更に2日間、それまでと同量の1日2錠MPAを飲み続けると、2日後の採血では確実にLHが1.0を切るだろうと予測できた。LH低値になるのは避けたい。
そこで残りの二日間は、処方された1日2錠を各回1/3ほど削り、2/3だけ飲んだ。(1日に4/3錠を服用したということ)その結果、2日後の採卵決定日のLHは1.7。抑えながらも、低値になり過ぎない絶妙な状態をキープできた。
採卵日決定の診察にて、医者は「あと一日刺激して、土曜日に採卵しましょう。」と言った。パソコンの画面を眺めながら、「某氏だったら。」を自問自答した。
私はトリガー日の卵胞径が24ミリを超えると卵子が取れないことが多い。6回目の採卵で、トリガー日に右に20ミリ以上の卵胞が5つ、しかもそのうち4つが23ミリを超えていた。その時右からは1つしか取れなかった。6回目の採卵は不発だったが、有用なデータが取れた。(普段は採卵個数が多いこともあり、このように採卵中に某氏が途中で手を止めて、「左いくつ?」「右いくつ?」と聞かない限り、後で培養士の方に尋ねても、どちらからいくつ取れたのかはわからない。)
もちろんリード卵胞の一つ二つが過熟で取れなくとも、全体の個数を伸ばすために、それよりもっと後方の集団に照準を合わせる、という戦略はこのクリニックの典型的パターンの一つで、もちろんアリだ。ただ、この日、すでに後方集団も十分育っているように見えた。上から10個目前後を第三集団とするならば、内診室でエコーを眺めた限り、第三集団の5つ以上は14ミリに乗っているのが見えた。(この日のエコーの担当医、卵胞計測のための画角の取り方がめちゃくちゃ上手かった。)某氏は、トップ卵胞の大きさを見るというよりは、第三集団あたりを見て「このへんが14ミリに乗ってくるといいですね。」としばしば言い、これを満たすと採卵に踏み切る気がする。
トリガー日に14ミリということは穿刺時は16ミリ以上になっているはずで、これは、Wirleitner et al. (2022)で、示された「穿刺時卵胞径16-19ミリが胚盤胞到達率が最も高く、良好胚盤胞率も最も高い」というデータに適った判断だと思う。最適な卵胞径を考える時に核成熟(M II化)と細胞質成熟(胚発生能)の二つの評価軸があり、大卵胞にすればするほどLHへの反応性は高まり、核成熟の面では優位だが、細胞質成熟は19ミリでプラトーに達し、細胞質成熟や胚発生能は16-19ですでに完成域なので、それより大きくしても、胚の質は向上せず、むしろ過熟のリスクが大きくなるということだ。
すなわち、第3集団が14ミリを超えているから、これ以上、刺激期間を伸ばす必要を感じなかった。
具体的には、
今回は右がトップから22.3, 20.0, 18.0, 14.8で8/10、左が18.4, 17.0, 16.9, 15.5で7/12である。E2も前回の3244.6を大きく超え、4000.6だ。十分な値に思えた。
(前回の20/20が採れた採卵で、某氏がトリガーをかけたのは、右はトップから19.5, 16.4,16.2,16.2で11/13、左はトップから19.2, 16.9, 16.6, 16.2 で9/12 が見えた、その日だった。)
刺激は追加せず、今夜トリガーをかけたいと伝えた。診察医は、「左はまだ小さいですけどね?」と言ってはいたが、ひとつ目の理由をサラッと伝えると、イヤな顔をせず希望通りにしてくれた。採卵日は土曜日でなく金曜日になった。
DHEAの量に関しても一貫して試行錯誤を繰り返してきた。このクリニックでの1から4回までの採卵では、平均して卵胞数の6割程度しか卵子が取れなかった。前医の採卵では全て取れていた。一年間の加齢のせいだと諦めるのは最も容易いことだった。ただ、諦めるのは全てを試してからでも遅くない。
刺激方法をその時と同じに揃えた。また、前医はかつてこのクリニックに勤めていた医者なので、採卵の手技が大きく違うとは思えない。(このクリニックで1回目採卵オペを担当したのは某氏、2回目はM林氏であったため、尚更、前医より採卵術が劣ることはないだろう。)違いは「DHEAの有無」しかなかった。DHEAを飲まずに5回目、6回目の採卵をしてみた。卵胞数のぶんだけきちんと卵子が取れるが、そもそも卵胞があまり育たなかった。DHEAの効力が完全に切れた6回目採卵は特に。「正解は、『DHEA 1日1カプセル』と『DHEAを飲まない』の間にあるのではないか。」と仮説を立てた。7回目採卵では、DHEAの量をそれまでの1日1カプセルから1日1/2カプセルに変えた。AFCが育つ過程で一つも消えることなく、さらに多くの卵胞が育ち、しかも育った卵胞の全てから卵子が取れた。採れたのは20/20だった。
この結果を踏まえ、今回の採卵も1日1/2カプセルを飲み続けた。
サプリメント扱いのDHEAの量の調整が、FSH製剤の量の調整と同じくらい採卵結果に影響をもたらすことに、海外製のカプセル1錠が小柄な日本人女性には多すぎる場合があることに、先生方はまだ気づいていない気がする。
今回の採卵結果は、18/15(見えた以上に採れた)であった。
不妊治療一般の知識は、医者のほうが詳しいはずだ。しかし、「(私の卵巣)×(卵巣刺激)×(某氏)」という特殊条件を掛け合わせた場合のデータの蓄積においては、私のほうが圧倒的に優位なはずだ。これまでに何十回、診察のたびに卵胞談義を重ねてきたことか。
最後の採卵で得られた果実は、
転院以来の数十回の某氏との対話の上に、
trial&errorの幾重なる蓄積の上に、
学びから得た細かな調整の上に、
実を結んだように思う。
採卵が終わり、乗ったエレベーターの扉が閉まり、張り詰めていた何かが切れた時、感情が抑えられなかった。私にとっては「偶然のラッキー」なんかではない、「18」という文字が滲んで見えた。
やるべきことはやった。
*なお、某氏主導で卵巣刺激をした際は自己判断で薬の量を変えることは一切していない。
(ただし、DHEAを除く。DHEAに関しては、言えば呆れられるだろうと思いながら、先述した通り、7回目も最適量を見つけるまでしつこく、微調整をし続けていた。)
*今回、私が医者の手に全てを委ねなかったのは、クリニックの保険診療に不足があったわけではない(特に3回目以降の通院は不満があったわけではない。)。

