息子が尊敬する塾の先生が、国語の課題として渡してくれた文章は、「透明なルール」(佐藤いつ子)から抜粋したものだった。転校生「愛」のことが語られている場面だ。
愛は恐ろしいほど息子と似た特徴を持つ。
・書くのが嫌い。キーボード入力が好き。(おそらく、頭の回転に近い速さで出力できるから。)
・「心が動けば」見ただけで記憶できる。(見たものに心を動かされると、頭の中で何度でもそのまま再生できる。映画のシーンや実際に見たものなど。)
・学力で特筆すべきものがある
・クラスに展示された掲示物を見る時、名前を見る必要がない。(1人だけ異質な出来だから。名前を見なくてもどれが息子のものかわかる。幼稚園年中組の時に、「〇〇君って1人だけ小4くらいの作品を作るよね。」とクラスメイトのお母さんたちに言われる。)
・世界を構成するルールを知りたい(化学、物理、生物)ので、「なんで。」「どうして。」が止まらない
・様々な感覚が過敏
「目立ってはいけない。」「周りと合わせなければいけない。」ということに心を砕き、次第に神経を消耗していく愛の様子は、読んでいるだけで息が止まりそうだった。
息子はかつて、神戸のインターで酷いいじめにあった。根底には、周りからの嫉妬や妬みがあったと思う。学年の落ちこぼれ男児が首謀者となり、集団でたかって、息子を突き飛ばすなどの暴力までふるっていた。最初、担任は口裏を合わせたクラスメイトたちの証言を信じたが、私が学校にカメラの映像を確認させ、彼らがウソをついていたことがわかると、学校は首謀者を退学させた。夫は加害者たちの住所を探偵を使って調べ(住所がわからないと裁判を起こせないので)「出るところに出ましょう。」というところまでやった。「息子を踏み躙った人間はきちんと制裁を受けた」ということを、夫は息子に伝えてやりたかったのだ。最後までやれば、目的を果たせたと思う。ただ、一方で、続ければ、裁判で息子に辛いことを思い出させることになり、それが二次被害のようになってしまうので、私が途中でやめさせた。
息子の、神戸のインターでの記憶は消すことはできない。他にいろんな場所で、いろんな人と、良い繋がりを息子に沢山経験させ、「あの出来事は、ある特定の学校の、ある特定の学年の、たった1つのクラスの中で起こったことに過ぎない。それが世界の全てでは決してない。」ということを教えてやることしか、私にはできない。(幸いにも東京に来て、沢山の出会いに恵まれた。)
できれば第二子を産んで、いつか私たち親が去った後のこの世に、息子の理解者、味方を1人でも多く遺して行きたい、と思っているが、これは叶うかわからない。
夜中に息子の机周りを片付けていて、課題の文章を読んだ時、わざわざこの文章を選んで息子に渡してくれた師の思いが伝わり、塾にもこんなにも強力な味方がいることが有り難く、嬉しくて、涙を堪えることができなかった。