<第五章 自主回収 2>
「佐藤、スマート電気の鈴木さんから電話!」
由美子からは、昨日、マナナ化粧品についての電話があったばかりである。
「どうしたの」
「誠、大変、今度は、うちなの、しかも洗濯機が原因と思われる火災が発生してしまったの」
「まさか、『ウェーブ・ウォッシュ』で?」
「ううん、10年前に販売していた機種なんだけど、病院で患者さんが自由に使えるようにしていた洗濯機が発火したの。火災自体は、ボヤ程度で、看護婦さんが消火器で消し止めたんだけど、煙の検知器が作動して消防署が出動したために、火災扱いになったので、消費者庁にも報告しなければならないの。現品は、消防署に押収されていて、品質保証部の井上課長と木村さんが赴いて確認したところ、どうやら本来あるべきヒューズが外され直結状態になっていたらしいの。」」
「誰かが、断線したヒューズを外して、直結させたってこと」
「そうなの、だから、安全装置であるヒューズが外されていたということで、製品の仕様に関する問題や、工程不良である可能性はないんだけど、10年前の製品とはいえ、ヒューズが外され直結になっていただけで、なぜ発火に至ったかについては、消防庁、経済産業省、スマート電気で協力して突き止めなければならない問題になってしまったの。」
「そうか、それで、由美子は、何をしなければならないの?」
「私は、品質保証部の報告を受けて、お客様やお取引様に告知する情報の検討委員会に召集されたの、もちろん、既に販売中止された製品についての仕事ではなくて、『ウェーブ・ウォッシュ』の販売に影響が出ないように、マーケティング部や営業部に適格な情報を提示する役割。」
「随分、大事な仕事を任されたんだね。僕に手伝えることは何かある?」
「ううん、特にないんだけど、誠には、報道で知る前に伝えておこうと思ったの」
「わかった。由美子が『Shall We Project』に専念できない間、僕ができることを薦めておくよ。」
「ありがとう、お願いします。」
由美子は、いつになく元気がなかった。『ウェーブ・ウォッシュ』への影響が少なからずあることを心配しているようすだった。