オレらはね、「戦後教育になってから久しい時期に、初めて歴史を習った世代」です。ですんで、
足利尊氏は「日本史の英雄のひとり」
という認識でいました。
それがね、ネットの時代になってから、
「戦中までは逆賊、反逆者として、教育されてた」
という事実を知ったときは、ちょっと衝撃を受けましたね。このため、物語化された尊氏も、そういう扱いが多かったんだってね。
それまでは「由緒正しい源氏の総大将」「でも、負けるときは大敗する」「そのくせ、味方の数を増やして逆襲し、天下を奪い返す英雄」といった意識があっただけにね。90年代初頭の、真田広之主演の太平記も、「尊氏=逆賊」とは描かれてなかったようですし(当時は私も若者でしたので、大河ドラマはあまり見てなかったんですが)。
まあ、なにがいいたいかというと、「尊氏の戦中までの評価」は事前に知っていたので(ネット以後は)、この「逃げ若」でライバルというか、ラスボス的に描かれてもね、とくに驚きのようなものはありませんでした。「逃げ若」が90年代初頭の作品だったら、ビビッたでしょうが。
ってか、「逃げ若」の尊氏も、「武将、天下人としての魅力」も描かれてたからね。イケメンだし(笑)。
で、肝心の主人公・北条時行(若君)。まあ、史実における彼の結末は知ってたんですよ。ですんで、「逃げ若」の彼はどうなるのかな、ってのはありましたね。
やっぱ史実を捻じ曲げ、「時行が尊氏を討って、室町幕府を倒す」なんてわけにはいかないけど、一応は少年マンガのヒーローなんで、その辺はどうするのかな、というのはありましたね。
そっか、こういう結末にしたかぁ(笑)。やっぱ松井優征は奇才だ。
で、この松井さん、やっぱ歴史好きだよね。そんでもって、三国志、
とくに曹操のファンなんじゃないかな?
何巻だったか忘れたけど、「逃げ上手も英雄の資質だ」みたいなことを説明する際、明言はされてなかったけど、「曹操が外套を捨てて逃げるシーン」と思われるコマも描かれてたし、この27巻のラスト、若が地獄で諏訪頼重と再会してね。
彼の話によると、地獄は歴史上の人物たちによる群雄割拠になってて、
頼重「曹操、ナポレオン、織田信長らの天才頭痛同盟! 国土は狭いが、技術と戦術で、覇王連合(アレクサンドロス、チンギス・ハーン、アッティラら)と互角の国力!」
って状況になってるらしくてね(笑)。
ともかく、ここでも曹操を出してたくらいなんでね。
で、松井さんといえば、
「トホホなベビーフェイス」と「とぼけて、人を食ったようなドSキャラ」といった組み合わせの「ダブルヒーロー」が、好きなんだと思うんですよ。
弥子とネウロ、渚と殺せんせー、そして時行と尊氏(あるいは、頼重)といった具合にね。
まあ、「作家によって、好きなヒーロー、ヒロイン像」というのは絶対にあって、大抵の場合は、そこから逸脱したキャラでは(読み切りや短編はともかく)話を作れない、ってとこはあると思うんですよ。これはマンガ家さんに限らず、あらゆるジャンルの作り手に当てはまると思います。
いろんなタイプのヒーロー、ヒロインで、長い話を作れる人もいるけどね。
ともかく、そういった組み合わせが好きであろう松井優征の次回作は、「曹操好き」という推測が正しければ、彼独自の三国志ものになるかもね。
「トホホなベビーフェイス・荀彧が、ドSで人を食ったような曹操に無理難題を・・・」とか、あるいは「曹操がじつはトホホなベビーフェイスで、最初は助けられるだけのヘタレ(ただし、見た目がかわいいので、男女ともに彼の力になりたがる/笑)なんだけど、時行のように次第に成長していく」といった感じになったりね(笑)。
まあ、それらはオレの希望的観測でしかないんですが、松井さんの次の作品も期待したいですね。
ってか、「若君」は「いまとなってはオレが唯一、集めていたジャンプ・コミックス」であり、さらにいえば、ネウロ、殺せんせー、そして「若君」は、「1巻から最終巻まで完走した、数少ない作品」ですよ、オレにとって(笑)。
何気に「完走したマンガ」って、少ないですよね。そんな中、松井作品は3つすべて(笑)。
この人の作風、なんか合うんですかね、オレにとっては。
