先日シンガポールの教育機関に見学に行く機会があった。シンガポールは国家の歳出の2割超を教育に投じていることもあり、非常に教育熱心な国である。

シンガポールではIT技術を教育に活かして、その効果をより高めようというFuture Schoolという試みが情報通信開発局(Infocomm Development Authority: IDA)によって進められている。日本でもフューチャースクールという試みがされているが、シンガポールのこの取組を参考にしていると聞いている。IDAがFuture Schoolの取り組みを映像にまとめたものが次のYoutubeの動画である。


この映像を見ると、日本の学校とは大きな違いがあることがわかる。私もシンガポールに行く前にこの映像を見ていたが、まさか一部の先端的な学校だけの状況だろうと考えていた。しかし、現地でいくつかの学校を見学したところ、程度の差はあれどの学校も教育のIT化を非常に熱心に進めており、学校の設備も非常に恵まれている状況であった。

シンガポールは人口500万人程度の都市国家であり、産業を興すような資源が全くない。生活に必要な水資源ですら隣国のマレーシアから購入しているような国である。そのような国が今のような経済的発展を遂げ、今後もグローバルでの存在感を確保するためには、国民のレベルを底上げすることが必須である。そのことを、シンガポールの初代首相リー・クアンユーは理解しており、国を上げて才能ある子どもを選別し、徹底的に教育するシステムを創り上げた。

現在のシンガポールの教育システムはこのレポートに詳しく書かれている。この中で特筆すべきは小学校6年時の卒業試験にあたるPSLE(Primary School Leaving Examination)である。この試験の結果によって入学できる中学校のレベルが決定され、一度下位のクラスの中学校への入学が決まってしまうと、上位のクラスに変更することは非常に難しい。そのため、シンガポールの各家庭ではPSLEの実施時期になると、子どもの試験対策が最優先事項となる。だが、PSLEが子どもに与えるプレッシャーはかなり強いもので、問題視している人も多いようだ。

シンガポールには多少の問題はあるとはいえ、ここで挙げたように国を上げて教育政策を取り上げ、国家の地位の底上げにつながるような強固なシステムが築かれている。一方で日本を振り返ってみると、教育関連の政策を強く引っ張ろうとするリーダーや政治家が見えづらい。日本もシンガポールと同様資源が少ない国であり、一人一人の国民のレベルの底上げをしなければ、産業を強くして国としての地位を向上することは難しい。世界第3位というGDPを何とか確保できている今の時点から、教育への投資を拡大し、将来の国民の底上げにつながるような活動をしていくことが必要とされている。