ショッピングモールの外の遊び場に、噴水が噴き出る仕掛けのある水浴び場があり、末っ子がその中を走り回る。
出たり出なかったりタイミングの読めない水の噴射にはしゃぎながら、上も下も服をびしょびしょにして笑っている。
自分はこの場では名も無い父親の1人となって、全身を覆うには若干足りない日陰から微笑む時間を良しとしている。
遠く昔から不躾に、それがお前のしたいことかという、途切れ途切れの問いかけの叫びが届く。
お前は何もわかっちゃいない、俺の心の間取りは年を追うごとに複雑化し、
噴水が一回跳ねるたびに過去の出来事が浮かんでは、どの部屋の扉かを決めず無邪気にノックする。
その度にそれなりに怖がったり苦いものが込み上げたりしているのを、さしてそうでもないかのように微笑んでいるものだと、言い返す。
途端に子どもたちの笑い声に意識がもどり、湿気高く暑い昼下がりの遊び場が視界に戻る。