1を3で割り算して小数で表すと,0.333…となる.
一方,1を3で割ったものとは分数で表すと1/3のことである.すなわち,
1/3=0.333…
この両辺に3を掛けると,次の式を得る.
1=0.999…
誰もが聞いて,何だか腑に落ちない感じを受けると思う.0.999…っていくら9を続けたところで,1になるわけないやないかと.
しかしこの「モヤっと感」は,実は無限に続く小数(無限小数という)を表すとき使う記号「…」の本当の意味を理解していないことから来ている.
それをちゃんと理解すれば,上の式「1=0.999…」は腑に落ちないどころか「当たり前の式」にしか見えなくなる.
そもそも,「0.999…っていくら9を続けても1にならないからおかしい」という論理で言えば,「1を3で割ったものは0.333…である」という主張に対しても全く同じ反論ができることに気づくべきである.
小学校で習ったように商と余りを使って書けば,
1/3
=0.3 余り0.1
=0.33 余り0.01
=0.333 余り0.001
=…
となる.つまりどこまで割っていっても,0.00…01という僅かな余りが生じてしまうわけで,結局0.333…といくら3を続けても絶対1/3にはならないのである.
(にも関わらず,我々は「小学校でそう習ったから」という理由で思考停止し,このような不条理を見逃してしまう.)
というか,そもそも0.333…というふうに「ずっと3を続ける数」とは一体何だろうか.そんな数が存在するのだろうか.
実はこれは「実数とは何か」という問題にも繋がってくる,ある意味では深遠な話である(と言っても,今の例ではただの有理数だが).
数直線上でその位置を特定しようにも,「とにかくずっと3を続けろ!」なんて言われてはどうしようもない.
3がどこかで途切れていれば,「1を10等分したもの3つと,それをさらに10等分したもの3つと,そのまた…」という風にやれば何とかなるが,それを無限にやるなんてできるわけがない.
結論を言えば,そもそも文字通り「3をずっと続ける」とか「9をずっと続ける」なんて数は存在しないのである.
では,小学校で「1÷3=0.333…」と習ったのは,あれは何だったのだろうか.まさか嘘を教えられたわけではあるまい.
実は,この「…」という記号には,単に「ずっと続ける」というのとは違う,もっと合理的な意味があるのだ.
それは,「続ければ続けるほど,いくらでも近づいていく(その先の数)」という意味である.
先ほどの1÷3の例をもう一度見てみて欲しい.先ほど書いたように,この割り算はどこまで割っても余りは0にならないが,しかし確実に小さくなっているのが分かるだろう.
実際,0.333…の末尾に3を一個付け足すたびに,余りは1/10になっていく.
つまり,1÷3の真の答えである1/3と,「(0.333…と)3をn回続けた数」との差が(nが1増える毎に)1/10になっていくのである.
くどいようだが,0.333…と3をいくら並べたところで絶対に1/3にはならない.しかし,3を続ければ続けるほど,1/3にいくらでも近づいていけるのである.

これは文字通り「いくらでも」だ.
先ほど書いたように,「差が1/10になり続ける」という近づき方だから,それがいつか目的の数である1/3に一致したり,追い越したりすることはない.
しかしだからと言って,どこかで近づくのがストップしてしまうこともない.
近づくステップの大きさは次第に小さくなっていくが,それでも確実に,いくらでも近づいていくのである.
たとえその差を「百万分の1にしろ」と言われようと「1千億分の1にしろ」と言われようと,我々は有限個の3を並べることでその注文に応えることができる.
そう,これこそが記号「…」の真の意味なのだ.
最初に取り上げた0.999…にしろ,これは「9がずっと続くような数」という意味ではなく,「9を続ければ続けるほどある数Xに近づいていきますから,そのXのことを表してますよ」という意味である.
ここまで来ると,もはや冒頭の式
0.999…=1
は不思議な式でも何でもないだろう.「9を続けるほど近づいていく数Xって何だろう?」と少し考えれば,それが1であることは明白である.
分かりづらい人は,
1 - 0.99…9 (←n回続けた)
という引き算の結果が,nを増やしていくとどうなるか考えてみればいい.
(補足)
さて,今の話では循環小数(0.333…とか1.0101…とか,同じパターンを繰り返す小数)しか扱わなかったが,それ以外はどうだろう?
例えば√2という数は,
1.4141356…
と循環しない小数で表されるが,この場合の「…」も先ほどと同じ意味なのだろうか? 答えはイエスである.
しかしこの場合「…の後何を続けたらいいか分からないじゃないか」と思うかもしれないが,そこに並ぶ数字たちだって何かある決まったルールに従って並べられているはずである.
(ただし,循環小数のときと違ってその数字の並びをいくらじっと眺めても「決まったルール」は見えてこないが.)
例えば√2の場合,「この4の次に1が来ても,まだ大丈夫(2乗して2を超えない).しかしそこに1ではなく2を入れてしまうと,2乗したとき2を超えてしまうから駄目だ.ということは少なくともこの4の次は1で確定だな」といった具合だ.
こうしてある決まったルールに従って数を並べていくと,その小数が「いくらでも近づいていくある数X」というのが必ずたった一つだけ存在する.
その理由を説明するのは難しいが,とりあえずは実数の公理の一つのようなものだと思って欲しい。
[厳密な説明:そもそも実数とは,「有理数の(コーシー)列(の極限値)の集合」として構成されるものだからである。]
我々人間は,世の中の色々な量を数で表そうとしているうちに,有限小数で表せない量や,分数で表せない量があることに気が付いた.
だから,あらゆる量を表すのに十分な「受け皿」として「有限小数と無限小数で表される数の集まり」を実数と呼んで使ってきたのである.
※記述の中に何かおかしな点がありましたらご指摘ください.
★次回予告「対角線論法を救え」お楽しみに!