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サークル活動記です。
たまに関係ない記事も書かれます(爆

[1月10日/日曜日/天城家]

今朝は深夜が起きてこなかったな…まぁ珍しくも無いけど

自転車を引っ張り出してくると、千尋がアクビを抑えながら待っていた。

千尋「急ぐんだよね? それじゃ私の家こっちだから」

蒼司「あぁ、それじゃまた」

千尋「うん、服とか一晩ありがとう。行ってらっしゃーい」

鬼相手とはいえ"放"をぶっ放した俺が悪いのに、御礼まで言われるとは

なんか他にもお返しが出来ればな…まだ罪の意識が…

蒼司「うん、行ってきまーす!」

さって、急がないとな。

俺は自転車を漕ぐと学校へと急いで向かった。

何故急いでいるかと言うと

千尋が七時に起きれず、遅刻寸前だからである

蒼司「うぉーーーーーーーー」

この調子ならギリギリHRに間に合うな…

蒼司「ん?」

あれ?

美東先生じゃん

なんかやってるな、どうしたんだろう?

音:自転車ブレーキ

蒼司「おはようございます先生、朝から何してるんですか?」

美東「天城? これよ! チェーン外れちゃったのよっ! あーっもうムカツク」

蒼司「じゃ、俺は急いでるのでこれで」

美東「こらっ」

蒼司「わっ!」

荷台を捕まれた

なんて怪力だ! 俺のロケットダッシュがこうも簡単に…

美東「ちょっと待ちなさいよ!」

蒼司「いや…無理です」

美東「まだ何も言ってないじゃない…」

蒼司「わかってますよ、チェーン治せでしょ。無理です!」

俺は、はっきりNO! と言える大人を目指しているんだ

美東「美人が困ってるのに、あんたという男は!」

美人関係ないじゃんか! だいたい明らかに新品でシッカリしたチェーンじゃないか! どう漕いだらこんな見事に外れるんだよ…

美東「今学期の科学…」

蒼司「…またかよっ! 鬼だこの人」

美東「口答えしないっ!」

蒼司「ひどいっ」

知り合いの鬼のほうが優しいわい!

あーもう! 遅刻だなこりゃ

うりゃっ!

昔読んだ"大きなカブ"並に引っ張る

くっそ、ガッシリとチェーンがはまってるよ

蒼司「先生、これちょっと時間かかっ、って! あ゛っーーーー!!!」

音:ガーッ

美東先生は俺の自転車に乗りマッハで漕いで行ってしまった。

……………

そして俺はチェーンの挟まった自転車を手で押しながら走り、静まり返った校門へと向かうと

偶然校門を通りがかった教頭に、駐輪に手間取ったのか、間に合わなかった美東先生と一緒にこってり絞られたのだ。

最悪だ。



[教室]

教室へ行くと授業が始まっていた

とりあえず新村先生に一言謝り席へ向かった。

俺は自分の席に座りながら教室の中心へと目をやる

…真ん中では公平がいびきをかきながら、涎をしたたらせグォーグォー寝ている…

公平も登校してきたか…しかし、なんて迷惑な男だろう

俺も遅刻したし、人の事はとやかく言えないが…

年明け最初の授業で爆睡か…

新村先生は気にしないで授業を進めている

公平「…Zzzz」

鼻スピースピー鳴らしちゃって、全く……

効果音;チャイム

むくりと起き上がるとノロノロと俺の席へとやって来た。

公平「おいっす」

蒼司「寝すぎだよ、いびきまでかいてるし顔に寝跡まで付けて…単位大丈夫なの?」

公平「もう下がる程単位ないからな俺、あっはっはっ」

蒼司「………確かに」

公平「ちょっ、いや、ここは否定してよ! ツッコミでしょ!」

蒼司「………とても冗談に聞こえなかったから…」

公平「ふん。 あ、そうだ最近気が付いたんだけどさ、どうやらあの先生…本物の魔法使いみたいなんだ」

蒼司「…………」

強引に話を流したかと思いきや、突然何を言い出すんだろう、この男は…

公平「あの先生の声を聞いてると、いつのまにか寝てるんだよ。すげーよな。不思議だろ?」

蒼司「不思議なのは、オマエノアタマナ」

公平「俺、不思議ちゃんだったのか」

蒼司「そこじゃないっての!」

…そうだ、公平はどっか旅行みたいなの行ってたんだよな…

蒼司「それよりどこ行ってたの?」

公平「おっと、その話かい? 俺が行ってきたのは鷹嗚山だよ。景色良かったぜ? はははっ」

ほらっ! と、嬉々として見せてきた携帯のディスプレイには、まださほど高くもないと伺える場所を背景に。杖に全身で寄りかかった満面の笑みの公平

………

ん? こんな鳩のストラップみたいの付けてたっけ………?

ま、いっか。多分ここで買ったんだろう。

蒼司「ちなみに、これ何号目?」

公平「あぁ! そうだった! そんなことより、ちょっと待っててくれ」

蒼司「何号とかはスルーかよ!」

席に戻った公平は、なにやらカバンの中をゴソゴソと漁り、何かを取り出した。

ニヤニヤしながら戻ってくる

まさに死神のようだ

…逃げたい

公平「ほらこれ」

蒼司「?」

小さな紙袋を手渡された。

お土産か? そういえばメールでお土産あげるようなこと言ってたな。

公平「わらわが、そちにこれを贈呈しよう」

蒼司「おっ、ありがとう」

なんだろう?

渡された小さな紙袋を開けてみる。

………

蒼司「なに、これ?」

公平「恋愛成就の鳩のお守りだ!」

蒼司「へー…………公平の携帯にも同じの付いてるよな………なんか男が二人でお揃いとか、凄く嫌なんだけど」

公平「なんだよ、そんな冷たいこと言うなよ」

蒼司「………いや、いい、絶対いらない。これ返すよ」

入っていた紙袋にしまい、すぐに返す。

公平「なんでだよ? 効果が凄いらしいぜ? 山も恋愛運上げるために行ってきたんだ! 俺、今パワービンビンだぜ?」

蒼司「目をキラキラさせて言うな! だとしたら尚更いらん!」

公平「なんでだよ! 受け取ってくれよ!?」

蒼司「あぁ! もう揺するな! 顔が近いっ! いらんものはいらんっ!!!」

公平「もうっ! 全く失礼しちゃうわ、プンプンッ!」

公平は怒りながら自分の席に戻ると、近くに居た横島に話しかけた

例のブツを渡している…

とりあえず面白そうなのでほおっておく

渡された横島は嬉しそうに受け取っていた。

……………

二人とも、お幸せにな

式の仲人は任せとけ~

結局、高堀の死と宮内の行方不明で悲しみに包まれていた教室の雰囲気は、空気を読まない公平のお陰で、少しばかりだが笑みが戻っていた。



[廊下・お昼休み]

今日はパン持ってきたから、んー、何処で食べようかなー

公平は学食かな? 

蒼司「公…へぇ……」

…………

仲睦まじく公平と横島が机にパンを出しながらお話している

邪魔するのは野暮だな

俺は公平と横島の邪魔をしないよう、そそくさと廊下へ出た。

効果音:喧騒

蒼司「…」

ふん! 寂しくなんかないんだからなっ!

ほんとだってばさ!


[廊下]

む、そうだ由紀菜に電話してみよう。まだ電話してなかったもんな

電話音:

…出ないな……

電話音:

知らない番号出ないのかな?

由紀菜「…もしもし?」

蒼司「あぁ、もしもし由紀菜か? 俺、俺!」

由紀菜「…俺俺詐欺? やっと掛けて来たわね、私も千尋の事聞きたかったから調度よかったわ」

蒼司「あれ? よく俺ってわかったね」

由紀菜「男の子の連絡先なんて天城君くらいだもの…」

そういえば、男子に興味なさそうだもんな…そういった浮いた話しそうにない雰囲気だし

蒼司「今から一緒にお昼どうかな?」

由紀菜「ええ、いいわよ」

蒼司「じゃ、屋上?」

由紀菜「そうね、北側屋上にしましょう」

蒼司「おけっ、今から屋上向かう。」

由紀菜「…そうだ昼食は? 今日は何か持って来てるの?」

蒼司「あぁ、家からパン持ってきたよ、さんきゅ」

由紀菜「わかった、それじゃ屋上で…」

音:電話切れる音



[屋上]

由紀菜「そっか…なんだか、普段はほんとに普通の女の子ね」

蒼司「うん」

昨日の由紀菜と別れてからの千尋とのやり取りを話したのだが

自分でも鬼と一緒に居たのが嘘のようだ

由紀菜「不思議な子だったわよね?」

由紀菜が笑いながら呟いた

蒼司「うん…」

由紀菜「また、会えるかしら?」

蒼司「…会えないと若干困るかな…服貸したままだしなぁ、由紀菜もでしょ?」

由紀菜も、千尋絶賛の、あの暖かそうなコートを貸したままだ

由紀菜「えぇ。後、パン屋も気になるわよね…」

確かに、千尋がバイトか…

蒼司「どんな顔して働いてるんだろ…今度冷やかしに行くか」

由紀菜「…それ、ちょっと私も思った……」

二人でニンマリ

由紀菜「越後屋、お主も悪よのう」

蒼司「いえいえお代官様に比べれば、あっしなぞ小悪党でございます」

蒼司「ふおっほっほっほっほ」
由紀菜「ふおっほっほっほっほ」

由紀菜「………」

蒼司「………」

由紀菜「私たち千尋に殺られるかもね」

蒼司「うん…これは冗談にしとこう」

由紀菜「…えぇ」



せっかく古いネタを出したが、現実はギャグのようにいかなさそうだ。

チャイム音:

蒼司「昼休み早かったなぁ」

由紀菜「そうねー」

蒼司「そういえばさ、この町に強力な何かが入ってきているって言ってたじゃないか。あの話はどうなってるの?」

由紀菜「…まだ正体は掴めていないけど…そろそろ動き出すかも、それに想像以上に強力な相手かもしれない」

蒼司「まぁ千尋と戦っているし怖くないんじゃないか?」

由紀菜「………」

蒼司「むしろ千尋だったりしてな」

由紀菜「…いいえ、違うわ…」

凄く確信めいた言い方だな…

蒼司「感じたものが違う?」

由紀菜「うん…質そのものが違う感じ。それに私達二人で協力しないと勝てないわ」

由紀菜一人じゃ無理って事は、俺からすればメチャクチャやばいものを感じ取ったんだろう…

蒼司「ねぇ、鈴奈も一緒にって言うのはダメなのかな?」

正直俺は足手まといにならないようにするしかない

サポートとか手助け出来るくらいの動きが出来るかどうか…

由紀菜は、急に真面目な顔になると

由紀菜「…それは"私"の考えに反する。あの子にも考え方がある。だから自分から言ってくるまではそっとしといて」

考えが違うという所を強調して話している印象を感じた。

蒼司「…そっか」

前に言ってた二人の"守る"に対しての考え方の事かな…ならあまり突っ込まないほうがいいよな。

由紀菜「…くすっ」

蒼司「なっ、ひどいな人の顔見て笑うなんて…」

俺の表情を察してか場を和ませるように、違う違うと身振りしながら笑うと。

由紀菜「まぁ、もう一つの理由としては…あの子って結構アホじゃない」

蒼司「姉公認なのか…」

由紀菜「まぁね。まっ、そこがどうしようもなくアホな所が鈴奈の可愛いところなんだけどね………ま、蒼司もだけどね」

蒼司「…俺って可愛い系だったのか…ダンディズムな男って思われてるかと」

由紀菜「ちょっ! そっちじゃないわよ! アホのほうだってば!」

蒼司「あはははは! わかってるって! …って失礼な!」

由紀菜「あー、でもどちらかというとアホよりヘタレかも」

蒼司「………アホの方が良い気がする」

由紀菜「冗談だって! でも、天城君は甘いと思う…優しいという意味で。でも、その甘さが時には逆手に取られたり、判断力の足枷になって命取りになるから目が離せないって感じかな。あえて本音として言うならば弟とかそんな感じかな」

蒼司「まるで保護者みたいだ」

俺が笑いながら言うと

由紀菜「天城君が一人前になれるまではそうかもね」

由紀菜も楽しそうに笑いながら言った。

音:チャイム

由紀菜「あ、鳴っちゃった」

蒼司「早かった…」

由紀菜「うん」

蒼司「由紀菜が目を付けてる相手はどうするの?」

由紀菜「うーん…まだ……こっちからは、動かなくていいかもしれない、でも具体的に動くような力の変動が見られそうだから準備はして置いてほしいの」

準備?

蒼司「何か道具とか必要なの?」

由紀菜「道具じゃなくて天城君自身、一日でもいいから、来る対象と戦うまでに自己鍛錬しといて」

蒼司「わかった」

由紀菜「それじゃ、何か動く時は連絡するわ」

蒼司「了解」

音:チャイム

まずい! また本鈴鳴っちまったよ!!!

由紀菜「しまった!」

由紀菜は相変わらずのマッハでゴミをビニール袋に詰めると、牛乳パックのストローに口を付けながら手を振り去っていった

蒼司「ぐぁっ! 相変わらず早いな!!!」

俺も急いで階段まで走ったが由紀菜の姿は無かった

はっ!

蒼司「つっ、次の授業はっっっ!」

………

数学だ…

セーフ



[2-B教室]

渡辺「じゃ、公平は後で俺の所に来るんだぞ」

公平は、掃除プラス居残りか…哀れ。

公平「はーい」

渡辺「必ずだぞ、逃げるなよ~」

公平「わかってますって」

渡辺「返事だけはいいんだよなー」

効果音:横扉

授業から開放された教室が喧騒に包まれ始めた。

公平「ガッディーム!」

蒼司「なんで英語なんだ?」

公平「もう俺は金輪際、返事しないぞ!」

蒼司「いや、そういう意味じゃなくて、返事したら行動もしなさいって事を言いたいんじゃないか?」

公平「言うは安し、行なうは難たし」

蒼司「ナニイッテンノ?」

横開きドア:音

北村 雅司「よーし、席付けー。サッとHR終わらせちゃうぞー」

渡辺先生と入れ替わりに担任がやって来た。

公平「イヨッ! 色男! 先生にくいヨー」

蒼司「あぁ…もう何がなんだか…」

さっきとはえらいテンションの違いだ。

早くHRが終わるのが、そんっっっなに嬉しいのか仲条公平…

HRが終わり担任が出席簿を持って教室を去ると、掃除当番のはずの公平が俺の元へとやって来た。

まさか、俺と一緒にドサクサに紛れて、帰る気じゃないよね…

公平「蒼司、今日の五時間目は遅刻だったじゃん、珍しいな」

あれ? その事か。

蒼司「うーん、公平に比べれば確かに珍しいかも」

公平「まぁね! 俺ほど遅刻の似合う男はそうは居まい。まぁいい今日この後、予定は?」

皮肉も通じない。

相変わらず人類の斜め45℃を行く思考回路

蒼司「…ん、特に無いよ」

まさか、帰る気まんまんか?

公平「じゃ、遊びに行こうぜ?」

蒼司「…数学、居残りでしょ? 渡辺先生に言われたじゃん。冬休み中の課題やってなかったから居残りでやるんじゃないの? しかも掃除は?」

公平「ふん、俺がそう易々と残るわけないだろ。脱獄王の俺をなめるなよボーイ?」

…まぁ、確かに……

蒼司「でも、流石にやったほうがいいんじゃないか? 一緒に進級しようよ」

公平「おぉ、優しいな蒼司! って、何で俺だけ進級出来ない言い方なんだよ?」

蒼司「俺は冬休み中の課題、ちゃんとやっといたんだ」

公平「こっ! この裏切り者め! そこになおれっ! その雁首、たたっ切ってくれるわっ!」

教卓の横に掛けてあった、スペアの出席簿を縦に振りかざし目を血走らせる公平。

しかも、そこに「なおれっ!」て、教卓に乗っけろって事か!?

完全に打ち首じゃないか!

蒼司「俺はやらないとは、言ってなかったぞ! それに息子関係無いわ!!!」

蒼司「しかも、そんなもんで切ろうとするな! 余計痛いわっ!」

公平「くそーっ! 俺だけかよ。横島や日暮は?」

蒼司「ちゃんとやってたよ…たぶん今回、ウチのクラスで公平だけだよ、課題やってないのは」

公平「そんなバナナ……」

蒼司「皆、課題やってこないから、今回やる気出るくらい、超少なくしてくれたんだぞ…あれっぽっちやらないでどううする……そしてバナナは古い古い」

高橋「おい、聞こえたか?」

俺たち二人のやりとりを聞いていた高橋と岡本が、何やらコソコソとしゃべり始めた。

岡本「あぁ、聞こえたよ」

高橋「公平のやつ、冬休み中の課題一つもやってないみたいだぜ?」

岡本「ぷっ、俺少しはやってんのかと思ったよ」

高橋「あぁ俺も。あんな簡単な課題もやってこないんじゃ、今年のダブりは決まりだな」

岡本「ほんとどーしよーも無い奴だぜ」

高橋「蒼司も大変だな、あんなのが親友じゃ…」

岡本「でも、類は友を呼ぶっていうしな」

公平「っ!」

岡本「伸び伸び遊ぶと書いて、伸遊の間違えじゃないのか?」

高橋「はっはっはっはっは」
岡本「わははははは」

公平「…」

蒼司「…ちょっと」

公平「と…止めるなよ…蒼司」

ワナワナ拳を握り締める公平。

蒼司「!?」

公平「……"俺"の悪口だけなら許せる…」

蒼司「公平…」

公平「だがな…」

画面効果:白点滅一回

公平「…"俺"の悪口だけは……絶対に許せないんだーーーーーっっっ!!!」

蒼司「どっちだっーーーー!」

クァッ!

公平「このヤロー」

公平が岡本と高橋に殴りかかる。

高橋「ひぃっ! 掃除しないから意地悪言ったんだっっ」

岡本「ひぃっ! そうだすまんっっ」

画面効果:

咄嗟にガードしようと、突き出した岡本の箒の柄の先端が公平の鼻に刺さる。

古くなり縦に割れ壊れた先端だ…さぞかし痛いだろう。

公平「ぬ゛ぃぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

背景:学校

画面効果:揺らす

蒼司「こっ、公平…」

岡本「すっ、すまん。公平!」

公平「もう許さないぞ! お前達! 泣いたって、絶対に許さないんだからな! ぐへへへへへ」

首も痛めたのか、ブツブツ言うものの、未だに立ち上がれない小鹿公平。

岡本・高橋「あわわわわわ」

効果音:扉(ガラッ)

鈴奈「天城せんぱーい!」

グリン!

公平「すっ、鈴奈ちゃん!」

無残にも曲がり、片方大きくなった鼻の穴から鼻息を噴出して立ち上がる公平

蒼司「おー、鈴奈珍しいね」

鈴奈「やほーっです。今日は部活も無くて暇なんですよ~。天城先輩、今日はこの後に予定ありますか?」

公平「あれ? 俺は」

鈴奈「あ、仲条先輩もこんにちは」

公平「おいーっす! オイィィィィーッスッッッッ!!!」

きっ、傷が回復した………

高橋「おい岡本、今のうちに掃除しようぜ」

岡本「あっあぁ」

なんだかんだで高橋も岡本も、俺や公平と仲が悪いわけではない。

なんとなく一年の時から、お互いわかっていてやっている暗黙のギャグのやり取りだ

効果音:横扉

遠山「公平ー!」

公平「ん? 遠山の爺さん? なんでしょー」

担任の遠山の爺さんが登場。

遠山「公平、職員室で数学の渡辺先生に会ってな、お前に釘を刺すよう頼まれたんだ」

公平「ぐっ! あのオジンめ」

遠山「こら! だーれがオジンだ!」

公平「先生! 僕はまだ掃除をしていません! 皆が一生懸命掃除しているのに僕だけ勉強なんて心が痛くて、とてもそんな事は出来ません!」

今、帰ろうとしてたのに…なんつー言い逃れだ。

蒼司「言ってると事とやってる事が違うぞ」

公平「ふふんっ、まだ未遂さ」

遠山「大丈夫だ、それは言ってあるから掃除が終わってから行くんだ」

公平「なにぃっ!」

蒼司「ぷぷぷっ」

岡本「公平…」
高橋「ドンマイ」



[正面玄関]

蒼司「昨日あの後、変なの居た? 俺も話かけられたんだよね」

鈴奈「天城先輩もですか?」

蒼司「多分あれが鈴奈の言ってた人物だと思うけど」

鈴奈「私は大丈夫でしたけど…というか私が美東先生と出た時はもう居ませんでした」

隠れてたのかな? 美東先生のオーラに気圧されたというのもあるだろう…

蒼司「確かに変な人だったね…」

鈴奈「はい…気持ち悪かったです…」

あっ、それで帰りに俺の所来たのかな

また居たらどうしよう…俺より強いとか言ってたよな

でも変な人だけど悪い人って感じはじなかったんだよな



[校門]

蒼司「…」

鈴奈「…居ま…せん…ね」

蒼司「うん」

鈴奈はほっとしたようだ

蒼司「通りすがりのナンパじゃないかな?」

鈴奈「そう…ですね」

蒼司「そういえば今日の予定は? って聞いてたけど遊びのお誘い?」

鈴奈「はい! 町まで出ませんか?」

鈴奈は一転して嬉しそうに答えた

蒼司「お、いいよ。久しぶりだなぁ、鈴奈とは冬休み中はメールだけだったもんね」

鈴奈「一年生って、冬休みはあんなに課題でるんですね…」

蒼司「うん、やってないけど量すごかったなぁ…二年、三年って少なくなっていくみたいだよ」

鈴奈「あぁー私も遊べばよかった」

蒼司「でも、やらなかった俺と公平は二月の五日間のスキー教室行けなくて補修だったけどね」

鈴奈「…それは困りますね」

蒼司「でも俺と公平は答え合ってる合ってない云々関係無しにすぐに終わらせて鈍行列車で三日目に追いかけたけどね」

鈴奈「相変わらず凄いガッツですね…そういえば掲示板に張ってあった、スキー教室の写真に天城先輩も仲条先輩も普通に
写っていましたもんね」

まぁ帰って来たら怒られたのだが

蒼司「自転車取ってくるから待ってて」

鈴奈「はーい」

校門から一個離れたわき道から自転車を取りに行く

蒼司「…」

黒いサドルには猫の足跡が付いている

蒼司「くっ! 随分器用な猫じゃないか…」

サドルの下に入れているタオルで

足跡を拭きまくる

鈴奈の待つ校門へと行こうと振り向くと

鈴奈「あははっ♪ 先輩ツイてないですね」

蒼司「鈴奈?」

振り向くと鈴奈が立っていた

蒼司「あ…」

待ちきれなかった? と冗談言おうとしたがすぐに気が付いた。

…そうか馬鹿だな俺…昨日の今日で校門に一人待つなんて怖いよな。

蒼司「ごめん鈴奈、一人にして」

鈴奈「いいえ、私が側にいたいなと思っただけですから」

そのまま本当のことだけど、その言葉は決して俺を遠まわしに攻めるような言葉でもなくて

俺は鈴奈の言葉に対して直接、何も言えなかった

ほんと反省しないと…

蒼司「さっ行こう、乗って」

鈴奈がどこか楽しそうにトコトコ駆けて来た

鈴奈「それでは失礼しまーす」

荷台に乗ったのを確認すると俺はペダルを漕ぎ出した。

鈴奈「ゴーゴー♪」

テンション上がる鈴奈

こっちまで陽気になってしまう浮かれっぷりだ。

しかし、ふと一つ気になる事が浮かんだ

蒼司「……鈴奈、少し重くなった?」

鈴奈「!」

効果音:

画面効果:

蒼司「うぁっ!」

軽くなった後ろが気になり振り返ると鈴奈が卒倒していた。

蒼司「ぎゃあああああ、どっどうしよう!!!」



「碧空町駅前」

とりあえず誤り捲くってそこまで変わっていないからと言ったのだが、結局意味は同じで乙女心の分からない俺は、ただただ誤りなんとか、碧空町まで来たのだった…

蒼司「取り合えず駅前まで来てみたけどどうしようかなぁ、どっか行きたい所や、行きたい予定の所ってあった?」

鈴奈「うーん、特にノープランでいつも通りお誘いしましたけど、あっ、天城先輩お腹すきませんか?」

蒼司「え?」



鈴奈「空きましたよね? 何か食べましょうよ」

まさかやけ食い?

蒼司「鈴奈が小腹空いてるんじゃない?」

鈴奈「むっ、失礼ですね、そんなことないですよ! どこまで私を食いしん坊キャラにしたいんですかっ!」

なんだかんだで俺や公平、鈴奈だから、リアクションやその場限りで、これくらいのやりとりは笑いで済む所が素晴らしい。

これを由紀菜に言ったら張り倒されるかソバットでも食らいそうな気がする…

蒼司「いや、だって俺別にお腹空いてないよ」

鈴奈「ぐっ」

蒼司「…」

鈴奈「…」

二人でにやり

蒼司「たこ焼き!」
鈴奈「たい焼き!」

鈴奈「…じゃんけんっ」
蒼司「…じゃんけんっ」

蒼司「ポンッ」
鈴奈「ポンッ」

俺はパー

鈴奈はチョー

鈴奈「さっ、たい焼きたい焼き♪ 今日は沢山食べちゃいますよ~♪」

このようにツッコミ待ちのボケも日常である。

画面効果:横流し

結局,、鈴奈はあずき、カスタード、抹茶あずき、と三種のたい焼きを食べた後、フルーツあんみつまで食べていた。

俺なんて、たい焼き二個とお茶で満足だった…

蒼司「ふー美味しかった。夕飯までには空腹にしないとなー」

鈴奈「はぁ~、美味しかったですよねー。食べてる時はやっぱり幸せを感じるですよ」

蒼司「…やっぱ、食いしん坊キャラじゃん」

鈴奈「む~、評論家と言って下さい」

蒼司「美味しい美味しいだけで、食べ捲くるだけだから、やっぱり食いしん坊キャラじゃん」

鈴奈「百歩譲ってそういう事にしておきましょう」

そう言って笑う笑顔の鈴奈の鼻にはカスタードが付きまくっていた。

蒼司「鈴奈、鼻鼻、カスタード」

鈴奈「うわー! 先輩知っていたならもっと早く言って下さいよぉ~」

顔を真っ赤にした鈴奈がハンカチで鼻を隠しながら碧空町一のデパートの中にスクランブルしていった。

蒼司「ごめん鈴奈。夕陽が眩しくてでイマイチ気が付かなかったんだってばさ…」



[十字路]

鈴奈「それじゃ、先輩また明日ー」

蒼司「おーう」

さって五時まで30分か

バイトは五時からだからな、ここから歩いて9分だからゆっくり行っても十分間に合う

俺は、のんびりバイト先のファミレスに向かうことにした。



[碧空町~駅付近~10時15分~]

携帯を取り出しディスプレイを覗く

「7:30/件名:Re:深夜が来てご飯食べに来たよ。
本分:深夜は、8時15分に帰宅しました♪ 今日もバイトお疲れ様(≧ω≦)b」

いつも通り、俺がバイトの日は深夜がエルパティオでご飯を食べている。そして俺の元にこうやって翔子姉からメールが届く

「10:18/件名:Re:深夜が来てご飯食べに来たよ。
本文:深夜の夕飯ありがとう、正樹さんにもよろしく!」

返信っと。

さてと帰るか…

と思ったが…

鈴奈がずっと鍛錬を止めずにいたならやっぱり結構な実力を持っているんじゃないかな?

気になる…

もし凄かったらこっそり教わりたいぞ!

とゆーことで、俺は鈴奈に電話をかけることにした

音:電話

鈴奈「はい、もしもしっ」

出るの早いな

蒼司「あぁ、今日はありがとう」

鈴奈「いえ、私のほうこそ楽しかったですよ、また遊びましょうね」

って、会話終わっちゃってる!!!

蒼司「あの…さ、えーと」

鈴奈「? …はぃ」

はっきり言ってしまっていいのだろうか…

いいかな…

蒼司「鈴奈…霊力の扱い方、結構わかる?」


鈴奈「…」

なんか電話の向こうで鈴奈がコケたような気がした

鈴奈「…一部だけなら、お姉ちゃんには負けないと思います…」

蒼司「マジでかっ!」

由紀菜より強いって凄すぎだろ! あ、でも姉妹だし血は争えんってことかな

よし!

蒼司「あのさ、ちょっとだけ教えてもらえないかな?」

鈴奈「…いい、ですよ?」

なんで疑問系なんだ

鈴奈「いつですか?」

蒼司「今! 今!」

鈴奈「今っ!?」



蒼司「あはは、やっぱ遅いかな?」

鈴奈「いえ、そんなことないですけど…まだお風呂も入ってないよぉ…」

蒼司「…」

なんかお風呂がどうとか聞こえたけど…

鈴奈「……先輩、霊力に関してお困りなんですか?」

蒼司「うん、なんか実力的に付いていけてない感じ…」

まぁ、たんに周りが強すぎるだけだけど

鈴奈「わかりました。いつも何処で練習してますか?」

蒼司「まだそこでは一度しか練習してないけど、由紀菜にこないだ教わった霧島神社の裏の森はどうかな?」

鈴奈「…それまでは何処で練習してたんですか?」

蒼司「夕陽町手前の碧空側の橋げた」

昔は、あそこで父さんに教わっていたからな。

鈴奈「私のは橋げたの方でもいいと思います。橋げたにしましょう」

蒼司「わかった。今から向かってもいいかな?」

鈴奈「はい、私も今すぐに準備して向かいます。それでは橋げたで」

蒼司「あぁ、無理言ってごめん。ありがとう!」

鈴奈「いえいえ、先輩からの頼み事なんて滅多に無いですからね、嬉しいですよ。では」

音:電話切れる音

蒼司「よし、では向かうとするか」

俺がバイトの日は、たまに俺の帰りが遅かったりするので深夜は早く寝てしまうのだ(構ってもらえないから)

まぁたまに居間でゲームしてるけど



[橋脚]

鈴奈は来てるかな…

位置的に俺のバイト先とさほど距離は変わらないんだよな

橋脚まで降りて待ってから五分後、鈴奈がやって来た

鈴奈「お待たせしました」

やはりネジタイザーは外して来なかったか…

鈴奈の左手には変身ブレスレットが装着されていた。

蒼司「いや、全~然! 急なのにありがとう」

ほんとは俺に霊力が使える事を隠していたと話していた由紀菜の話を思い出し聞きたかったが、以前より距離が近いというか遠慮がなんとなく揺らいでくれた
気がしたので余計なことは聞かない事にした。

鈴奈「ふふ、さぁ始めましょう」

折角だ、最近思いついた事とか聞いてみよう

蒼司「霊力の前に質問なんだけど、由紀菜の体術って独学? 由紀菜って凄い強いからさ」

鈴奈「お姉ちゃんの体術……?」

鈴奈が首を傾げた

蒼司「うん」

鈴奈「天城先輩、お姉ちゃんはちゃんと父に教わりましたよ。って事は…あれ? 天城先輩、体術って習わなかったですか?」

蒼司「うん」

習う? 初耳だ、なんだそれ

鈴奈「その場の状況や残り霊力、対象の力が不明等、その人の特性を生かした四つの体術です」

蒼司「体術って霊力と関係が?」

鈴奈「はい、ありますよ。体術は常に霊力を消費します、早い動きや繰り出す攻撃にも霊力の練り方で特性や付属効果が変わってきます」

蒼司「ってことは、速い人と戦うなら、その相手と同じ速さの人じゃないと付いていけないの?」

鈴奈「あくまでですが、単純にはそうです。先輩開門している時と、していない時で相手の速さの見え方が違いませんか? それに何かの気配を感じると無意識に目を凝らしたりして見ようとすると、見えやすくなったりとか」

確かに、いきなりゾクッとして、警戒しながら状況を見ようと無意識に開門している時がある、宮内の咄嗟の攻撃にイキナリ対処できたのがそうか…

蒼司「うん、確かに違う」

鈴奈「それとは別に、速さに特化させる相手も見切りに特化しているのも、多分そういった事が得意で自分で何か霊力を練っていたりする場合があります。道の感知系統とかではなく個人で体得しているか生まれつきか…その辺は様々です」

俺は…何もないよな

蒼司「鈴奈や由紀菜はそういったモノがあるの?」

鈴奈「…私、は…………生まれつきではありませんが、得意分野の一つを猛特化させた部分があります。お姉ちゃんもあると思いますけど…私は知りません。得意分野が知れ渡るのは自分の生命に関わる恐れもあるので、先輩も人には言わないほうが良いです」

そっか、それに得意分野を知られていると決定打に欠けてしまう場合もあるだろうしな

蒼司「じゃ、話が戻るけど、その四つの体術って難しいかな?」

四つも覚えられる自信が無い…

鈴奈「いえ、そんな事無いですよ。自分に合ったのと、自分が苦手な相手と戦うためのと基本、三つくらいでいいと思います」

蒼司「そか、安心した。その四つの説明してもらってもいいかな?」

鈴奈「はい、まず一つ目が盤撞(ばんしゅ)攻防が基本の体術で攻防している最中に霊力を練りながらも戦います。霊力の攻防への分配バランスが
非常に良くて、熟練した師なども得意とする人がいるみたいです」

鈴奈「二つ目、里間(りま)です。対三力に長けた体術です。起で起こした五帝銭の剣や槍などで間合いや攻防線を関係なく考えて戦い
常に攻防と霊撃での交戦が同時に練り繰り広げられ霊力の消費は激しいですが、圧倒的な技力と力を使い全力で敵を叩き伏せます」

鈴奈「三つ目、避化(ひか)です。対三力の力の軌道や圧力を流したり跳ね返したり削いだりする防御特化の体術です。これも防御の寸前と
インパクト時に体力と霊力を大きく消費します」

鈴奈「四つ目、躍夢(やくむ)です。ステップや常に距離を図りながら戦い撹乱しながら戦います。」

…ほんとに覚えられるかな? 今のところ、かなりチンプンカンプンだ…

鈴奈「以上です。あはは、そんなむ難しい顔しないでください。一つずつ覚えていけばいつの間にか全部意味がわかるようになっていますから。
それに一つ一つが長い習得時間を要するわけでもないんですよ。それに霊力のコントロールにも関わってくるのと、強い霊力攻撃を繰り出すための肉
体の耐久力を挙げるのにも体術練習はもってこいなんですよ」

蒼司「正直、習得時間が短いのは助かる」

鈴奈「先輩、ではまず、どれが合っているかをみたいので攻めてきてもらえますか?」

蒼司「攻めるったって…俺ケンカとかした事ないからわかんないよ…」

鈴奈「えーと…では私が攻めるので避けるなり勝手に動いてください。その時に出た天城先輩の反応の仕方や動きから見てみます」

蒼司「わっ、わかった」

鈴奈がそんな攻めてくるとかどうなるんだろ…予想すらできないな…

鈴奈「行きます」

効果音:風音

画面効果:白く

音:倒れる

鈴奈「ぎゃー先輩っ! 大丈夫ですか! ごめんなさいっ!」

蒼司「…ごふっ」

そして目の前が真っ赤に染まった

画面効果:黒・フェードアウト

鈴奈「先輩…三力を使った戦闘の場合、開門して全神系統に霊力を開通させないと相手の動きに対応できないですよ…」

うぅ…鈴奈、そんな悲しそうな顔で見ないでくれ

蒼司「胸痛い…」

なんてこった、初めから大恥かいてしまった。

服を捲くると胸に痣があった…

鈴奈「ちょ…先輩、私一応女の子なんですよ」

鈴奈が耳まで真っ赤になっっていた。

蒼司「あっ、すまん」

すぐに服を戻した。

それにしてもよく胸骨が砕けなかったな。多分避けないと(避けれない)わかって寸止めされて拳圧みたいなのでこうなったと思うけど

鈴奈「今、治療しますね」

蒼司「そんな事も出来るのか」

鈴奈「? 気の治療とかするじゃないですか? あれの瞬間的で強力なモノで、霊力で先輩の細胞をフルに活性化させて早く治すんです。これくらいの痣くらいなら一瞬で治りますよ」

蒼司「今、鈴奈が使っていた体術は?」

鈴奈「あれはただ速度重視に霊力を練っただけですよ、練ると言っても、よし行くぞみたいな時にある溜めみたいな
部分の事なのでスタートが早いだけで、別にどれにも属しません」


…俺はそれにぶっ飛ばされたのか…

鈴奈「それに四つあるとはいえ、全部大事といえば大事なのですが、たった一つだけを極めても強い方もいますし、全部を極めて新しく体術を独自に作る人もいます、すべての自分の動作に自然と四つの動きが出ても強いかたがいます。あくまで自分の戦い方が創られる肯定や指南的な教えなんです。なのでじっくり自分の戦い方を創るほうがいいですよ」

なんかとんでもない事になったな…匠の世界だ…はは

もう消えたのかな?

蒼司「あっ、消えてる!」

鈴奈「…」

鈴奈はというと顔を逸らしていた

鈴奈「…はい、おしまいです。服捲くらなくても先輩の細胞に霊力でリンクしているのでどのくらい治ったかとかわかるのに…」

そう言った鈴奈の顔は、まだ真っ赤だ

蒼司「ありがとう、ほんと凄いな鈴奈」

鈴奈「これくらいは出来ないとお姉ちゃんに負けてしまいます」

蒼司「由紀菜もできるのか…」

鈴奈「うーん、お姉ちゃんはどうだろう? 戦って守る考え方だからなぁ」

蒼司「鈴奈は?」

鈴奈「どっちもどっちですけど、私は守るために戦います。では先輩続きです」

蒼司「うん、よろしく」

鈴奈「先輩まず開門してください」

蒼司「あぁ…」

鈴奈「さっきはそこまで知らないとは思わなかったので」

蒼司「…」

今に見てろっ!

あぁ、由紀菜がニヤけてるのが浮かぶ

鈴奈「先輩、まず攻撃当てたいですか? 避けたいですか?」

蒼司「…当てたい…かな? 避けてるだけじゃ限界があると思うし精神や体力の消耗も激しいんだろ?」

鈴奈「はい、バランス型な考えが出来ていますね。…合いそうなのは単純にたぶんオーソドックスの盤殊ですね」

蒼司「それって個性ないのかな?」

鈴奈「先輩っ! 生き残るのと個性派で散るのどっちがいいんですかっ!」

蒼司「生き残るの…」

鈴奈「まったくもう」

蒼司「あはは、やっぱバランスが大事だよね」

鈴奈「…慣れたり、自分にはこんな弱点があるってわかったりしてきたら他のも覚えたりすれば遅くないですよ」

蒼司「そっか! よし鈴奈、まず殊を教えてください!」

鈴奈「わかりました」

殊の距離とステップ。対未知三力戦の敵との最初の距離。打拳腿に霊力を込める。そこから霊力をサポートに展開までの
動きを教わった通りに、実際に鈴奈との打ち合いに使ってみる。

鈴奈「うん、先輩は土壇場になると全く物怖じしないし今の動きなら戦闘が始まったら動けると思います」

蒼司「開門してると身体も思ったとおりに動いてくれるんだな」

鈴奈「先輩は身体が柔らかく霊力の流れも凄くいいみたいですね。それに開門とは脳みそが全身に回っているような状態ですからね、通常、脳より一番低
い腿に攻撃を受けやすいのは脳から離れているからと言われていますからね」

蒼司「ほとんど達人の域じゃん」

鈴奈「達人は境域まで達していて極めているレベルがおかしい人の事です。また別格の方々です」

蒼司「そっかちょっと甘いか」

鈴奈「先輩は基本の五霊門はどれとどれが使えますか?」

蒼司「放の砲」

鈴奈「と?」

蒼司「…だけ」

鈴奈「だけ…」

鈴奈は困ったような顔をする

蒼司「それしか教わってないんだ」

鈴奈「そうですか、わかりました」

鈴奈は俺の両親が死んでいるのを知っている

鈴奈「先輩は霊力に関して、お姉ちゃんから何処まで教わっていますか?」

蒼司「教わったというか、俺の今の霊力で砲が何発打てるか? とかそれを一発に数発分溜めて打つ練習を見てもらったりとかなんだ」

鈴奈「わかりました、先輩はお隣の中国や日本の密教や陰陽道で使われる五行って単語聞いたことありますか?」

蒼司「あー、うんあるよ」

霊力も起の中にその基本五行があります。たとえば雷を起こしたり火や水を起こす。壁や足場を作る土等があります。魔力では四大元素と言われ愛と争で四つの結合と分割がくりかえされるという思想の上でなりたつ部分です。霊力では陰陽によって同じ原理がなされます。それは始祖の考え方や発想の違いでこうなって
いるわけなのですが」

……魔力はわかんないから、取り合えず霊力の部分だけ真剣に聞こう

由紀菜「では五行の中でイメージしやすく起こしやすい火からの説明です。体内には五つの炎があります五臓の事を五つの炎として考えられるのです。後は元々身近な
雷と水がイメージしやすいです。先輩どれからやってみますか?」

蒼司「火が簡単そうじゃないか?」

鈴奈「火ですか、では砲の要領で燃え盛る炎を霊力を使って体内で燃やしてください」

蒼司「体内で燃やす?」

鈴奈「はい、心臓が燃えて熱くなるイメージをします。そしたら心臓を通している血管にマグマのように流れ手の平にあふれ出すように」

少し立つと居ても居られないような熱さが胸を駆け回る

ドロリとスライムみたいな熱い液体が腕を流れて行くのを感じる

画面効果:

エフェクト:

蒼司「おわぁっ出た! 出た! まんまやったら出たよ」

やばい! 俺凄い! 天才かも!

鈴奈「霊力が扱える人ならここまでは大体できるんです。雷や水も同じ要領なのですが、水と土は練ったり起の熟練が低いと霧散しやすいんです。水や土を使ってどう攻撃するか教わったりイメージしなくてはなりません。水なら凍らせて礫を作ったり、尖らせて飛ばす、動く物を冷気を放って凍らせる、足場を作ったり悪くさせたり等ですが」

蒼司「この炎、消してもいい?」

鈴奈「はい、どうぞ」

俺は手に起こした炎を振って消そうとした

蒼司「えいっ」

ぶあっ

蒼司「うわああああああ」

鈴奈「先輩! 何してるんですか!!!」

蒼司「助けへぇー」

………

……



鈴奈「…」

蒼司「ありがとう、助かった」

鈴奈「いえ、先輩らしいギャグでした」

蒼司「はっ、ははは…は」

いや、あんな身体張ったギャグは出来ないよ…もう少しで焼身自殺だった

鈴奈が携帯を取り出した

鈴奈「はい、それでは結構なお時間なので疲れもあると思いますので今日は解散しましょう。先輩、後は今日教わったことを忘れないように自主でもしてください」

蒼司「わかった」

鈴奈「今日、やったことをなぞるのではなくて、今日先輩が覚えたことを自主でやってください。すでに私が言葉で発しなくても先輩が今日の中で感じたことや覚えた感覚があると思います」

蒼司「おっけ了解!」

でも、むづかしいよな…

ヘタレで無学の俺はちょっと心配になってきた…

蒼司「…でも一人だと分からない事が多くて、どうやって練習したらいいかな?」

鈴奈「…最終手段はあります。私も最近思っていた考え方ですが」

蒼司「どんな?」

鈴奈「先輩は、お姉ちゃんや何かと戦っているんですよね?」

蒼司「うん」

鈴奈「その人達の動きを見たり、戦いを見ていて、どう動けばいいか、どの時は早く動かないととか、意識を集中しないといけない場面の時に、自分の一番良いと思った行動に霊力を分配させて霊術を使い攻撃していくんです」

蒼司「つまり、まとめると?」

鈴奈「自分の正解だと思う行動をすればいいんですよ。さっき私が教えたのは先人達が残した教科書みたいなものです。でも、天城先輩は天城先輩です。先輩が戦っていく中で勉強になっている部分や反省部分を思い出せば、自分はあの時どううごけばよかった等出てくるはずです。それが先輩に必要な事です」

蒼司「じゃ、むづかしそうだったら無理して覚えなくてもいいと?」

鈴奈「はい、今日基本に触れて実際に動いたのが何よりの勉強です。教えといてなんですけど」

蒼司「そっか、なんか自分の戦いとかも自信つく気がする」

鈴奈「誰でも通る登竜門みたいなものです。私は覚えていたのを練習し、お姉ちゃんは徹底的に父に教わりました。これは派や家系の教育方針の違いです。教えていて思ったんですが。先輩のお父さんは多分、自然に必要な時、必要なモノだけを吸収していったんだと思いますよ」

蒼司「ありがとう鈴奈」

鈴奈「とんでもないですよ。……私こそ今日色々考える事が出来ました」

鈴奈がいつもより決意の篭ったような強い目で、そう言った。

蒼司「何一つ無駄な事ってなくて、何処かに今すぐじゃなくとも繋がる意味があるんだね…」

鈴奈「そうですね。今日の事もいつか、先輩にも私にも」

今度は、凄く柔らかい笑顔で笑った。

二人で土手を登る

蒼司「送る?」

鈴奈「うーん、嬉しいですけど…」

鈴奈も俺より格別に強いからな…

鈴奈「じゃ、お願いします」

ちょっと照れくさそうに、そう答えた

蒼司「うん」

画面:背景

鈴奈「…」

さっきから何かちらちらこっちを伺っている…なんだろう

鈴奈「あの…」

蒼司「ん?」

鈴奈「先輩とお姉ちゃんて、どのくらい仲がいいんですか」

どのくらいときたか…なんて答えたらいいのかわからないな…

むずかしい質問だ…そういえば、前に、私だけ仲間外れか、って言ってたもんな

蒼司「まだ知り合って間もないいんだ、だから仲とか気にするような仲でもないんだ」

鈴奈「…そっか、うん、わかりました。先輩これからわからない事があったらお姉ちゃんだけじゃなくて私にも相談してくださいね」

蒼司「あぁ、助かるし心強いよ。ありがとう!」

鈴奈「えへへ、あっ到着。先輩送って下さってありがとうございます! では、おやすみなさーい」

蒼司「あぁ、いつの間にか着いてたんだ。今日はありがとう! おやすみー!」

今日は大量に収穫だったな…

そういえば由紀菜は何が得意なんだろう…五霊門にかんしてはどれも使いそうだし、千尋との戦いでの抑力をしていたのを計算しても…
体術は鈴奈に比べるとスピードが速く短期決戦と

携帯を見ると確かにやばい時間だ

…二時半

あっ、明日起きれるかな…