猫の踵の創傷 | 多摩川のふもとで犬や猫と暮らしている

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動物病院 EL FARO 院長が日々の診療の中で考えたことや思いついたことを書いています。

内容は、動物や獣医療に関することや、それ以外のことも、色々です。

 

  猫の踵の創傷(フラップによる閉鎖)

 

前回、「犬の踵の創傷」をご紹介しました。犬の場合は(状況にもよりますが)手術によらない方法=ドレッシング管理による「二期癒合」でも治癒することがあります。

 

しかし猫の場合は・・・

どういう訳か猫の傷は治り難いです。

特に「慢性創」と言って、受傷から長期間経過した創傷や、踵などの関節突出部の傷は非常に治り難いことが多いため、ドレッシング管理による保存的治療を行なっても、多くのケースでは治癒が期待できません。

 

 

この猫さんも、かかりつけの病院で色々と治療をされて来ましたが、一向に治らないとのことで当院に来院されました。

 

猫の踵のキズは基本的に手術による治療が必要となります。

 

手術にはいくつかの方法がありますが、前回の犬の症例と同様に「そのまま皮膚を引っ張って縫う」とほぼ確実に傷が開いてしまいます。

したがって、皮弁(フラップ)という手法を使います。

 

専門的に言うとReverse Saphenous Conduit Flap(逆行性伏在導管フラップ)という、長ったらしくてカッコイイ名前のフラップを利用することが多いです。

 

 

踝(くるぶし)からふくらはぎの内側を走行する血管&皮膚を利用したフラップで、これにより踵の損傷部分を塞いで閉鎖します。

 

術後にこの部分に体重が乗ってしまうと、フラップの先端が血行不良を起こして壊死します。特にこの猫さんはアキレス腱を損傷していて踵を着いて歩いてしまうため、この子専用の装具を作成しました。

 

装具の作成は、動物専門の装具屋さんとして有名な東洋装具さんにお願いしました。

 

リンク:東洋装具医療器具製作所

 

 

幸い壊死することなく、約2週間後に抜糸。

その後も(踵を着いてしまうため)装具をつけて管理してもらっています。

 

 

1ヶ月くらい経過したところ。

フラップの部分だけ毛の生え方が違いますね。

 

このように、同じ踵の創傷でも、犬と猫では治療法が異なる場合もあります(状況にもよります)。