第三巻.クシナダ VS 大蛇 の巻
3人のパーティーとなったおれらは
お姉ちゃんとの待ち合わせの場所に向かった。
なんと、うさぎ?のやつ、雪を消す能力を持っていて
これから向かおうとする方向の雪が歩みを進める都度、
消えるのだ。
これは便利!と思いつつも
雪を消した後の田んぼや畑の表面が
荒れていることに気づいていたが
まあ、
それは仕方がないよなと
自分を正当化して先に進んだ。
・・実は これが、のちに大事件となるのだが
誰もそれには気づかなかった。
しばらく歩くと
雪が浅く、何度も何度も何かで圧雪された場所に出た。
何かがあばれたのだろう・・長さの違う折れた木が
そこら中に飛び散っていた。
そして
なんだか生臭い・・
ペチッペチッと軽い音に合わせて
『ひい~』と悲鳴に近い叫び声が聞こえてきた。
なんと、目前には
お酒を背負ったカラス天狗が
大蛇に食われそうになっていたのだ!
おれは蛇が嫌いだ!
なにしろこいつの開いた口はおれの身長以上ある。
それはいいが・・蛇の表面のつるつる感が嫌いなのだ!
あと、あのどこからともなく匂ってくる生臭いにおい。
そして、あの何かの方式で色付けしたような
ボディーの多色カラーリングを見ただけでじんましんが発動する。
身震いをしながら
ほったらかして先を急ごうとすると・・
『おい、ちょっと待てよ!』と、
クシナダちゃんが鼻息を荒くして声をあげた!
『おい、ちょっと待てよ!』は、こっちのセリフだよ~
もう限界なんだよ~蛇は嫌いなんだよ~
と、背中を丸めてしゃがみこんでいる間に
クシナダちゃんは
おれの背中を思いっきり踏んづけてジャンプをした。
その動作の途中、
おれの背負っていた草薙剣(くさなぎのつるぎ)を抜き取り
大蛇に向かっていった。
凄まじい速さである!
振り向いたら、
もう大蛇の首は地面にドッと音を立てて落ちていた。
落ちた首はなんと、おれの足元に転がってきた
『ギャアアア~』と、思わず大声を出してしまった。
しかもその首の持ち主の目は、
あきらかにおれのほうを見ている。
やつはまだ自分が死んだことに気づいていない。
胴体もないのに首だけで動こうと
なんとも不自然な死のダンスを踊りながら
首だけでおれに向かおうとしているじゃないか~(泣)
世の中にこれ以上に気持ち悪いことは絶対に無い!
そう思いながら
全身、じんましん発動!
クシナダちゃんは
大蛇の首を目玉が飛び出るほどの力で踏んづけながら
カラス天狗に向かって言った
『おい!ガキ!』
『背中の酒は無事か??』
『それ、隠し酒だろ!!!』
『そいつを置いて家に帰れ・・ん?』
『待てよ・・お前、まだどこかに隠しているだろ!』
そう言って、
カラス天狗の背中の酒をむしり取り
すぐさま酒を口にした。
瞬間で
クシナダちゃんの目の色が変わった
なんとも美味~ 気絶するほど旨い!!
なにせこの酒は
妙高山の湧き水で育てた極上の米を使い
更に厳選された極上米だけでつくった酒なのだ
一口飲むと、
喉を通過するときにジュワジュワっと心地よい刺激がある。
新鮮で極上の証拠である。
ものすごーくジューシーで
下戸なやつでもいくらでも飲めてしまうのだ!!
旨い・・旨すぎる・・
あっという間に飲み干した後、
『おい、隠し場所を教えろ!』
と、言いながら
カラス天狗の胸元を持ち上げたのだ!!
えっ・・・えぇ・・
もしかして・・・
カラス天狗の救出の目的は
酒だったのか!!
『おい、スサノオ!
このくそ蛇、蒲焼きにしてつまみにしようぜ!』
(呼び捨てかよ・・おれだって名のある神だぜぇ(心の声))
とクシナダちゃんは言うが
何度もお伝えするが、
おれは蛇が大嫌いなんだよう~(泣泣)
しかも下戸だし・・
全身、じんましんでおまけに最高に鳥肌が立ったおれは
ブルブルしながらクシナダちゃんの足の下の生物を見ると
両目玉が飛び出てぐちゃぐちゃになっているのにも関わらず
その両目がぐるりと動いておれを見たのだ!
そのあとの記憶が無くなるという
情けない、静かな夜が過ぎた。
4巻 カラス天狗 地球を救う の巻 へ続く
