4巻 カラス天狗 地球を救う の巻
この後、
まあいろいろとあったのだが、
とりあえず
おれらは4人パーティーとなった。
(カラス天狗はクシナダちゃんの下僕)
カラス天狗が手にしている扇は
飛行、風雨の操作、火炎の制御、分身、変身、妖魔の退散など、
様々な神通力や奇跡を引き出す、超便利なグッズなのだ。
ただ・・残念なのが
本人が弱すぎる。
棒切れを持った鼻たれ小僧に何度も叩かれて
たんこぶを作るは
犬に吠えられて気絶するは・・
まあ、なんとも弱い・・弱すぎる
そんなカラス天狗だが
旅の途中、何度もやつに助けられた。
例えば道中、
捨て石にずっこけてこけそうになったおれを
あの扇を一振りでおれの体を浮かせ、
本来であれば額に大怪我するところを助けられた。
例えば道中、
まんじゅう屋で
持ちきれないほどの温泉饅頭を買って、
独り占めしようとしたその瞬間に饅頭を落としたが
落ちたはずの饅頭が地面に落ちる前に手元に戻った
等々、
数え切れなく救われている。
不思議な力を持ったやつだ。
季節はようやく暖かな春を迎えていた。
通行人の姿も増え、暖かな賑わいをみせている。
うさぎ?のやつも嬉しそうに
時折飛び跳ねながらカラス天狗にちょっかいを出して
『その扇、貸してよ~』と何度も話している。
そして
いや~こいつ(カラス天狗)を仲間にしてよかったと
心から感謝した事件があった。
旅の途中
川岸
目玉がぎょろっと飛び出た一匹のカエルに会った。
カエルはそろばんの前に鎮座し、
指をぺろぺろと舐めながら
不器用な手でそろばんの珠を一珠ずつカウントしている。
うさぎ?の神通力で何が起きているか?わかった!
『あ・あ・あいつはルシファーだ』
『横を通る生き物の数を数えている。』
『カウントが1000になったら
地球上の生きとし生けるものを死滅させる』
そんな想像を絶する遊びをしているのだ。
今、“996”
おい、おれらがやつの横を通ったら
地球最後の日を迎えるじゃないか!!!!
こんな空しい最後ってあるのか??
まだ七辻屋の、とろける綿あめも食べてないし、
クシナダちゃんの手すら握ったことがない。
おれの横を
大好きな、うさぎ?君が・・
毎日寒くて暖房代わりに抱きしめて寝ている
あのウサギ君が
勇敢?な、うさぎ?君が
ぴょんっと飛び出たと思ったら
ルシファーの化けたカエルの前に立ち
カエルの前にあるそろばんを思いっきり蹴り上げたのだ!
ちょ・・ちょっと待てよ!!!
無理だって!!
そろばんの珠は飛び散る始末で
川の中に消えていった。
ルシファーはカエルの姿のまま、大粒の涙を流して
大声をあげて泣き出した。
鼓膜が振動で裂けるほどの泣き声だ!!
この世の想像を絶する最強
誰も勝てない存在がいる。
悪魔
堕天使ルシファー
レベルが違う。
奴を怒らせると、
地球上の生物も一瞬で死に至らせるほどのチカラを持っている。
そのルシファーをうさぎ?は怒らせてしまったのだ
ルシファーの力、存在そのものは常識を超越している。
1億倍強い“悪魔”を倒すようなやつは
絶対に存在しない。
うさぎ?は目を赤くして語った
『あいつは大好きで尊敬するお師匠さんを殺したやつだ!』
『どうせルシファーの横を通っても
そろばんを蹴り上げようとも、
ぼくたちにあるのは死の選択しかないんだ』
『どうせ死ぬなら派手にいこうぜ!』
この言葉がおれに火をつけた。
メラメラと力が湧いてきた!!
おれは強い
対悪魔以外であればNo.1だ!!
絶対的な神だ!
どんどん力がみなぎってくる!!
もしかすると悪魔を超えられるか???
『このくそやろうー』『このくそやろうー』
どんどんエネルギーが増加して
神、最強の瞬間が訪れた。
怒りまくったルシファーは真の悪魔の姿に戻り
天に大きな口を開けて咆哮をあげている。
やつ、重力そのものを操りやがって
うさぎ?は力尽きてダウン
立っているやつはおれとカラス天狗だけだ!
体が重すぎる
精神力(神の力)の弱い奴は
ひっつぶれて地面に平行となって
血液・体液がだだ洩れで、ただの肉の塊になっている。
さっき、カラス天狗を叩いて逃げて行った鼻たれ小僧は
もう、人間の肉とも想像できないほどに
潰れている。
そろばんを蹴り上げたうさぎ?のおかげで
数秒ほど延命した。
しかし、今できるすべはない・・
いや・・この重力では何もできないぞ・・
ああ・・死ぬんだ・・
世界最強をなめていた
マンガの主人公のごとく、
かっこよくルシファーをぶった切ろうと思ったのに
マンガのように読者の心をつかむような行動はできない・・
・・情けない
そう思ったとき
横にいたカラス天狗がこの重力の中、軽々と宙に飛び
扇を一振りした。
その瞬間
なんと
なんと、突然・急に普通の世界に戻ったのだ。
ルシファーの姿も瞬間に消えた
急に重力がもとに戻ったから、目玉が飛び出そうになった
そしてクシナダちゃんに踏んづけられた
クソ蛇を思い出してしまった。
この中、生き残った数人は嘔吐している。
カラス天狗は、いったい何をしたんだ?
『ルシファーは異次元に飛ばしたよ』
カラス天狗は言った。
え!
この地球上で一番強いのは
おまえだったんだ~!!
そう確信して他のメンバーの状態を確認
クシナダちゃんはぐったりして木に寄りかかっていた。
息はある。良かった・・無事なようだ
うさぎ?は?
うさぎ?は・・
残念ながら事切れていた。
第五巻 弥彦の神様 の巻 へ続く
