無機質な時間の中で猫と会う | くればのブログ

くればのブログ

上越市を中心に活動する SingerSongWriter 中村賢一

もう半年以上、ステージに立っていない。
出演のオファーがあっても、その気になれない。
 
出口が見えないというのは、こういう状態を言うんだな。
 
それにしても
ギターを手にすることも無い日が何日続いたのだろう。
こんなに音楽から遠ざかったのは初めてかもしれない。
 
なんだかね
考えてもどうにもならないから、
考えるのをやめた。
 
考えるのをやめて、もう、どれくらい経ったかな。
 
 
でもね
ただ、ぼんやりと何もしていなかったわけじゃあない。
 
途中で停止していたドラクエⅪも
レベルをガンガン上げてクリアした。
防御力なんか無視して、
マルティナにきわどい水着を装備させたり
セーニャにはメダ女の制服を・・と、
妙に心をときめかせながらゲームをエンジョイしたのだ。
 
 
本もね、数十冊、読んだ。
電子本だと、物理的にモノが増えなくていいね。
ホント!
 
 
 
仕事の関係で上越に移住してから16年か・・
いろいろとあったけど、
こんなに心が空っぽになることは無かったな。
 
普段、見慣れた景色もぼやけて見えるようだ。
 
何かを変えなきゃと思い
思い切って、通勤コースを変えてみた。
 
夕暮れになっても暑い9月・・
これは残暑というレベルではない。
 
 
5年前に北陸新幹線が開通した。
 
新幹線の高架橋をくぐり、
会社の窓から毎日見える風景と反対側からの展望は、
夕日に映えた妙高山の山並みを背景に
新幹線が滑るように通過していく壮大な風景なのだ。
 
ゆっくりと、
日が短くなってきた。
 
入道雲にオレンジ色の絵具をたらし、
ぐちゃぐちゃにかきまぜたような空を最近みる。
 
急いで帰る必要も無いから、
そんな風景を楽しみながら帰宅する。

 


 
前方、道路の左側に、茶色い生物が歩いているのが見えた。
近づくと、
しっぽをしなやかに揺らしながら歩く猫だった。
 
そいつは、
おれのクルマの音に気づき、立ち止まりそこに尻をついた。
 
ピンと猫背を精一杯に伸ばしたそいつは、
それからクルっと反転して
おれを見上げた。
 
ゆっくりと通過するおれと目が合い、
じっと見つめた顔はおれを追っている。
 
『不思議な猫だな』
と思った。
 
クルマに驚きもせず、
走り出すわけでもなく
ただ
安全に通り過ぎるのを待っているのだ。
 
バックミラーを見ると、
通り過ぎた後、またゆっくりと歩き出した。
 


 

次の日もそいつに会った。
その次の日もそいつはいた。
 
4日目
だんだんと、そいつと会うことが楽しみになってきた。
クルマを道路のわきに停めて
やつに近づいた。
 
上越妙高駅から滑りだした新幹線をバックに
なんと、
猫が他に二匹いたのだ。
 
白い猫と、黒のぶち猫
 
いつも出会う茶色のやつに
『おまえ、ここに住んでいるのか?』
と、聞くと
こっちをじっと見つめたまま・・
何か、リアクションをする訳でもない。
 
しゃがんで、そいつの顔をよく見た。
しゅっと、細長い顔をした猫だ。
 
どれくらいそいつと顔を合わせていたのだろう・・
少なくとも3分以上、
おれの一方通行な会話に付き合ってくれた。
 
『じゃあな』っと反転して、おれはクルマに向かった。
  
クルマに乗り込んで、やつを見たら、
まだ、こっちを見ていた。
 
 
落ちてきた夕日が、遠くの山に隠れ
夕闇があたりを覆ってくる時間だ。
 
スモールライトを点灯させ、
また、この無機質な時間の続きを楽しむ。
 
まあ、
たまには良いかな。こんな時間があっても。。
 
まっすぐに続くあぜ道は
もう稲刈りの準備がはじまっている。
 
このまま走り続けると
20分で日本海に出る。
 
それにしても
日本の夕焼けはきれいだ
 
 
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。