雪の記憶 ~スキー教室編 #2~
大町にあったヤナバ国際スキー場
もう廃業(休業?)となってしまったが
大きな規模で営業していた頃・・
そう、まだ高校生だった頃の想い出
スキー教室、1日目の夜
夕食を終えて、大浴場に向かったおれたちは
壁一枚隔てた 向こう側から聞こえる 女子たちの声に耳を傾けながら
湯船につかっていた。
お湯は下でつながっているから、
潜水で隣の浴槽まで行けるに違いない・・
壁の向こう側から聞き覚えのある複数のトーン
会話が気になってしかたがないのは
みんな同じだった。
ふと、
『上からのぞけるかな?』 と、
身長185cmの タケシ が言った。
・・みんなの 耳が ダンボ になっていたが
残念ながら、そんな構造には当然なってはいなかった。
皮がむけているかどうか なんていう低級な会話は
もうどうでもいい内容に変化していた。
最近、あまり 耳にしない言葉 だが
これが まさに 『青春』 だった。
大部屋に戻って、おれたちは布団を敷いた。
四角い傘 の 丸型30形蛍光管
夏に死んでミイラ化した虫の影が
下から見てとれる。
照度が足りないんじゃないの?と思う
ふすまの向こうには、やはり同じ大きさの部屋があり、
B組の やろーども の声が聞こえている。
おれら E組の 楽しい仲間たちも、
各々、持ってきたお菓子を皆でシェアして食べていた。
おれは、タケシ と 雑誌を見ながら音楽談義をしていたのだが
しばらくすると
『お~い、これ あるぜ!』
饅頭のように、まるい頬っぺたと 満面の笑みで
悪顔アンパンマン が おれらに話しかけてきた。
日中、おれと仲良く一緒に雪の壁を背中でダイブした
しもへい (下平:しもだいら のあだ名)
だった。 ※ スキー教室編 #1 参照
しもへい は
サントリーレッド の 大瓶を 持っていた。
『待ってなよ~♪』 と言いながら
がさがさ と漁ったリュックから出てきたのは
黒い水筒
中身は お湯 だった。
ちなみに
しもへい は、臨海学習の時 前科一犯 の記録がある。
(話はちょっと脱線するが)
あ~思い出したくもないが・・
ジュースをおごってくれる というので
数人で しもへい の後をついていったのだが
そうだった・・
あの時、旅館にある ビンのコーラの自動販売機で
1本買い、コーラを取り出す時に
戻るレバーを 針金でくくりつけ、
レバーが戻らないように細工をして、
販売機内にあるコーラをたくさん手に入れる という
スーパーな作戦・・ だったらしいが・・
結果、一回も成功することなく
残念なことに
5本くらい、お金で買ったコーラが並べられた頃・・
『おい こら 何をしている!!!』
っと
怒鳴りつける声の方向を見ると
でかい頭に、頬骨のかたちがくっきりと見える程に痩せ細った顔 が
向かってきた。
『カマキリだ~!!!』
通称『カマキリ』先生が、
手に持った新聞紙を丸めて走ってきたのだ!
案の定、おれらは 新聞でできた
即席のカマ で、叩きのめされた。
何もしてねーし おれ ・・(涙)
おっと・・話をもとに戻すとしよう・
好奇心旺盛な高校生たちにとって
それは 未知なる液体であり
とても興味があった。
紙コップに
黒い水筒に入っていた お湯で
ウイスキーのお湯割りをつくり・・
そう・・
罪も無い一般庶民にまで配布したのである。
なんだか、みんなの声が大きくなってきて・・
和やかだった 『お茶会』 が、
ひとつのきっかけで 変貌を遂げたのだ。
誰が最初に投げたのか わからないが
まくらが視界を横切った
『誰だ~ いてーなー!!』
一発目がヒットしたやつが立ち上がって
その
当たった まくら を蹴り上げたのである。
蹴られたまくらは、蛍光灯の傘にぶち当たって
傘の上に積もっていたホコリ を 部屋中にまき散らしたのだ。
壮絶な霧の中の戦いがスタートし、
視界を横切る まくら の 数 が
あっという間に増えた。
アルコールの力を借りた まくら の 破壊力はすごかった。
隣の部屋と仕切っているふすまに何度も力強く当たっているうちに
隣の部屋で行われていたB組の
穏やかなお茶会にも飛び火してしまったのである。
『てめーら うるせーぞ~!!』
隣から声が上がって、
ガタッガタ と
ふすまを開けようとした様子だが
お値段それなりのスキーツアー
部屋の大きさ以上に敷き詰められた布団のせいで
ふすまが開かない
直ぐに戦いを開始したい チームB組は
ふすまの上に1m程空いている
隙間に向かってまくらを投げ入れてきたのである。
そして
それに応戦した よっぱらいチームE !
放物線を描いて飛び交う まくら には
殺傷能力が無かった。
例えるなら『玉入れ』状態
酒の入った人間ほど、たちの悪いやつはいない
気が付くと
チームよっぱらい から 飛んでいく物体が
まくら から
手あたり次第 手の届くところにある
あらゆるモノ に変わっていったのである。
国内戦が 海外の敵 との戦いに変わってから
5分くらい経過したあたりだったろうか・・
『ちょっと ちょっと!!』 『ちょっとたんま~!!!』
と、チームBから大きな声が上がった。
『休戦!』『休戦!!』『きゅうせ~ん!!!』
なにやら慌ただしい声が・・
『おーい』
『どうした~???』
『ツブ の前歯が取れた~ !!』 (チームB)
『!!!』 (チームよっぱらい)
どうも、 チームよっぱらいサイド から飛んでいった
オロナミンC のビン が
ツブ の前歯に直撃した模様である。
ふすまをブロックしている布団をどかして こじ開けると、
相変わらず 悪役顔のB組のやつらが
円陣を組むようなかたちで集っていた。
これは 近づいたら危険! 悪いのはどう考えても おれたち。。
やべ~ っと 思っているところに
脳天気な声が聞こえたのである。
『お~悪かったな~』
『いっぱいやるか~』
今回の騒動のきっかけをつくった
これまた悪顔のアンパンマン が
サントリーレッドのビンを肩にトントンしながら敵の陣地に入って行った。
『なんだ、わりーな~』
『?』
円陣があっという間に崩れ、魅惑の液体に群がってきた。
こいつら・・やっぱ アホだ・・
和解した・・ (ひとりを除いて)・・
『はんひんは だれだ~』 (訳:犯人は誰だ~ By ツブ)
『はんひんは だれだ~』
繰り返し、そのセリフをはき、短い足をバタバタさせ、
血の付いた手ぬぐいで口を押えている
被害者:ツブ の姿が ようやく表れた。
さっきまで、心配していた仲間たちが
60秒もしないうちに いなくなり、
残念なことに ツブは、
忘れ去られた 時の人となっていた。
まあ
なんとも薄情な チームBの面々は
ツブ に背を向け
悪顔アンパンマン率いる チームEと
楽しい宴を開始したのでした。
めでたし めでたし (?)
<あとがき>
・オロナミンC 投瓶 犯人、捕まらず
・翌朝、連帯責任ということで 全員、白鳥先生の竹刀で尻を強打!!
・今回の被害者:ツブ も、竹刀の洗礼を受け、ダブルパンチ
主役の解説
コードネーム : ツブ (本名は不明)
特徴 : 学年で一番身長が低いやつなのに声も低い(ヒゲも濃い)
卒業してから5年後に知ったこと : 県警の警察官になった。(これホント)
趣味 : 犯人捜し(うそ)
長文にもかかわらず
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

