First Rays Of The New Rising Sun/Jmi Hendrix | 偽クレモンのブログ

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久々に購入したCDはジミ・ヘンドリクスのファースト・レイズ・オブ・ザ・ニュー・ライジング・サンだ。

 

ジミ・ヘンドリクスについて今更言うまでもない・・・ではもう済まないのかな?じゃ、とりあえず。ジミ・ヘンドリクスは1942年シアトル出身のロックミュージシャン。ギタリスト、シンガー・ソングライター、サウンドクリエイター。1970年9月18日に鬼籍に入る。死因は、睡眠薬を用いた睡眠中に嘔吐のうえ窒息した、というのが有力な説。自殺やオーバードースではない。27歳であった。同時期にブライアン・ジョーンズ、ジャニス・チョプリン、ジム・モリソン、玉ノ海正洋が27歳で亡くなったため、死と年齢と何か因果関係があるのでは?と噂され’27クラブ’なんて言葉が捻出された。名声と音楽家(力士)という特殊な環境が短命に結びつくことは考えられるが、27歳という年齢には統計上も生物学上も意味はないとされている。

 

閑話休題。ジミは生前に3枚のスタジオ・アルバムをリリースしているが、このアルバムは、4枚目のスタジオアルバムのため入念に準備されていた音源を使い、ジミが構想していたのと近い形で再編集し、1997年にリリースされたものだ。ジミの構想は2枚組か3枚組のLPでのリリースであった。しかし私が中高の頃には、これらの音源はジミの意に反して3種類のシングルLPとして既にリリースされていた。’クライ・オブ・ラブ’’レインボウ・ブリッジ’’戦上の勇士たち’の3枚だ。フランク・ザッパの’レザー’に生い立ちが似ているが、レザーはザッパが自身で分割したので、勝手に分割されていた本作とは哀しみの度合いが違う。

 

さて、1997年にジミの4thアルバムが正しい形でリリースされたことは知っていて、こりゃえらいことですよ!と逸って、それを特集したレコード・コレクターを購入するまではした。しかし、なぜかCDは購入しなかった。分割されたアルバムは全て聴いていたので、二の足を踏んだのやもしれん。で、すっと忘れていたが、先日、ロフトに押し込んであったレコ・コレを読みなおして久々に思いだし、AMAZONにDVDなしの適正価格な盤が出展されていたのを見つけポチっとしたのであった。写真は、手元に残っている唯一のレコード、バンド・オブ・ジプシーの裏ジャケをバックに撮った。

 

長い前段はこれまで。4thアルバム(以下、ファースト・レイズ)は、ジミのサウンドクリエイターっぷりがたっぷり味わえる好アルバムと成った。一般的なジミのイメージはライブにおける凄まじいギターによるインプロヴィゼイションではないだろうか。シンセサイダー3台分!なんて口ばしった音楽評論家もいた。エフェクター、フィードバック、アームを多用したギターの可能性を燃焼し爆破した凄まじいものだった。がしかし、ジミの本領はそこじゃない、と私は思っている。スタジオのジミは希代のサウンドクリエイターなのであった。それは3枚目のアルバム’エレクトリック・レディ・ランド’を聴けば明らかだったが、この4枚目では更にそれを推し進めた、スタジオの虫たるジミヘンの面目躍如たる内容だ。スタジオワークにおいてジミのギターは極めてアンサンブルの1つ。ギターソロも大して早弾きもしないし、トリッキーーなプレイは皆無。トーンも基本はナチュラル。歪みやユニヴァイブっぽいエフェクトも、この曲にはこの音!という信念を感じる導入っぷりだ。そしてリズム隊、ヴォーカルとのアンサンブル構築に最大の尽力を施している。リズム隊はミッチ・ミッチェルとビリー・コックスがメイン。特にミッチはジミとの相性は×GUNで、まさにインタープレイだ。そんな曲の集合体なのでファースト・レイズは悪いはずはない。

 

ただ、アルバムとして手放しで絶賛できるわけじゃない。通して聴くと、何か食い足りない感が残る。たぶんその理由は2つあって、1つは、曲自体が完全に仕上がっていないものが多いらしいこと。長時間スタジオに籠り、セッションを繰り返し、準備はかなり進んでいたとはいえ、完全に仕上がっていたのは、’フリーダム’’イザベラ’’ドリー・ダガー’の3曲のみとのこと(編集・リマスタリングに大きく関わったエディ・クレイマーのインタビューによる)。食い足りない理由のもう1つは、やはりアルバムを仕上げる段階でジミの意思が全く入っていないからだと思われる。レビュワーの言葉を借りると、’アルバム全体を貫くジミの身体性の欠如’ということになる。レビュワーは何言ってのか判らんという声もあろうが、宅録とは言え自分でアルバムを作成している私の腑には落ちる。

 

というわけで、まず1曲。完全に仕上がっていた曲の1つ、フリーダム。

Jimi Hendrix - Freedom (Official Audio) (youtube.com)

良い。凄くよい。ギターは基本、LHからナチュラルな歪のメインバッキング、RHからほぼアコギのような音色のサブバッキングと艶やかな歪のオブリガードとソロ。ソロといったって、先にも書いたが弾き散らかしたりせず、メロディアスで、完全に曲の一部としてアレンジされたもの。中間ソロパートでは、まず派手なトーンで左右に散らして、ソロ用のリフに移行して、最後にはRHのナチュラルトーンで〆るという拘りよう。ソロパートだけでももはや組曲である。LHのバッキングは常に実にカッコいい。Aメロ部分のバッッキングをコーラス毎にまったく変えているのが素敵で、特に2コーラス目が痺れる。CD化音源で初めて気が付いたが、LH斜めにピアノが入ってんだな。レコードから入ってたのかな?パーカッションも効いている。コーダもコーダ専用の作曲でカッコいい。文句なし。兎に角、この1曲でジミヘンのレコーディングアーティストっぷりがよく判る、キャッチーで細部まで神経の行き届いた素晴らしい楽曲だ。

 

続きまして、エディ・クレイマーによれば完成してない曲。アース・ブルース。

Earth Blues (youtube.com)

良い。良すぎる。タイトルに反して全然ブルースじゃない。むしろファンク、R&B寄りで、ジミのこれからの方向性を示していた格好のサンプルだ。左右から別アレンジのギターバッキングが背骨。このやり方は近年では絶滅危惧である。XTCが最後くらいかな・・・私が米ブラックをあまり聴かないからかもしれんが。ギターのソロやオブリガードは普通だったら左右のバッキングとは別にセンター寄りに出現するのだが、この曲はRHのバッキングが定位を変えながらソロに移行する。あえてそうしたのか?よく判らん。完成していないってのはその辺りかな?ま、それはさて置き、この曲の白眉はコール&レスポンス部分。リズムはいきなりの前節の一拍喰い、コーラスは一拍半後の入り、ジミヘンは一拍後の入り、という変態全開具合。しかもこのパートはドラムもベースもギターも全て違うノリのように聞こえる。別撮りだからこそのスタジオマジックかもしれんが、この不可思議なノリは何回聴いても謎のままだ。シンバルで単純な四泊が入っているが、これは録音時にノリを一定にするためのペースメーカーなのでは?と思えてくる。ライブで演ったらどういう感じになるんだろう。なにしろ心と耳に引っ掛かりまくるパートだ。

全体を通じて、もしジミがもし生きながらえていたら、スライ&ファミリーストーンのような変態ファンク方向に行ったのでは?と思わせる匂いがプンプンで、感慨深い。今知ったが、レスポンス担当はロネッツだった!でもこの曲だけか。。3割加減で参加してほしかったな。

 

凝りまくったスタジオ録音だとホザいてきたが、そんな中、ポツンと突然3ピースの演奏が始まる。

Hey Baby (New Rising Sun) (youtube.com)

良すぎる。3ピースのロッカバラードだ。タイトルにカッコ書きでアルバムタイトルを含ませているくらいだから、ジミにも相当の思い入れがあったに違いない。私はジミのバラードは概ね好きじゃないのだが、この曲は昔から別物だった。これ、完成してないのかなぁ?シンプルな曲だが、このままでいいと思うが、というか、これ以上足してほしくない。本当に染みるギターと歌。たぶん別録りしているんだろうけど、同時録音並みに呼応したギターと歌のインタープレイっぷりだ。ギターの音色はおそらくユニヴァイブによる。いいよな、ユニヴァイブ。買おかな。

というわけで、アルバムとしては食い足りない部分があるのはご案内の通り。それは私が古い聴き手だからであって、未だにA面20分、B面20分での起承転結を至上とするからであります。単なる曲集としては、未完成が多いとはいうものの、1曲1曲が丁寧に創意工夫され作られており、とても楽しめる逸品です。

 

最後に、ジャケットはダサいな。前述のザッパの’レザー’も同様に日の目を見たが、ジャケットは息子のドゥイージルがデザインした洒落た傑作だった。