M.M.選定アルバムランキング’69~’79を聴いてみる 5位 | 偽クレモンのブログ

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〇5位 レット・イット・ブリード/ザ・ローリング・ストーンズ

 

本ランキングでストーンズ1位が本作なのはまっこと同意いたします。おそらく始まりを’64にしても、M.M.ライタ―陣なら変わらず本作が1位であろうと察する。じゃ、意味なく私の’64~’79ストーンズベスト5を発表します。1:サタニック・マジェスティーズ、2:アフターマス、3:ビトウィーン・ザ・バトンズ、4:ベガーズ・バンケット、5:レット・イット・ブリード、となる。コアなストーンズファンはやいやい言わないように。私はブライアン・ジョーンズが好きなのだ。

 

レット・イット・ブリードは1969年にリリースされたターニングポイント的な傑作。本作の制作中にブライアン・ジョーンズが脱退し、ほぼ彼抜きでの初めてのアルバムで、その後のストーンズのサウンドは早くもここで形作られたと言って過言でないとか過言だとか。サウンドのギター部門をキースが掌握したのが、それまでとは一番大きな変化だった。ブライアンの後釜としてミック・テイラーが参加しているが2曲くらいでギターを弾いているに過ぎない。サウンドの要にキースがどっかと(若干不安げに)居座っている。

 

私がこのアルバムと出会ったのはストーンズと出会ったのとイコールだ。中坊の頃、皆に先駆けてストーンズの虜になっていたのは、柔道部の主将にして道着のわきの下が黄色いことで有名なたけうち君だった。鉄工所の次期社長で小金持ちだった彼は、それまでにストーンズがリリースしたほとんどのアルバムを持っているとの由。彼の部屋を訪問すると、紙ジャケから取り出して薄ビニール(?)に入ったレコード盤の数々が、スピーカの上に重なって置いてあった。レコードを掛ける時の扱いは丁寧だったが保管はそんな風だ。つまり彼は純粋に音が好きなのであって、ジャケットがちょっと傷ついたからって目くじらを立てたりする貧乏臭い連中とは訳が違ったのだ。金持ち喧嘩せず!

 

さて、彼の部屋でアルバムを聴きまくって、初感で私が一番気に入ったのはまさにレット・イット・ブリードだった。たけうち君も同意とのことで、後の中学卒業時の寄せ書きの彼の欄には、’血を流せ!’と力強く書きなぐってある(直訳するとそうだが、実際の歌詞はスラングで’気持ちをぶちまける’的な意のようだ)。私は彼の持っていたストーンズのアルバムを全部カセットにダビングして愛聴していたが、’レット・イット・ブリード’と’アフターマス’は自分でも購入している。たけうち君ラインとは別に、リアルでリリースされた’ブラック・アンド・ブルー’も購入している。今調べると1975年リリースで、たぶんたけうちラインとほぼ同時期に購入している。

その時の心情をよく覚えてはいないが、たぶん家具調ステレオで聴いてみたかったのだろう。でも貧乏中学生がカセットとWで持つなんて破格の待遇だ。じゃ、まず1曲。A面1曲目。つかみはこれで100%!という華のある曲。

Gimme Shelter (Remastered 2019) (youtube.com)

ひさびさに聴いてなんか思いだした。レコードで買い直したのは、メリー・クレイトンのヴォーカルを家具調ステレオで全身で浴びたかったからだ。中盤の’レイプ!マーダー!’のシャウトは何回聴いてもションベンちびったものだ。私にとってこの曲はメリー・クレイトンのヴォーカルを聴くためにあると言って過言でない。サウンドはあまりストーンズっぽくはない。キースのギターは’70のキース仕様とはほど遠い、所謂ギターバンド然としたプレーだ。もちろん曲に合わせ、あえてそうしているとは思う。もっと言うと、この曲はアルバムの中で若干邪魔な曲だと思っている。邪魔とはなんじゃごうら~!という声が聞こえるが、仕方内。曲単独では大好きだが、アルバムの流れを阻害していると思うのだ。それと同じ感覚なのが、レッド・ツェッペリンのアルバム’プレゼンス’の中での’アキレス・ラスト・スタンド’。あの曲の代わりに2曲目以降のようなソリッドな4,5分の曲が入っていたらZEPの最高傑作だったのに。後、ぐっとマイナーだが、オキ・アイヌ・ダブ・バンドの傑作’サハリン・ロック’における表題曲’サハリン・ロック’も同様である。表題曲に対して失礼だが、あれがなければ最高のダブロックアルバムだった。アルバムは曲の寄せ集めじゃなく、トータルで味わうもの、という認識のある人には判ってもらえると思う。

 

閑話休題。ギミー・シェルターは異色・異能の曲ということで理解願います。続きまして、この曲こそ’70ストーンズのロックチューンの幕開け。

Live With Me (Remastered 2019) (youtube.com)

はい、よい。ギターとドラムとベースの粘っこい関係性。これが’70ストーンズ。リズム隊に関してはチャーリーとビル・ワイマンの全キャリアでのベストプレーじゃないか?くらいに思っている。ベースのイントロがメインリフと違う入りなのがもうお洒落。頭打ち2ビートなのに引きずり感のあるチャーリーの異能。サックスソロの後は4ビートを絡ませベースが暴れだすという、前半との景色の変化も見事。細やかな配慮でラフな演奏をするのがストーンズの真骨頂だ。ビートは文句なし。

さて、右のギターはおそらくミック・テイラー。でもこれだったらキースが弾いた方がよかったかも。上手すぎるんだよな。上手すぎて若干ストーンズサウンドに合わない。ま、若干だ。ピアノ、ホーンの使い方も適量でちょうどよい。これで味をしめて後のアルバムではどんどん過剰になって五月蝿くなってしまった。過ぎたるはなんとかだ。このチューンの曲がもう1曲入っていても良かったけどなぁ。

 

最後に表題曲。

Let It Bleed (Remastered 2019) (youtube.com)

たけうち君の部屋で初めて聴いた時は、なんじゃ?この普通の曲は?と思った。中坊がいきなりよい!とは思えない曲だ。実にシンプルで何のフックもなくダラダラで終始する。いわばジャムセッション的なのだが、ジャムセッション嫌いな私でも聴けば聴くほど良くなる曲。ダラダラしているようで実はしっかり考えて造りこんであるんだろうな。そんな謎が解けない中坊は、なんでこんなに染みるんだろう?と家具調ステレオの前で小首を傾げて聴いたものだ。アコギもスライドもキース。ピアノはイアン・スチュワート。バランスが実に良い。グリン・ジョンズの功績が一番大きい曲かもしれん。この地味な曲が日本では独自にシングルカットされたとのこと。大したもんだ。そういうところこそが本当のクールジャパン!街がきれいとか、暖かいおもてなしとか、全然そんなことないわ!くそみたいな街も店もいっぱいあるわ!

 

はい。じゃ、来週半ばは冷え込むようで。冬らしいのは良いことだけど、寒暖差でヤラれないようにお互いに気を付けましょ。