M.M.選定アルバムランキング’69~’79を聴いてみる 7位 | 偽クレモンのブログ

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〇7位 タペストリー/キャロル・キング

 

キャロル・キングは1941年ブルックリン出身のシンガー・ソングライター。’58に17歳で歌手デビューして、’60年代までは歌手としてよりも作曲家として多くの楽曲をチャートに送りだした。歌手として大成したのは’70からだ。本ランキングのレビューには’日本の女性シンガーソングライターに好きなアーティストを聞けばいまだ(2009年)真っ先に挙げられることが多い・・・’と記してある。私は2023の紅白であいみょんが歌っているときにXで、’あいみょん、日本のキャロル・キングを目指せ’とポストした。でもそれは音楽性が似ていると感じたからで、私がキャロル・キングが大好きかというと、そうでもない。けど嫌いではない。あいみょんがキャロルを好きかどうかは知らない。

 

キャロルキングの名前は中高の頃から耳にしていた。でもたぶん米の黒人シンガーだと思っていた。音にまともに触れたのは遅れに遅れ、大阪留学中の’80年代初頭。バンド活動に明け暮れていた私に、当時組んでいたバンドとは別ラインから助っ人の依頼が来た。英会話学校のXマスパーティでバンド演奏するのにベーシストで参加してくれというのだ。その時のセットリスト候補に中に、キャロル・キングの’ It's Too Late ’があった。首謀者から候補曲が全て入ったカセットテープを借りて聴いたが、地味なアメリカンポップだなぁ、なんでこんなの選曲するかなぁ、と思った。ちなみに他の候補曲を挙げると、

・ノー・リプライ:ビートルズ

・Peaches En Regalia:ザッパ

・クイーン・オブ・ハイウェイ:ドアーズ

・21センチュリーボーイ:T-REX

・ビクトリア:キンクス

そしてイッツ・ツー・レイトだ。そりゃこの中に入れたら地味だろ。にしてもなんというセットリスト!実際この中から3,4曲をギグに掛けたはずだが、音楽素人の集まるパーティだぜ?よく演ったよな。首謀者・選曲者は松永君。大阪留学中に出会った音楽仲間で一番の変態だった。オルタネイティブを語れる数少ない仲間だった。ザッパを私に教えようとして失敗した。見た目は’70ヘビメタだった。今どうしてるかな?音楽続けているかな?

 

閑話休題。そんなこんなで若い頃は特に印象のなかったキャロルだが、今、手元に’タペストリー’のCDがある。

このブログを書くためにあわてて買ったわけではない。入手は2000頃だったかな。ラジオで収録曲を聴いて、ふと買ってみよかと思ったから。’ふと’で買えるよな収入があったんだよね、あの頃は(遠い目)。今は中高時代を思い出すよな状況だ・・ま、そりゃいいや。

 

タペストリーは1971年リリースの2ndソロアルバム。20数枚リリースされたアルバム中最大のヒット作で、15週連続チャート1位、6年間チャート入り(100位内?)、グラミー賞4冠等、数々の付加価値が付いている。一般人もプロも取り込む懐の深さ。しかし私の素直な感想は、良くも悪くも、当時のシンガーソングライターのアルバムという印象。純粋にシンガーソングライターの曲の良さを味わうためのプロデュースが施されている。

曲つくりは素晴らしい。R&B、ブルース、カントリー等をベースに、実に巧に白人のポピュラー音楽に落とし込んでいる。ジョニ・ミッチェルやローラ・ニーロのような天才性や閃きは感じないが、逆にキャロルのようにシンプルで印象的な曲を作る方が難しいのかもしれない。’ラヴ・イズ・オーバー’や’フィーリング’みたいに一昔前のAIでも作れるようなクズ曲は皆無だ。しかも1曲1曲が違う。って当たり前だが、そうはならないプロがほとんど。この曲はJAZZ、これはサルサ、みたいにスタイルは変えずに、同じスタイルで違う粒立ちの曲で1枚通すのは、プロでも簡単じゃない。

 

それでも冒頭で書いたように私が特に好きになれないのは、単に嗜好の問題だ。その要因の第一は、先に書いたシンガソンガーを立たせるプロダクションの裏返しで、このアルバムにはバンド力がないからだ。いやバンドのアルバムじゃねぇし!という声が聞こえるが、言い方を変えると、キャロルの歌以外に聴きどころがない。演奏がヘタという意味ではない。このアルバムのバッキングは上質のキャンバスみたいなものだ。めっちゃ描きやすい。でも油絵を描くと全く見えなくなる。ま、1曲聴きましょ。A面1曲目で、最初のシングルカットA面の曲。

Carole King - I Feel the Earth Move (Official Audio) (youtube.com)

これでもアルバム中一番バンド力を感じる曲だ。もちろん全然悪くないが、リズム隊にも聴きどころないし、途中に入るピアノとギターのソロのショボさ。でも、それらは全てキャロルの歌を立たせるためだ、多分。だったら楽器ソロなんて入れなきゃいいのにとは思うが。なにしろ、このサウンドプロダクションは意図されたもの、多分。で、私はジョニ・ミッチェルのようにバックも立っているサウンドの方が好きだ。歌とバックの組んず解れつの相乗効果が至上だ。でもそうじゃない人が多いのは判っているし、M.M.の雑多なライターの総合ランキングで、キャロルキングがジョニ・ミッチェルやローラ・ニーロよりも上位にいるのも想定内。

 

続きまして、松永君によって私の初キャロルとなった’イッツ・ツー・レイト’。

Carole King - It's Too Late (Official Audio) (youtube.com)

先の曲と全くトーンが違うし、もっと言うとアルバム中この曲だけ録音した時期・場所が違うのでは?と感じるくらいサウンドの感触が違う。正直、アルバム中で浮いている。この曲だけ米ブラックっぽいともいえる。なぜ松浦君はこれをセットリストに挙げたのだろう。ちなみに、この曲は1曲目の’I feel the Earth Move’とカップリングでシングルB面としてリリースされたが、人気でA面を上回ってしまい、こちらがチャートで1位を記録し、A面が1位になることはなかった。確かチャートって売り上げ+ラジオのリクエスト+αのなんらか、なんだよな。こんな地味な曲が米の一般人に支持されたんだね。当時の米リスナーはまだ見どころがあったんだな(こればっかり言ってるな)

 

続きまして、キャロルの歌唱がタツプリ味わえるバラードをば(いや、まぁバラードじゃなくても全曲そうだけども・・)

Carole King - Will You Love Me Tomorrow? (Official Audio) (youtube.com)

特にメッチャクチャ歌が上手い人ではないが、シンガーソングライターとしては最適じゃないかな。この声と歌唱を嫌いと言う人はいないだろう。比較するに、私の好きなローラ・ニーロはエキセントリックなので万人には届きにくい・・・と書いて思いだした。ある女性(相方の友人)が矢野顕子さんのJAZZ寄りのアルバムを聴いて、’基地外のおばさんが喚いているみたい’とホザいたそうな。ユーミンとか竹内まりあしか聴いたことのない耐性の無い人はそうなるのか・・・と愕然としたものだ。ローラ・ニーロ=矢野顕子、キャロル・キング=あいみょん、という方程式を提示しておこう。

この曲はアルバム用に書き下ろされたものじゃなく、作家時代の1960年に作曲し、黒人ガールズグループのシュレルズがリリースしてチャート1位に輝いている。作詞はジョリー・ゴフィン(一人目の夫)。この夫婦ソングライターズで’60に多くのヒット曲を送り出している。ビートルズも1stアルバムで’チェインズ’という曲をカバーしてジョージが歌っている。

 

最後に、’72グラミー賞最優秀楽曲受賞、ジェイムス・テイラーがカバーしてチャート1位、ロバータ・フラック&ダニー・ハワウェイがカバーしてチャート29位(トホホ)等、数々の逸話付きの曲、’君の友だち’をば。この曲をラジオで聴いてアルバム購入を決めたような気がする。

Carole King - You've Got a Friend (Official Audio) (youtube.com)

イントロ、A、B、C、Dと全くスキなし。繋ぎも完璧。でもしかし、最後のコーラスに入ってくるEパートに異物感がある。なんかとってつけたようで邪魔なんだよな。ABCDで十二分に素晴らしいのに。歌詞を先に書いてメロディを当てはめるのに仕方なくそうなっちゃったのかな?

 

はい!というわけで。コアなキャロルファンは読んで怒らないでね。ところで、原題’Tapestry’の邦題が何故’つづれおり’なんだろうか?若い頃は直訳なんだろうな、と思っていたが、全然違うものだよね。