白山密蔵院(三重県津市)  | 偽クレモンのブログ

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三重県津市にある白山密蔵院は、江戸後期に創建された真言宗の寺院。’密蔵’等という言葉を聞くと、なにやら本堂の地下で門外不出のレシピで密造される秘薬が大鍋に煮だされ、その脇の地下牢では薬の投与によって人を失くした信者がうごめき・・・なんてシーンをつい妄想するが、そうではない。’密蔵院’とは、どうやら全国に各地にある院号らしい。密の文字が冠にあるだけに密教系に多い。密教と聞くと、これまたカエルを口にくわえて走り回ったりする情景を妄想する人もいるが、そうではない(そういう密教もあるかもしれんが)。超平たくいうと、教義を非公開の秘密の言葉で説く仏教を密教と言う。今や真言宗には全くそんな印象はないが、密教だ。ちゃんと知りたい人はネットみろ。

 

さて、津にある密蔵院はJR&近鉄津駅の西口から歩いてすぐの小山のなかにある。というか、小山そのものが密蔵院である。

 

山門は朱塗りの四脚門。伽藍は大戦の空襲であらかた消失したので、建造物は全て戦後の造だ。ちなみに、津市は軍需工場もあったらしいが、市街地にも執拗に空襲を受けたとのことで、三重県で一般市民の被害者が最も多い地域らしい。なんで津が?

その手のサイトによると、四脚門は寺院で一番多く目にする意匠、ということだ。中部に住む私の印象では薬医門が一番多い気がするが、地域差があるのかな?

四脚門とは、屋根の棟を支える本柱の前後に4本の控え柱がある意匠。実際には本柱も含めて6本の柱がある。下の写真は後ろの控え柱が扉で隠れて判りにくいので悪しからず。もうちょっと細かいこと言うと、本柱が屋根の棟近くまで到達するタイプと、本柱が控え柱と同じ長さで頭抜きで繋がれているタイプと、2手に分かれる。ここのは後者だ。宗派とか地域とか時代等が、意匠にどう繋がるか?は全く判らない。本当はそれが検証・分類できると面白いのだが、たぶん全くまちまちで関連性はない。少なくともweb上では誰もその手の考証はしていない、と思う。

 

山門を潜りさらに階段を上ると本堂のある境内に出る。標高は7mくらいか。本堂は入母屋の平入。よくあるタイプで、これも四脚門と同様、宗派、地域、時代との関連は見いだせない。強いていうと、昭和に建造された本堂に入母屋平入は多い気がする。

 

本堂に隣接するのは玄関かと思いきや、別個のお堂だった。帰宅後に調べると、他人のブログに’恵音院本堂’と紹介してあった。恵音院という寺は現在も津市内の別の場所にある。その恵音院なのかどうか不明。なぜその名の本堂がここにあるかも不明。

 

境内右手にある水子地蔵と、その背後にある元庫裏?現在は使用されていないようだが、二階のおたふく窓が素敵な物件だ。リフォームして茶屋にでもしたらいいのに。

 

さて、この寺社を訪れた最大の目的。八十八か所霊場である。四国八十八か所巡りで得られるご利益を、ここ一か所で賄えるという超時短案件だ。このような言わばミニ遍路の設備は全国にあるが、中にはただ一列にずらっと88の祠が並んでいたり、逆にミニというにはあまりに過酷で無管理で広大な遍路だったり、気持ちが盛り上がらない場合が多い。しかしここのは小山の中に祠がコンパクトに点在しつつ、適度なアップダウンが足腰を程よく活性化させる、丁度よい具合の工程でとても良い。お子さんからお年寄りまで広くお勧めしたいミニ遍路だ。

 

八十八を全て紹介するのもアレなんで、工程を大幅に抜粋して紹介する。1番札所の出張場(?)は本堂の境内にある。このミニ霊場が作られたのは明治時代とのこと。木製の祠はその当時の部材も残っているかもしれない。

 

3番くらいまで(記憶曖昧)境内でお参りした後、山頂を目指す。標高は9mくらいか。

 

山頂付近の札所群。旅行者がちょっと立ち寄って遍路するのに調度よいバラケ具合が判るでしょう?祠の意匠にそれほど個性はないが、そこは不問とする。

 

遍路途中にある稲荷社。ここは番外。こういった変化球も楽しい。

 

同じく遍路番外の白山妙理大権現堂。奥の院の風情。遍路の箸休めと言ったら失礼だが、実際にそういう意味で乙なものだ。

 

戦後造と思われるコンクリートの祠もある。意匠の変化として楽しい。

 

ダウンーアップも遍路中3か所ほどあり、程度をわきまえた設計でとても良い。30分で周れるとは言え、変化がなかったら退屈してしまう。信仰装置に楽しさは大切だ。

 

柱状節理?なわけないか。ここの地質は扇状地。白山自体が盛り土の可能性がある。web上ではどこにも書いてないが。

 

遍路番外の地蔵アパート。左は真言宗だけに、弘法大使。

 

八十七番札所の次にあったのがこのお堂。八十八番目?能書きには白山妙理大権現としてあった。八十八番祠は見当たらず。ここで勝手に満願成就ということにしておいた。所詮は30分のミニ遍路なのでこれでいいのだ。あぁ楽しかった。

 

最後に、日本の誇るロックバンド 八十八ヶ所巡礼の曲でお別れです。ではまた明日。

八十八ヶ所巡礼『泥春』 - YouTube