無人島(電源&プレーヤー有り)の100枚 #49 Entertainment | 偽クレモンのブログ

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先回、XTCを紹介する中で次のように書いた。’(XTCは)ポストパンクの時代に台頭したので、当時はニューウェーブ扱いだったが、アイデア一発の短命バンドとは明らかな一線を画し、音楽性豊かで・・・・’。つまり、当時ニューウェーブ扱いだった多くのバンドが、アイデア一発の短命バンドだったということだ。それを憂いているわけではなく、変なもの好きな私としては、雨後の筍のよに次から次へとデビューする変なバンドが楽しみで仕方なく、1980年前後の輸入盤屋は宝の山のよう思えたものだ。

 

そんな中、渋谷陽一氏がラジオで、あるバンドのデビューアルバムから数曲をオンエアーした。何度も書いているが、渋谷氏のラジオは基本、1曲/1アーティストで、氏がそのような行為をするのは、よほど気になるアルバムだということ。その夜、数曲オンエアーされたアルバムはこれ。

 

Entertainment!/Gang of Four

エンターテインメント!/ギャング・オブ・フォー (1979年 英)

 

ギャング・オブ・フォーは1977年にイギリスで結成されたポストパンクのギターバンド。’GANG OF FOUR'とは、中国の’4人組’の英訳。バンド名が表すように歌詞は政治的だ。が、なによりも耳に引っ掛かるのはギターであった。ファンクっぽい軽いリズムに乗って延々のコードカッティングを演っているだけなのだが、コードカッティングも突き詰めればこうなるのか!やられた!と、ギターを嗜んでいた誰もが驚いたものだ。渋谷氏が複数曲オンエアーした理由もそこにある。つまるところ、このバンドにはそれしかない。ヴォーカルは屁みたいなヴォーカルで、最初はギターかベースが弾きながら歌っていると誰もが思うが、こいつのロールはヴォーカルだけと知って誰もが呆れる。リズムセクションは、けしてヘタではないがどってことない、ま、屁みたいなものだ。まずは1曲。

 

Damaged Goods

 

今となっては耳新しい音でもないかもしれないが、それはこのギターが同業者に驚きをあたえ、フォロワーが続出したからだ。ただ、当時としても演っていることは特に新しいことでもない。要は、コード弾きを、左手(弦を押さえる手)のミュートを駆使して弾いているだけだ。ミュートとは、弦を押さえる指を緩めて音を切る、また、緩めたまま弾いて’チャカ!’という機械的な音を出す奏法。ファンクにおける’ワカチコワカチコ’の’チコ’の部分だ、と言えばオッサンにも判るかな?この奏法を徹底的に突き詰めたことと、ギターの音質と、録音の音質との相乗効果で、当時としては実に耳新しい、同業者にショックを与える音像が現れたわけだ。ある雑誌のレヴューには’点描画のような’と書かれていたが、点描画といえばどうしてもスーラーのまったり感が浮かぶので、かなり違う。私としてはバフ研磨機を連想する。ノイズ成分を含んだ心地よい音だ。もう1曲・・・基本的には何も1曲目と何も変わらない。音のアイデア一発のバンドだ。

 

At Home He's A Tourist

 

こんな感じでアルバム1枚貫くバフ研磨ギター。ヴォーカル、リズムがショボイのはニューウェーブ勢の常だが、このバンドに関しては、ギターを浮き上がらせるためにあえてその他を沈めた感もある。

最後に、バンドの演奏力が判るライヴの模様。曲は2ndアルバムから。リズム隊はけしてヘタではないことが判る。ヴォーカルは上手くはないが、スタジオよりも肉感があり数段よい。

 

To Hell With Poverty

 

2ndアルバムは、この1曲で判るように、1stの軽快さがなくなり、ヘビーな1枚と成った。これはバンドにとって良い方向の変化ではなく、渋谷氏もオンエアーせず、そのまま失速・解散。よくあるニューウェーブ一発屋と成った。が、この一発は強烈で、先に書いたように、音色含めてギターの新しい奏法として業界に浸透した。個人的には今も陳腐化した印象はなく、地下鉄でよく聴いている。無人島には合わないのかもしれない。