【2021年3月29日】


 映画『あの夜、マイアミで』ワンカットレビューPart.7

久しぶりの『あの夜、マイアミで』のワンカットレビューです。

やはり鉄は熱いうちに打てで、映画の感想というのは熱いうちに書かないといけませんね(^^;

で、どこからでしたかね(笑)

そうそう、いよいよサム・クックとマルコムXの討論会に入るところでした。

ここからはちょっと印象に残ったサムのセリフを抜粋していこうと思います。

ネタバレになるのでまだご覧になられてない方はこれ以降スルーでお願いします。

今日はこのレビューだけで終わりますね。








「俺の売りはステージ上で踊ることじゃないんだ
俺の売りは声、歌詞、イメージ、そしてメッセージ性だ」


ウィルソン・ピケットやジェームス・ブラウンを引き合いに出して、自分の売りをアピールしているサム・クック。

今のテレビ業界では伝わりにくい売りです。

インパクトにかけると直ぐにチャンネルを変えられてしまいます。

そういう意味ではサム・クックの音楽の良さを理解してもらうには時間がかかるのかもしれませんね。

その発言にマルコムXはこう返します。


「コパカバーナでは白人に向けて発するんだろ」


それに対してサムは。


「連中にもソウルはある。どの魂にも触れるのは可能なはずだ。音楽で取り込めるなら全員の家を訪問するよ」


「今にポップも黒人音楽も関係なく1本化したチャートで楽しめる日が来る」


「取り込める」、「同じチャート」、とサム・クックが白人との融合を求めていたことが分かるセリフです。
サム・クックの考えていたことを知っていないとこのセリフを言わせることが出来ないので、よく研究されていると思います。

そこにまたマルコムXは絡んできます。


「白人と黒人に違うショーをして何のメッセージを?黒人だけが給仕する場所で歌ってるだろ」



コパカバーナとハーレムの比較でもあります。

確かにコパとハーレムでは選曲も違えばMCでのメッセージも違いました。

コパでは曲の中にメッセージを優しく含ませて、ハーレムではメッセージをストレートに同胞に投げかけていました。

しつこく絡んでくるマルコムXにサムはとうとうキレます。


「自曲の音源も持ってるし、黒人の歌手も育てている。創造性と事業の命運を懸けるのは、君が人を怒らすのと同様に刺激的だろ!」



キレやすいというサム・クックの性格も上手く表現しています。

瞬間湯沸かし器と呼ばれていても、引きずることがなくカラッとしているのもサムの良さです。

クリエイティブな活動と、人を育ててビジネスをしていることは、相当に頭とお金と労力を使い、簡単ではないものの、そこから勝ち得たものはどんなギャンブルより刺激的ではあります。

それを成し得た黒人歌手というのは当時は稀であり、サム・クックがパイオニアだと言っていいでしょう。

興味深いやりとりに、ジム・ブラウンが映画の出演が決まったと、カシアス・クレイに伝えたこんなシーンがありました。



いくら映画俳優になったとして、その役がアクション・ヒーローだったとしても、それが配給会社に雇われた黒人であれば、そんな設定にさせられてしまいます。

白人が優位に立っていた時代に、対等な立場に持ち込むには、相手を引きずり下ろすのではなく、自らの地位を向上させなければならない。

「創造性と事業の命運を懸ける」というのは黒人の地位向上には不可欠なものなんだという、サム・クックのメッセージは後の同胞たちへ受け継がれていったように思います。


今回はここまでにしましょうか。

まだまだ先があるのですが大丈夫でしょうか(^^;


大丈夫、パーティーを続けましょう。