プレイヤーの調子も良くないのか音は悪いがアップロードしてみたのが上の"WHY"という音源。
画面にある盤面のライティングをよく見ると、そこには"Sam Cook"の文字が。
サム・クックのライティングにしては"e"の文字が足りないので、何となく怪しい。
権利関係もあるのでサム・クックの本名名義にしたのか、単なる誤植か、はたまた彼らの遊びでサムっぽい曲が出来たので架空の人物で登録したのか謎が深まる(笑)
これはサム・クックの曲なのかとツイッターに投稿したところ、Mr.Pitifulさんからこんなコメントを頂いた。
「この曲はCD化済みで,History Of Soul盤(2014)ではシングル盤同様 Sam Cook だが,英ace盤(2005)は Lowman Pauling とクレジットされていた。どちらのライナーノートも,この曲そのものに関連する記述は無し。1960年2月マイアミ録音。」
"e"の文字が抜けた誤植でもなく、"Sam Cook"自体の表記まで間違っている可能性も出てきた。
確かにファイヴ・ロイヤルズのライティングの殆どがローマン・ポウリングが手掛けているので、ace盤のクレジットの方が信憑性は高い。
サム・クックの曲であれば管理下にあるアブコが黙っていないだろうとも考えられたが、明らかにサム・クック調に仕上がっている"WHY"は、ファンとしてはサム・クックの作であってほしいという願望の方が強くなっていた。
サム・クックやレイ・チャールズ、そしてエルビス・プレスリーよりも先に、ゴスペルからくる声楽をポップの世界に持ち込んだのはこのファイヴ・ロイヤルズだと言われている。
そんな彼らも、サム・クックをヘッドライナーとして行われたコンサートで共演していた。
(Sam Cooke headlined this show at Chattanooga City's Auditorium in Tennessee on Sept. 29, 1958.)
ファイヴ・ロイヤルズはゴスペル畑出身とあるので、これ以前からソウル・スターラーズ在籍時のサム・クックとは交流があっただろうことは容易に考えられる。
こんな共演があったのが1958年で、ギフト・ソングであろう"WHY"が1960年作。
親交が深まった彼らにプレゼントしていてほしい。
そして先ほどのMr.Pitifulさんからこんなヒントも頂いた。
「"5" Royalesには,RockbeatというレーベルからリリースされたCD5枚組セットもあるので,そのライナーには,何らかの記述があるかも・・・?」
CDを購入して調べることはなかったが、その5枚組のボックスセットを紹介しているサイトを見つけた。
リンク先⇒(‘5’ Royales has exhaustive, new box set)
そこには何と、「バンドの親友であるサム・クックが作った"WHY"」とあった。
どうやらサム・クックのライティングのようだが、まだこの段階では確証は得られない。
さらに調べてみると、サム・クックの伝記の著者としても知られるピーター・ギュラルニックのサイトにたどり着いた。
リンク先⇒(Guest Blogger Mr C on The Five Royales)
ピーター・ギュラルニックにしてもファイヴ・ロイヤルズのことを『ソウルのルーツ』と言わしめるほどの存在だったようだが、60年頃にはチャートから滑り落ちており、どうやら起死回生の一曲としてサム・クックが彼らにプレゼントしたのがこの"WHY"だったようだ。
しかしそれも結果的にはヒットせず、その後バンドはレコード会社を渡り歩き、本格的なソウル・ミュージック台頭の波には乗れなかったようだ。
リード・ボーカルのタナーの脱退などもあり、60年代後半にはかつてジェームス・ブラウンがインスピレーションを受けたバンドはもういなくなっていたという。
二か所のリンク先の情報から、今回の"WHY"は、サム・クックのライティングで間違いなさそうだ。
結果、クレジットされていた"e"抜きの"Sam Cook"はただの誤植。
いや、これもあえて"e"を抜いた策略だったのかも。。。
これに関してはまだ謎が残った。
さらには、もう一度ヒット曲を出したいというメンバーの願いから、当時波に乗っていた親友のサム・クックにライティングを依頼したのか、サムがチトリン・サーキットなどの頃から苦楽を共にしてきただろう親友たちを助けてやりたいという思いでプレゼントしたのか。。。
いやいや、そんなことは、彼らの友情の間には卵か先か鶏が先かのどうでも良いこと。
どちらにせよ、互いの友情から生まれた救済処置がこの"WHY"(何故?)の答えだったようだ。