全く進展がみられないサム・クックの伝記映画化に対し、いつまでも待ちますよと言ってはみたものの、さすがにそのことを話題に出さず一年を過ごすというのも辛いものがあり、今までちょい役として登場してきたサム・クック役を振り返りつつ、今後のサム・クック役について再び司会者さんを呼んで討論してみようと思います。

 

 

司会者「ちょいネタ談議から間がないですが、お呼び頂き感謝しております」

 

元親「このサム・クックの伝記映画化にちなんだ話題はゆっくりお話ししたかったですからね」

 

司会者「やはりまだまだ待たされるのでしょうか?」

 

元親「そのようですね。アブコ公式も非公式も、更に映画『ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男』で登場する予定だったラルフ・トレスヴァントのサム・クック役まで期待を裏切られてますし」

 

司会者「以前はドラマ"The Playboy Club"で登場するはずだったラファエル・サディークのサム・クック役も幻に終わったこともありましたね」

 

元親「もう期待を裏切られっぱなしで振り返るのも嫌になりました(笑)」

 

司会者「サムが亡くなってからの年月をみれば呪われているレベルですね」

 

元親「はい。取り扱うのさえ怖くなってきました(笑)それでも今までちょい役としてサム・クックが登場して形となって残っている作品もあるので、今回はそれらの映像を取り上げて、サム・クックのプチ伝記映画なんて感じで観ていきましょう」

 

司会者「なるほど、楽しみですね」

 

元親「取り上げるのは以前にも紹介したことのある"ALI" , "Little Richard" , "The Buddy Holly Story"の3作品なんですが、ご覧になられたことはありますか?」

 

 

司会者「"ALI"のオープニング・シーンは話題になっていたので何度か観たことはあるんですが、他の作品はまだです」

 

元親「確かに"ALI"のハーレム・スクエア・クラブの再現はサム・クックのファンの間では話題になりました。なんといっても始まって9分という長丁場で、ストーリーのバックでサム・クックが歌ってるわけですからね」

 

司会者「尋常じゃないですね」

 

元親「その9分間だけだとアリとサムとどちらが主役か分からないくらいです」

 

 

司会者「主役のアリ役だったウィル・スミスをくってしまうほどの存在感を見せたサム・クック役は確かディオンヌ・ワーウィックの息子さんでしたよね」

 

元親「そうです。歌手のデヴィッド・エリオットさん。お母さんのディオンヌ・ワーウィックはサムとも以前共演したことがあって、ロックン・ロールじゃないと観客に野次られて落ち込んでた時に、サムがビートだけがロックン・ロールじゃない、君も僕が『ユー・センド・ミー』で勝ち取ったようにできるとサムに励まされたことがありました」

 

司会者「そんなことがあったんですね」

 

元親「なので息子がサム・クック役に決まった時は、彼女もきっと当時のサムについて語り聞かせ、アドバイスしていたんじゃないかと思います」

 

司会者「なるほど、あの名演の裏にはそんな経緯があったのかもしれませんね」

 

元親「結局、ストーリー自体には何の関わりもなくオープニングのパフォーマンスだけの登場なんですけどね(笑)」

 

司会者「確かに、もったいないです(笑)」

 

 

"The Buddy Holly Story"

元親「オープニングをサム・クックが飾ったのが"ALI"なら、中盤のストーリーに絡んできたのが"The Buddy Holly Story"でした」

 

 

元親「サム・クックが登場するシーンをアップロードしたのが上の映像です。そのシーンを簡単に説明すると、ラジオの声から黒人と間違われたバディ・ホリー率いるクリケッツが黒人観衆の多いアポロ・シアターに出演することが決まり、サムの後で歌うバディ・ホリーをサムは励まし、最初は怪訝そうな顔で観ていた黒人観衆を魅了するんです。その後、宿泊先に困っていたバディ・ホリー達を黒人専用のホテルに連れて行き、白人の宿泊を断る支配人をサムが説得して、彼らはそのホテルに泊まることができる、というところで終わります」

 

司会者「それは実際にあった出来事なんでしょうか?」

 

元親「そのようですね。しかし、この時のサム・クック役はポール・ムーニーというコメディアン俳優なんですが、サムはステージ上で投げキッスはしてないと思います」

 

司会者「映像を観ましたがポールさんサービス満点ですね(笑)」

 

元親「ステージに女性コーラスを3人揃えてるところはサム・クックというよりマーヴィン・ゲイですし」

 

司会者「華やかさを伝えようとしたのでしょうか?」

 

元親「サム・クックはそれらを必要とせずとも華やかですけどね。それでもポール・ムーニーの紳士的な演技には好感がもてました」

 

司会者「はい、短い登場でしたが後半のホテルのシーンではもうすっかりサム・クックに見えてきました」

 

元親「それと前半のバディ・ホリー達がアポロの控室から階段を下りてステージに向かう途中で聴こえてくる『ユー・センド・ミー』は、サム・クックの登場を期待させるには十分な演出だったと思います」

 

司会者「実際のバディ・ホリーもサムが白人聴衆の多いコパで成功したように、黒人聴衆をモノにできたのはさぞかし嬉しかったでしょうね」

 

元親「最後の映像はテレビ映画として2000年に放送された"Little Richard"なんですが、最近になってやっとその中で登場するサム・クック役を確認することができました。やはり想像していたとおり、サムとの関わりとして良く知られている『サム・クックとリトル・リチャードのイギリス・ツアー(リンク)』の時の出来事が使われていました」

 

司会者「あれは確かゴスペルに傾倒したリトル・リチャードが悪魔の音楽といったロックン・ロールを歌うか歌わないかというツアーでしたね」

 

元親「そうです。サム・クックにとっても重要な海外ツアーでしたから、相当気合の入ったツアーだったと思います。だから映画の中でも一番最後のクライマックス・シーンとして使われていました」

 

司会者「となるとかなり時間を割いたシーンだったんでしょうね」

 

元親「いえ、5分ほどです」

 

司会者「ええ!? かなり省略されてるじゃないですか」

 

元親「このツアーを企画したドン・アーデンがリトル・リチャード説得するシーンからの映像を下に貼り付けていますが、そのシーンを覗けば実際は4分くらいしかありません」

 

Little Richard Movie 2000 (Sam Cooke Role)

 

司会者「ほんとだ、サム・クックの扱いが雑すぎますね」

 

元親「それに、ここでのサム・クック役は俳優のコンロー・ブルックスが担当しているんですが、カツラをかぶってるのが丸わかりですし、大げさなパフォーマンスとチャラ男っぽい演技には落胆しました」

 

司会者「実際のサム・クックも良く喋って笑う大らかな性格だからありじゃないですか?」

 

元親「そうですけどちょっとこれはふざけすぎてると思いませんか?というかこのシーンだけでもツッコミどころがあり過ぎるんですよ」

 

司会者「たとえば?」

 

元親「このステージはドンカスターから始まってますが、リトル・リチャードが倒れこんで"Tutti Frutti"を歌いながら起き上るという演出はマンスフィールドのステージからなんですよ。それにリトル・リチャードが先に持ち歌にしていた"Send Me Some Lovin'"を彼の前で歌うなんて考えられないし、サムがあの曲をカバーしたのはこのツアーの後ですからね」

 

司会者「確かにそうかもしれませんが、この映画を観ているリトル・リチャードのファンを喜ばせる演出だったかもしれませんから、そのくらいはありじゃないですか(笑)」

 

元親「サム・クック・ファンの気持ちはどうしてくれるんですか」

 

司会者「まぁまぁ(笑)とはいえどの映画もサム・クックがキーマンとして扱われているわけですからそこは喜ばないと。それにしてもこの短い時間の尺は何故なんでしょうかね?TV映画ということで編集の最後のほうで時間が足らなくなって巻きがかかったんでしょうか?」

 

元親「あまり長い時間を使うとカツラだってことがバレるからじゃないですか」

 

司会者「そこですか(笑)サム・クック役のクオリティが耐えられないと(笑)」

 

元親「TV映画だからクオリティが落ちると言いたくないのですが、どの映画のサム・クック役を見ても、サムを演じるには相当な努力が必要となり苦労したと思います。JBやリトル・リチャードを演じるほうがある意味分かりやすいキャラクターなので楽なんじゃないかと。だからこそ長時間サムを演じることに役者が耐えられなくて、監督も仕方なくサム役の出演シーンを短くしているんだと思います」

 

司会者「かなりサム・クックを上に見た解釈ですね(笑)」

 

元親「当たり前じゃないですか」

 

司会者「そうなるとサム・クックが主役となる伝記映画化のサム役に選ばれた方は相当な苦労を強いられますね」

 

元親「とりあえずサム・クック役の基準として容姿が似てる似ていないに関わらず、その役者さんにサム・クック愛があるかどうかが第一だと思っています。愛を感じない役者さんにカツラなんか被って演じてほしくはないです」

 

司会者「カツラにこだわりますね(笑)」

 

元親「以前、サム・クック役に選ばれていたレイ・ラベンダーに、映画"RAY"でレイ・チャールズを演じたジェイミー・フォックスがこんな助言をしていました」

 

「聞いてください。サム・クックは、私の大好きなアーティストです。そしてあなたはサム・クックとして変わってもらえると信じています。私はあなたに彼であってもらいたい。私はあなたに彼のように歩いてもらいたい。私はあなたに彼のように話してもらいたい。そして彼がどんな人物であったかを理解し、私はあなたにも彼と同じように考えて演じてもらいたいです」

 

司会者「すごく深く重い言葉ですね」

 

元親「この言葉は僕もこれからサム・クックを演じる役者さんに同じように伝えたい気持ちです。そんなふうに助言できるジェイミー・フォックスはレイ・チャールズを演じるときに、同じように自分に言い聞かせ、レイ・チャールズを研究し、彼を愛し、レイ・チャールズになりきったと思います」

 

司会者「確かにアカデミー主演男優賞を取って当然のような名演でしたね」

 

元親「それを思うと、今回取り上げたサム・クック役はB級、いやZ級のレベルと言って良いかもしれません」

 

司会者「そこまで言うとサム・クックを演じてくれた役者さん達に失礼じゃないですか?サム・クックを演じる難しさを分かっているならもう少し敬意を表さないと」

 

元親「そうでした、すみません。なかなかオフィシャルのアブコの伝記映画化が進まないものでつい熱くなってしまいました。ただ、僕としてはオフィシャル以外であれば、どんなに駄作と言われるようなZ級のサム・クックの伝記映画でも歓迎なんです。『なんじゃこれぇ、くだらねぇ(笑)』ってツッこみを入れるのも楽しいですし、ブログの記事にもできますからね、非公式でもドンドン制作してほしいです(笑)」

 

司会者「そこに愛はいらないんですか?」

 

元親「はい、いりません。ジョーズのヒットにあやかったZ級のサメ映画は数多くあるので、なんならサム・クックがサメに生まれ変わって人を襲うというホラー映画でもイイくらいです」

 

司会者「サメ・クックですか、また無茶苦茶な(笑)サメ映画くらいサムの需要があればいくらでもZ級が出てきそうですけど、それほどの声は上がりませんからねぇ・・・」

 

元親「この際なんでもあやかりましょう!『シン・サム・クック』とか『君の名は、サム・クック』とか!」

 

司会者「そろそろ終わりにしましょうか、話が変な方向に行ってるようなので」

 

元親「いや、面白そうなんですけどねぇ、巨大化したサム・クックが日本を襲って来たり、サム・クックと誰かが時空を超えて入れ替わったり・・・」

 

司会者「本日はありがとうございました」