『アナザー・サタデイ・ナイト(Another Saturdy Night) / テネシー・ワルツ(Tennessee Waltz)』
唄)サム・クック/Sam Cooke (VICTOR/日本ビクター:SS-1829)
68年にリリースされた国内盤のシングル。
コパのジャケがそのまま使用され、赤くて太いフォントでタイトル表示されているデザインが、当時の雰囲気が漂っていて良い。
63年に初めて日本でサム・クックがリリースされたと言われるペギー・マーチのB面で紹介されたこの曲のタイトルが、ここで「こんどの土曜日に恋人を」から「アナザー・サタデイ・ナイト」に変更されていた。
そしてこの盤の解説をされていたのが明日で四回忌を迎えられる、八木誠さん。
3年前に吉岡正晴さんが八木さんの紹介とともに、その訃報をブログで告げられていた。(リンク)
60年代からラジオのDJとして活躍し、2009年には「洋楽ヒットチャート大事典」を発行されるなど長年にわたって詳しく洋楽を紹介され、あのソウル専門誌"SOUL ON"の初期メンバーの一人としても知られているようだ。
それでは、八木さんによるこの盤の解説を。。。
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カーラ・トーマス、メル・カーター、サム&デイブ、ジョニー・テイラー、オーティス・レディング、シュープリームス、アレサ・フランクリン、ルー・ロウルズ、ウイルソン・ピケット、ジョニー・リバースetc・・・。
ここにあげたアーチストは、何らかの形でサム・クックのナンバーに取り組んでいる人達である。
もちろん、彼等はそのごく1部であり、実際の数はその数十倍に達するであろうことは言うまでもない。
ローリング・ストーンズしかり、トム・ジョーンズ又しかりである。たしかに、ポップス界におけるこうした例は決してめずらしいことではないが、しかし、彼が他に与えた影響度は比較にならないほど大きい。
いずれにしても、サム・クックを失って今年で4年、今更ながら彼の偉大さを再認識させられる。
ここにお届けするレコードは、彼の全盛期に発表されたビッグ・ヒット2曲をカップリングしたもので、いずれも彼を想い出すに充分すぎる傑作である。
◼︎アナザー・サタデイ・ナイト
「センド・ミー・サム・ラヴィン」に続いて63年4月にアメリカで発表され、5月末のビルボード・ホット100ではベスト・テン内にランクされた曲。日本でも同年夏に1度発売されているが、「アイ・ウィル・フォロー・ヒム」(ペギー・マーチのデビュー曲)のB面としてカッティングされた為、ヒットには至らなかった。作詞・作曲はサム・クック自身。バックのアレンジと指揮はリーン・ホールが担当している。
一聞、リズミックで楽しい曲にきこえるが、よく聴くと以外に悲しいイメージを感じさせるナンバーである。
◼︎テネシー・ワルツ
スタンダード・ナンバーとしてあまりに有名な曲だが、ヒット・ソング・ファンには、彼の名唱も忘れることができない。元来は、1948年にレッド・スチュワートとピー・ウィー・キングのペンによりパティ・ペイジで大ヒットした曲。1950年にキング・レコードのカウボーイ・コパスによってリバイバル・ヒットしたのをはじめとして、51年までの間に約300万枚のセールスを記録した。R&B界では、デッカのレオン・ヘイウッドが67年11月にシングル盤のB面として、又、故オーティス・レディングが、アルバム"Dictionary of Soul"の中にそれぞれ吹き込んでいる。
サム・クックも、64年6月に「グッド・タイムス」のB面として発表しているほか、アルバムにも収めるほどの気に入りようである。とくに、ポピュラー・ソングをこれほど独自のスタイルに仕上げる実力は見事というほかない。
(最後にバイオグラフィーが書かれてある)
1968年8月 八木 誠
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前回の上野シゲルさんと同様に、サムの曲をカバーしたサム・クックのフォロワーの紹介を軸に、その影響力を書きだされている。
「アナザー・サタデイ・ナイト」の解説でルネ・ホール(リーン・ホール)の名前があがっているが、もう一つの「テネシー・ワルツ」に関してもコパのライブの演出と指揮を彼が担当しているので、このシングル盤自体がルネ・ホールの色がよく出たものと言えそう。
「一聞、リズミックで楽しい曲にきこえるが、よく聴くと以外に悲しいイメージを感じさせるナンバーである。」
確かにこの「アナザー・サタデイ・ナイト」は、リズミックで楽しそうに聴こえるが、歌詞の内容を見ると土曜日の夜だというのにお金はあれど一緒に遊ぶ恋人がいないという寂しいもの。
その辺りを八木さんはメロディの中にも感じたんだと思う。
しかし、悲観的な内容を鼻で笑い明るく歌うところはサムの得意とするところ。
それが「ポピュラー・ソングをこれほど独自のスタイルに仕上げる実力は見事というほかない。」と八木さんも言われるように、カップリングされた「テネシー・ワルツ」のアレンジでも感じることができる。
苦しみや悲しみを希望の光に変えるサムにとりつかれてカバーしていったフォロワー達の気持ちが分かるように、このシングル盤に収められた2曲からそのサムの魅力が伝わってくる良盤であり、解説ではないかと思った。
あらためて、八木誠さんのご冥福をお祈りいたします。
沢山の素晴らしい解説をありがとうございました。