サム・クックなどのブラック・ミュージックへの入口として、僕らの世代は日本のミュージシャンのRCサクセションの忌野清志郎だったり、柳ジョージがリスペクトするミュージシャンを遡ってサム・クックと出会ったというパターンが多いと思う。
それと同じように今の10代や20代の若い世代にサム・クックを広めてくれているミュージシャンは、僕の知っている限りではトータス松本さんや HOME MADE 家族の KURO さん、夜のストレンジャースの三浦雅也さん、そしてこのボウディーズのロイさんだと思っている。
ボウディーズを知ったのは、彼らがメジャー・デビューして間もない頃の曲をラジオで聴いたのがきっかけ。
その時は英語詞だったこともあったせいで、シャウターで活きのいい海外のブルース・ロック・バンドが出てきたなぁと感じたのを覚えている。
それが日本人だと知った時は驚いたが、あのしゃがれ声の主の容姿を髭面で色の濃いガタイのいい男と想像してただけに、トップ画像のスマートで色白の清潔そうなロイさんを見て二度ビックリ(笑)
とりあえず、彼がどれだけサム・クックのことが好きで、それを公の場で語ってきたかをまとめて取り上げてみることに。
その資料提供に協力して頂いたのは、ボウディーズ布教委員会の会長(笑)と僕が勝手に思っている kumitabi さん。
ありがとうございました。
では、彼が熱く語るサム・クック論を。。。
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ROY:(サム・クックは)僕がシンガーとして一番好きな人です。
リズム&ブルースからソウルって、何が違うって言われると僕も感覚的でしかないのでむずかしいところなんですけど、メロディーラインだったり、コード進行が自由になっていくのが特徴的かなって思っていて。サム・クックの「ユー・センド・ミー」っていう曲があるんですけど、そこらへんからソウルなのかなって勝手に思っています。
僕が始めて出会ったソウルシンガーということでサム・クックの「Bring It On Home To Me」を紹介したいと思います。
渡部(アンジャッシュ):ソウルとして最初にハマったミュージシャンなんですか?
ROY:そうです。リズム&ブルースからソウルの時代になると、歌い方が ゴスペルっぽくなっていくんですね。そして自由になってガーッとシャウトするというか。そういう感覚で僕は聴いてるんですけど。
(2010.5.5:J-wave『PLATOn』にて)
丸屋:「ソウル四天王」っていう考え方って、馴染みはないですか?
ROY:ないですね~。
丸屋:サム・クック、ジャッキー・ウィルソン、レイ・チャールズ、 ジェームス・ブラウンの4人です。
ROY:僕のイメージでは、サム・クックとジャッキー・ウィルソンの2人は、ソウルがノーザンとサザンに分かれたときに一番影響を与えた人だと 思うんですよね。僕の中ではサム・クックのスタイルが一番なんです。 で、ノーザンもサザンも、どっちもサム・クックを受け継いでいると思うし。サム・クックの曲、例えば「キューピッド」とかはノーザン・ソウル でしょうけど、「ブリング・イット・ホーム・トゥ・ミー」なんかの、よりゴスペル的なバラードはディープ・ソウル、サザン・ソウルのルーツだと思う。どちらにも影響を与えた人ってサム・クックじゃないかなって。 だからサム・クックがトップだろうって。
(ブラックミュージック課外授業『君臨!四天王伝説』より)
(セレクトソングにサム・クックの"Twistin' The Night Away" )
ROY:サム・クックはアレサ・フランクリンやオーティス・レディングに も影響を与えた人ですよね。この曲はフジロックのステージに上がる5分前 まで、ずっと聴いていました。
この曲でパーティでみんなが楽しく踊って いるイメージを膨らませていました。
(2011年04月05日【THE BAWDIES TokyoFM "McDonald's SOUND IN MY LIFE"】より)
無人島 ~俺の10枚~ 【THE BAWDIES編】
Sam Cooke / 『One Night Stand! Sam Cooke Live at the Harlem Square Club, 1963』
とにかく世界中の皆様に聴いて頂きたい一枚です!
すでにサム・ クックを 知っている方も、もしこの一枚をまだ聴いていないのなら、絶対聴いて下 さい!これが多くのソウルシンガーがリスペクトした本当の彼の姿です! 最高に熱い迫力のシャウト!そしてオーディエンスの熱気からは生きる喜 びを与えてもらえます!無人島には是非ともご一緒したい一枚です!
ROY:あの~僕はブラックミュージックのセクシャルなストレートな部分は勿論そうですけど、「音」というかそういう「シンガーの声質」にセクシーさを感じるんですね。僕は凄い<SAM COOKE>の声にその要素を感じ ていて、熱さが有りつつも、必ず何処かにセクシーさも感じれるという「その部分」を凄い表現したくて、今回ヴォーカルスタイルに対しての変化が凄い有ります。
(個人的に好きなライブアルバムってありますか。)
ROY:サム・クックの『ハーレム・スクウェア・クラブ1963』は最高のラ イブアルバムです。こんなに凄いアルバムはほかにないんじゃないかな。 ライブがレコーディングされたのは63年なんですけど、彼らしくないアルバムということでお蔵入りしてしまったんです。20年経った84年ぐらいにようやくリリースされたんです。サム・クックはもう1枚ライブアルバムが 出ているんですけど、それは白人を相手に歌っているもので、きれいな声で歌っているんです。一般的にはそれがサム・クックらしいとされているんですが、『ハーレム・スクウェア・クラブ1963』は黒人のお客さんを相手に歌っているから、ゴスペル出身の素のサム・クックが感じられて、すごいパワフルなんですよ。
サム・クックは憧れの人ですね。サム・クック になりたいですよ。
このライヴには力強く声を張り上げる本当のサムクックの姿がある。彼が OTIS REDDINGなど様々なアーティストからリスペクトされていた理由が ここに詰まっている。何度聴いても鳥肌が立つし音楽の力そして喜びを感じる。
アルバムを通しても最高で、僕が世界一好きなアルバムです。
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思わず「うん、うん」と共感してしまう箇所が幾つもある。

そしてサム・クック好きの芸人で知られるダイノジの大谷さんは、「ロイ君と会うとその(サム・クックの)話ばっか」。と言ってるし、トータスさんはラジオ番組で「この間、道で(ロイ君と)バッタリ会ったんですよ。いきなりサ ム・クックの本をカバンから出して『トータスさん、これもっ てますか?』って聞かれましたからね(笑)」。と、彼の人懐っこさも伺える。
人懐っこく実直でお喋りというところは、彼がリスペクトするサムと同じで面白い(笑)
彼はソウルのシングル・レコードのコレクターなのか、ツイッターでのつぶやきには自身のライブラリーの中の一枚の画像と、その曲をYOUTUBEで紹介している。
最近紹介された曲はこんなかんじ。。。

TYRONE DAVIS-CAN I CHANGE MY MIND
KIM TOLLIVER-I GOTTA FIND A WAY
ROSCOE ROBINSON-WHAT YOU'RE DOIN TO ME
Bobby Freeman-C'mon and Swim
CHUCK BROOKS-BAA BAA BLACK SHEEP
The 8th Day-She's Not Just Another Woman
O.V. WRIGHT-Love the way u love
Bobby Patterson-TCB or TYA
FOUNDATIONS-BUILD ME UP BUTTERCUP
JAMES PHELPS-LA DE DA IM A FOOL IN LOVE
Honey Cone-Want Ads
Timmy Willis-I Finally Found A Woman
Otis Clay-Three Is A Crowd
King Earnest - The Soul Stroke
Spencer Wiggins - He's Too Old
The Dells-Over Again
Tyrone Davis - What If A Man
Randolph Walker - Shindy Butterfly
The Bobbettes-Mr. Lee
PETE COOKE - LITTLE DARLIN'
彼は好きなシンガーについて「北の方でも泥臭さを持っているシンガーはいるので、そういう人達がノーザン・ソウルを歌ってるのが 好きなんです。」と語っているとおり、選曲を見ると全般的に彼のようにハスキーなシンガーが多く、ノーザン系のダンサブルな曲を中心にセレクトしているのがよく分かる。
ディープな方を好む選曲なら最後の PETE COOKE はフリップの曲"I WON'T CRY"を選ぶところ、ノリのいいノーザン・テイストの"LITTLE DARLIN'"を選ぶあたりにもそのことが伺える。
その方が彼のファン層にも共感を呼びやすいと考えてのことなのかも。
しかし実際は、レコード店やツタヤなのどレンタル店で、ボウディーズのCDと一緒にこれらのソウルCDを並べていても、そちらに手を伸ばすボウディーズ・ファンは、まだまだ少ないようだ。
僕もRCから一足飛びに黒人のソウルにハマったわけではなく、当時は黒っぽい演奏をするストーンズが一度クッションとなってたから、歳を重ねるにつれ食べ物の好みが変わるようにソウルに馴染んで来てくれたらなぁと思う。
ボウディーズの楽曲のスタイルは、そんな60年代のソウルやロックン・ロールを、今の若い世代にも受け入れやすいように上手く現代に昇華させている。
こだわりは英語詞だけでなく、昔のトラック・タイムと同じように3分以内の曲がほとんどということ。
彼らのルックスや人柄が良かったせいもあるのかもしれないけど、日本では売れないと言われる英語詞で5分くらいが当たり前のこの時代に、よくぞ売れてくれたと関心してしまうほど(笑)
さて、そんなボウディーズの曲の中で、サム・クック・テイストな曲があるのか探してみた。
彼らはアルバムの中でジェイムス・ブラウンやリトル・リチャードなどをカバーしているが、カバー曲としてサム・クックの曲を演ってはいない。
ひょっとしてインディーズ時代やライヴで演ってたかもしれないが、それらしい曲は見当たらなかった。
サム・クックの曲"Don't Fight It, Feel It" と同名のタイトル曲があったが、これも同名の異曲。
ほとんどが軽快なロック調の曲で、なかなかサム・クックっぽい曲を見つけるのに苦労しつつも、探し当てたのがこの曲。

この曲は僕が思うに、あのハーレム・スクエアでのライヴをモチーフに作られたもの。
イントロの部分は"Nothing Can Change This Love"の導入部を連想させ、そこから一気にアップテンポの曲にと切り替わる。
サムの場合、そこでは「取り戻させてくれ 僕に愛を感じさせてくれ 君が欲しい 君がいないと寂しいんだ 僕のこの愛は決して変わらない 君に知ってもらいたいんだ」という導入部のプリーチから始まっていた。
それをボウディーズのライヴでは「もし、さよならを言うことが君を喜ばすとするならば、俺に何が言える? 俺はどうすればいい? そういう悲しい歌です。でも、それを悲しく演奏してどうするんだ? 楽しく演奏してシャウトし続ければ、この先、人生楽しくいけるんじゃないですか?」に変えて、"OH! MY DARLIN'"へと繋げている。
この曲こそボウディーズ流"Nothing Can Change This Love"。
曲調は明らかにサムのそれとは違うものの、「楽しく演奏してシャウトし続ければ、この先、人生楽しくいける」という言葉通り"Nothing Can Change This Love"を更にハネさせ、切迫したヴォーカルは「オウオウオー!」とサムのメリスマで叫ぶ。
ボウディーズはこの曲だけでなく、彼らのライヴそのものをサムのハーレム・スクエアのライヴと化している。
ライヴのMCでは、「パーティー始める準備はいいかーい!?」であったり「最高のダンスナンバーを用意したぜ!」と、サムがハーレム・スクエアでそうしたように、その場をパーティー会場にしてオーディエンスと一緒になって楽しく踊り騒いでいる。
最後にサム・テイストな"OH! MY DARLIN'"ではないけれど、そんなダンス・フロアと化した彼らのライヴ・パフォーマンスを観てみようと思う。
THE BAWDIES / IT'S TOO LATE from DVD 「LIVE AT AX 20101011」
「サム・クックやオーティスでありたいという憧れよりも、もう俺はROYなんだっていうのを自分自身が認めたんです」。
そう力強く語る彼の言葉を実証する、"ROY"という存在を確立させた見事なパフォーマンスだった。