$Sam Cooke Taste Hunter

またまたえらい人物をぶっこんでみた(^_^;)

坂本九に続いて恐れ多くも日本の天才シンガー、美空ひばりの曲からサム・クック・テイストな曲を調べてみることに。
と言っても無理やり大御所どうしを関連付けようとした訳ではなく、以前から気になっているサムの曲が、どうも美空ひばりの歌とリンクしてしまうので、その辺を改めて探ってみた。

その曲を紹介する前に、美空ひばりとサム・クックの声について比較してみたい。
美空ひばりの声だけをみれば、以前もどこかで書いていたように、サム・クックというよりも、ジャズ・シンガーのジミー・スコット(JIMMY SCOTT)に似ていて、サムとはあまり共通点は無いように思う。

ただ、あの声紋分析でお馴染みの鈴木所長に言わせれば、美空ひばりや宇多田ヒカルの声には*『f分の1ゆらぎ』があると言われていて、僕が思うにサム・クックの声にもその『f分の1ゆらぎ』というものがあると思っている。

*<『1/fゆらぎ』とは>
「音のゆらぎには音の高低がゆらぐ〈周波数ゆらぎ〉と音の強弱が ゆらぐ〈振幅ゆらぎ〉がある。ゆらぎのある音は心地よいとされ るが、それだけではただのゆらぎに過ぎず、〈f分の1ゆらぎ〉は、周波数ゆらぎ、振幅ゆらぎのどちらか、あるいはその両方を起こしながら、さらに「周波数の高い音ほど短周期で細かく、低くなるにつれ長い周期で響く」という複雑な条件を満たした特別なゆらぎを指し、この音を聞くことによって脳内のα波が増加、リラックス効果が高まることが認められている。」

なんでも美空ひばりは、代表曲『川の流れのように』で、C=ドの音階で歌うべきところをCの音を出さず上下の周波数を規則正しく揺らしながらC的な音を出す、という天才芸が波形で確認されたそう。
もちろんこれは意識してできる芸当ではなく、まさに彼女が天性の歌姫だったことを証明しているとか。
それと同様にサムが歌うフレージングにも、ヨーデル風なメリスマだけでなく、あの少し枯れた歌声の中にまるでホーミーから発せられる倍音のごとく、周波数のゆらぎだとか振幅のゆらぎを起こしながら、聴く人の脳内のα波を増加させていると思う。

鈴木所長は、ナット・キング・コールにも『f分の1ゆらぎ』がみられると言っているが、是非サム・クックに関しても調べてもらいたい。
好きだからそう思うのかもしれないが、きっと世界一の『f分の1ゆらぎ』を持つシンガーだと確信する。

と、強引に『f分の1ゆらぎ』繋がりで美空ひばりとサム・クックを結びつけたところで、次は気になっていたという曲に。

その曲は、CD"Keep Movin on"などに収録されている"(Somebody) Ease My Troublin' Mind"。
サムは「サヨナラ」と歌う日本の歌"Japanese Farewell Song (SAYONARA)"を歌っているけれども、それと同じような感覚をこの"(Somebody) Ease My Troublin' Mind"のイントロに感じてしまう。

その牧歌的なイントロとリンクしたのが、今回取り上げた美空ひばりの「リンゴ追分」だった。


Sam Cooke - (Somebody) Ease My Troublin' Mind




リンゴ追分 - 美空ひばり



明らかに美空ひばりの歌う「リンゴ追分」は、日本独特の民謡をモチーフとして作られていると思うが、じっくりと聴きこめば、どことなくサムも歌っているガーシュウィンの"Summertime"のようなブルースっぽさも感じられる。
そしてそのサムの曲"(Somebody) Ease My Troublin' Mind"のイントロに続けて「リンゴ~♪」と歌い出せそうなメロディーは、やはり古典的なブルースや民謡からきている。
そう思いながら「リンゴ追分」を聴いていると、あの「エェ~エェエェ~エエェエエ♪」と歌う彼女のこぶしもサムのメリスマに聴こえてきたり(笑)

両者ともに民謡である"Danny Boy"やナット・キング・コールの"Too Young"などのジャズも歌っているのでそれに近いオリジナル曲が生まれても何らおかしくない。

レコーディングされた年をみれば「リンゴ追分」が1952年で、サムの"(Somebody) Ease My Troublin' Mind"は1964年なので、作られた年代からすれば「リンゴ追分」が先。
年齢的にみれば、美空ひばりは1937年に生まれで、サムは1931年生まれなので、美空ひばりの方が六つ年下となる。
しかしサムは50年の19歳の時にソウル・スターラーズに加入しているが、美空ひばりの方は40年代後半には既に子役としてデビューしているので、芸暦からすると彼女の方が先輩と呼べるかもしれない。

別に制作年や芸暦が、美空ひばりの方が先だからサムが彼女の影響を受けてこの曲を作ったとは言わないが、似たような感覚をサムではなく、ボビー・ブランドに感じてた人がいた。


その方は"ローリング サンダー レビュー"というサイトの『ボビー・ブランドとリンゴ追分』という回で、ボビー・ブランドの"Lead Me On"という曲が、美空ひばりの「リンゴ追分」に聴こえると言うものだった。


Bobby "Blue" Bland - Lead Me On



このボビー・ブランドの"Lead Me On"が1960年のレコーディングであり、年代的にこれも「リンゴ追分」の後になる。
サムが美空ひばりの影響を受けたかは立証出来ないが、このボビー・ブランドに関しては、先ほどの記事内容に書かれているように、ムッシュかまやつと憂歌団の内田勘太郎との対談の中で語られる内田勘太郎の言葉で、少なからずボビーのこの曲は彼女の影響を受けて作られたものだと思って間違いない。

$Sam Cooke Taste Hunter

(リンゴ追分について)

「内田:ボビー・ブルー・ブランドというアーバン・ブルースの歌手がいるんですけど、彼が昔、日本公演で歌ってましたよ。進駐軍で日本に来ていたときに聴こえてきて凄く好きになったらしいですよ。」

~『ムッシュかまやつ × 内田勘太郎』より~


そしてサムクックが"Little Red Rooster"のスタンダードなグルーヴをヒットさせていた63年の9月に、このボビー・ブランドはサム・クックと一緒にツアーをまわっている。
そのツアーの道中で、美空ひばりの素晴らしさに影響を受けたボビーが、サムにそのことを熱く語り、ひょっとするとその後のサムの楽曲にも何らかの影響を与えたとも考えられるのではないだろうか。

実は彼女も当時からサムのことを知っていて、天才どうしリスペクトしあってたとしたら・・・

あぁ、何て素晴らしいことだろう。



今度カラオケに行く機会があれば、サム風に「リンゴ追分」でも歌ってみようかな(笑)


「エェ~エェエェ~エエェエエ♪」