$Sam Cooke Taste Hunter

今はもう存在しないが、20代の頃よく通った、大阪の難波にある日航ホテルの横筋にナイルという渋い音楽を流すバーがあった。
店内の壁にはブルース系のレコード・ジャケットが並び、小腹がすいた時に食べる豚キムチが美味かった。

そこに訪れる理由が音楽を聴きながら酒を飲みに行くだけでなく、マスターが店内で流しているLP レコードを安く購入する為(笑)
確かオヴェイションズもここで教えてもらったと思う。

そのマスターというのが知る人ぞ知る、孤高のブルース・ギタリストAZUMIさん。

雰囲気はボーっとした感じの人なのに、ひとたびギターを持てば人が変わったように熱く歌いだす。
気さくな性格のAZUMIさんなので、その店を訪れるミュージシャンも多かった。
憂歌団、有山じゅんじ、おしょう、キング・ブラザーズ、三宅伸治、etc...。
そんな人達と出会える場所としても楽しみな店だった。

$Sam Cooke Taste Hunterそして、AZUMIさんのデビューCDが発売される時、Special Thanks にそのミュージシャン達の名前が並び、ジャケットの帯にコメントを付けていたのが今回の表題である甲本ヒロト。
(←ファースト・アルバムに収録されているジミヘンの「リトル・ウィング」は絶品。)

そこには、「僕は、AZUMIさんが友達でいてくれてとても嬉しいです」というようなことが書かれてた。
最近、久しぶりにライブを見に行った元スターリンの遠藤ミチロウも、AZUMIさんと何度か対バンしていて仲が良い。
あまりカテゴリー分けをするのはどうかと思うけど、僕自身もパンクとブルースというジャンルが好きなだけに、この二人のパンク・ロッカーがAZUMIさんと親交があるのは嬉しい。

パンクとブルースというのは、双方にどこか泥臭さがあったり、貧困などによる不満や悲哀、社会的な軋轢から生まれてきた音楽性が似ているのかもしれない。

AZUMIさんの話か甲本ヒロトの話か判らなくなってきたけども、その甲本ヒロトが最近のラジオでDJを務めていた時に、サム・クックに関して語っていたので、その時の様子を取り上げてみる。

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ヒロト 「皆さん、こんばんは。甲本ヒロトです。元気かなぁ?今日はね、ごきげんな歌声をお届けします。聞いてください。サム・クックで『ツイストで踊りあかそう 』」

TWISTIN' THE NIGHT AWAY / SAM COOKE

ヒロト 「サム・クックで『ツイストで踊りあかそう 』聞いていただきました。原題は、『ツイスティン・ザ・ナイト・アウェイ』。1962年発表の、『ツイスティン・ザ・ナイト・アウェイ』っていうアルバムの1曲目を、僕は今かけました。ただただ楽しい気持ちになります。はい。

え~と、歌を歌おうと思う人は、一度は意識してしまうのがこのサム・クック。もう偉大な存在ですね。とても楽しいので、このアルバムの2曲目も、かけちゃおうかなぁと思います。それでは聞いてください。サム・クックで『シュガー・ダンプリング』」

SUGAR DUMPLING / SAM COOKE

ヒロト 「サム・クックで『シュガー・ダンプリング』聞いていただきました。やっぱり楽しいねえ。うん。このコーナーをやっているといつも思うのは、時間が足りないなぁと思うことです。例えば、サム・クックだったらば、サム・クックだけで1時間2時間の特集が組めるし、それでもまだ足りないと僕は思うぐらい・・・いっぱいかけたい曲や、お話したいことがあります。

もしも、この番組をきっかけに、サム・クックをもし好きになったら、ん~と・・・例えば、彼がソロになる前の、ソウル・スターラーズというゴスペルグループで歌っているのも聞いてみてほしい。それから、このアルバムの次の年に録音された、1963年に録音されて、1985年に発表になった、『ハーレム・スクエア・クラブ』でのライブ。なぜ63年に録音されたものが、85年まで発表されなかったのか。その理由も含めて、みんなに知ってほしい。

歌い方それぞれちょっとずつ違うし、でも僕は、どのサム・クックも、大好きです。素晴らしいな~と思います。はい。サム・クックみたいに、歌えたら、一晩でもいいから、サム・クックみたいに歌えたら、死んでもいいなって思います。それではまた来週。
甲本ヒロトでした。バイバーイ。」

(オンエア曲)
'11 6月4日 On Air List|DJANGO BANGO DELUXE

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この時ヒロトが選曲したのはアルバム『ツイスティン・ザ・ナイト・アウェイ』からの二曲。
それはサム・クックのアルバムの中でもロック寄りなアルバムだと思うので、そういった意味でもヒロトが好きなアルバムの一つだと感じた。

淡々と丁寧にやさしく語られているその文面を見るだけで、ラジオを聴いてた訳ではないのに、ヒロトが喋っている声が想像できる。

何より一番に印象に残った言葉は、最後の『サム・クックみたいに、歌えたら、一晩でもいいから、サム・クックみたいに歌えたら、死んでもいいなって思います。』ってとこ。

同じメッセージを『一晩でも』と限定してまでも重複して伝え、そして『死んでもいい』と言い切れるサムへの憧れと、強い思いが凄く感じられた。

ブルーハーツの曲の中には、タイトルこそ『チェイン・ギャング』というサムの曲から取られたマーシーが歌う同名異曲があるが、ヒロトの声質や歌い方など、別にサム・クックを感じる部分は無さそうに思う。

しかし、元々、ヒロトはパンク・ロッカーと言えど、ブルーハーツ時代から歌うバラードには、ハーモニカを使用したりとブルースに根差した『黒っぽさ』があった。
そんなバラードの中から、サム・クック・テイストな曲として、この曲を選んでみた。

THE BLUE HEARTS 「ラブレター」


勝手な解釈だけれど、スロー・テンポではあるものの、出だしのメロディー・ラインは、サムの『ワンダフル・ワールド』に似て、ほのぼのとした温もりを感じるラブ・バラードだと思う。

どちらも弱い男が女性に対して懇願しているメッセージ・ソングだが、その愛に対しての信念は強い。
暗くなりすぎず、母性本能をくすぐるには充分な曲ではないだろうか。

そんなヒロトのように歌えたら、そしてサム・クックのように歌えたら・・・・・・女性にモテモテになるんだろうな(^_^;)


それからこの表情・・・・・・。





$Sam Cooke Taste Hunter


うん、これで揃った、スリー・カード(笑)