科学のために科学を科学的に笑うべし -2ページ目

科学のために科学を科学的に笑うべし

論理はわが友 されど笑いはさらなる友

ドローンは必ず落ちます

飛行機が必ず落ちるのと、自動車が必ず事故を起こすのと同じです。
これにどう対処すればよいのでしょうか?

必ず落ちるとわかっている飛行機や自動車に人々が乗るのはなぜでしょう?
ひとつはリスクを減らす努力をし、もうひとつはリスクに対処しているからでしょう。
エンジンがひとつ止まっても飛び続けるような設計にし、
エアバックや頑丈なフレームを設計します。
空港には大規模な消化設備を備えて綿密な訓練をし、
そして自家用車には多大な保険をかけます。

ドローンも同じでしょう。
まず羽根が止まったときのリスクに対処することを考えましょうか。

ドローンの羽根は、重心となる中央からみて相互に点対照の位置になるように配置されています。
5枚羽根や7枚羽根のドローンは実現可能ですが、普通は設計をしません。
そうした設計は、バランスが悪く苦労の割に益が少ないのです。
4枚羽根で東西南北に羽根を配置するか、
6枚羽根で60度ごとに配置するか、
8枚羽根で東西南北・北東・南東・南西・北西に配置するかです。
どの設計でも、ある一枚の羽根に着目すると、点対照の位置に別な羽根がきています。

4枚羽根のうちの1枚(仮に北の位置の羽根)が止まったら何が起きるでしょうか?
東南西3枚の羽根が、上向きの力をドローンに与えています。
南側が持ち上がり、東西を貫く軸を中心として回転が起きますね。
まもなくひっくり返り、そして落ちます。
回転しないよう、南の羽根を止めたらどうなるでしょうか?
まず揚力が不足するでしょうが、2枚で抵抗する分、自由落下よりはましな
ふわりとした落ち方ができないでしょうか?
できません。
いまこの四分の二ドローンは、綱渡りの綱に乗せた丸いお皿の状態です。
東西を貫く仮想の軸が綱となって上へ支えようと必死になっていますが、
南北に広がったお皿の丸い部分がゆらゆらとゆれています。
綱渡りの名手ならバランスが取れますが、
このドローンは現在バランスをとる手段が1つもありません。
力学的に不安定となっているのです。
ほんのちょっとのバランスのずれでたちまち回転し、
それを回復の手段がなく、落ちます。
結局、4枚羽根のドローンは、羽根停止のリスクに対して全く脆弱なのです。

羽根を増やして6枚の場合はどうでしょうか?
1枚が停まったら、それと点対称の位置にある羽根をとめると、
ちょっといびつなX形をした4枚羽根のドローンのような形式になります。
スターウォーズのXウイング戦闘機を正面から見たような感じですね。
このまま通常の運用は到底できませんが、コントロールは可能で、
軟着陸まではもっていけるでしょう。
揚力は不足し、羽根配置のいびつさからくる横移動の困難さもあるので、
事故が起きた点からただちに真下に下ろして事故の深刻化を避けるのが基本でしょう。

8枚の羽根の場合は?
同様に停まった羽根と点対称の位置にある羽根をとめても6枚生きています。
安定してコントロールを保ったまま着陸させることが可能でしょう。
「コントロールできるなら、多少はこのまま運用してもよくね?」
とか思ったあなたは、そもそもこの記事の出発点の、
リスクを減らすという目的を思い出してくださいね。