私が人生のどん底へ突入していく時期。
両親は私を必死に支えようともがいた。
その両親を支えてくれた方がいた。
同じ境遇の母親の方だ。
その息子さんに、僕は施設で大変世話になった。
今も、その繋がりは続いている。
そのお母様が入院されたらしい。
昨日、両親と一緒にお見舞いへ行った。
出発前に父とぶつかったが、結果一緒にいけてよかった。
2時間車を走らせ病院についた。
父が先に病棟を進む。
私が看護師へ確認している間に、病室を見つけていた。
お母様は、ベッドの上で両親と手を取り合っていた。
笑顔であった。うちの両親も笑顔だ。
僕は10年以上あっていなかった。
お顔はなんとなく覚えている程度。
でも、その面影は恩人の先輩に似ている。
しっかりとした、男性のような、龍のような面影。
「こんな父親、けとばしてしまえ」
豪快にお母様は笑われた。
入院中に書いたであろう、川柳も見せてくれた。
昔話から、戦後の日本の話まで。
肺を患い、時折せきこむ。
苦しそうだが、一生懸命話をしてくださった。
ふと
「はい、こんな人生でした!」
と笑われた。
こうやって、人は死に向かうのかと、向かいたいと思った。
いろんな気持ちが渦巻いているのは見てわかる。
慮ることも私には難しいが、お母様の顔は生きていた。
人は、言葉にならない、いろんな矛盾した気持ちを抱えて生きる。
気持ち、を問うても言葉にならないことも多い。
しかし、気持ちが人生を引っ張っている。
言葉にならなくても、その人の足跡を見ればわかる。
出発前に喧嘩したのは、私のガキな拘りだ。
親に、わかってもらいたい、なぜわからない!?というものだ。
オヤジの気持ちと足跡を振り返れば、道はできている。
小さな己のこだわりは横へおいておくことが、私の次の道を示してくれるんだろう。
大切なものを大切にして生きる。
本気。
笑顔。
お母様、お会いできて嬉しかったです。
両親が帰り、そっとお礼を伝えに一人で病室へもどった。
一人で少し寂しそうに、佇むお母様が見えた。
お礼を伝えて、病室をあとにした。
この瞬間を、私は忘れない。
人は、一人で死んでいくのだ。
僕のおかあちゃんも、嬉しそうだった。
そして、二人も確実に、死に向かっているのだ。