家に帰った私を、家族はいつものように迎える。
空気が悪いとはいっても龍の名前が出なければ何も変わらない。
私「ただいま」
母「おかえり、もうすぐご飯だよ」
「蕎麦にする
うどんにする
」
私「…うどんがいい」
大晦日の夜は毎年年越し蕎麦かうどんを食べる。
今年も例外ではなく、母は家族の希望どおり蕎麦とうどんを作っている。
父は母の料理を手伝いながらテレビを見て笑っていた。
蕎麦かうどんかなんてどちらでもいい。そんなこと悩んでいる場合ではないのだ。
私のお腹の中には赤ちゃんがいる。
実感もないし、なにかの間違いではないかと願う気持ちもあるけれど、さっき…数時間前に目にした現実は嘘じゃない。でも…
まだ現実をうまく受け入れられない。
とにかく家族にはバレちゃいけないということだけ考えていた。
このお腹にいる赤ちゃんの父親は間違いなく龍なのだから。
両親は私と龍の付き合いを反対していた。
こういうことが起こる可能性もあるからだろう。
というか、それが一番最悪な可能性だ。
けれど私はその一番最悪な結果に辿り着いてしまった。
なんという親不孝な娘だろう
だがそんな状態でも私はまだ龍とのことばかりを考えていた。
『この状態がバレたら龍といられなくなるどころか、もっと大変なことになる。絶対に隠さなければ』
この時はまだつわりもなく、体の変化もなかったので普通にしていればバレることもない。
私は家族と一緒に母の作ったうどんを食べ、年越しのテレビを見た。
テレビではお笑い芸人が楽しそうにはしゃいでいる。
カウントダウンが始まった。
「5」
「4」
「3」
「2」
「1」
「あけましておめでとう
」
2001年の幕開け。家族と一緒に笑った。
心の中ではとても複雑な感情で埋め尽くされていたものの、それを悟られてはいけない。
一世一代の大芝居。
思った通りなにもバレることもなく、その日は眠りについた。
しかし元旦の朝、目覚めと共に私の体調は一気に崩れて起き上がれなくなってしまった。
