授業の風景。この日は広中杯の問題を扱いました。

 

目につきやすいものばかりを念頭に置いてしまう恐ろしさ

以前記したエントリーをより細かくした話題でもあります。 「木を見て森を見ず」という言葉があります。多くのご父兄は手元の情報収集や安全策を模索するのには熱心ですが、大胆な判断を通じて長期的な成長を目論むことは極めて苦手な傾向にあるように思います。 短期と長期という見方は、このブログ、ひいてはClass On Cloudを語る上で絶対に外せない対比です。 そしてこれからお話ししたいのが、極めて短絡的な「技術」志向の欠陥です。所謂勉強法や教材へ極端に依存してしまうその姿勢です。

 

技術に優れるが、議論能力に脆弱な日本人

まず一般的な気質の話をします。昔から日本人は技術に優れると言われてきました。これは一つの長所であり、大事にしなければならないことです。

 

①フォーマット化・マニュアル化されたきめの細やかな知識の習得

②同質的なコミュニティの中で空気を察して事を荒立てない姿勢

③自身の生活において卑近な環境に対する工夫

④多数決で判断し、安定した環境を維持するために協調する力

 

そうしたもの全てに裏打ちされているのがこうした技術志向だと言えます。 他方で議論能力やアピールについては、異常なレベルで弱いのが日本人でもあります。

 

①狭くて深い学習や学問に対して理解を示せない。ストーリー・シナリオの創造性が低い。理系軽視で金になれば良い(=経済的に安定すれば何でも良い)と捉え、リスクの大きい研究職を敬遠・軽視する傾向がある。

②全く異質の人間を前にしては、十分なコミュニケーションを取って、自分と同じ人間なのだということを実感できない。多少衝突があったとしても、よりよい状態へと移行する為の自己主張・提案が出来ない。また議論の価値を見いだせず、仕方もわからない。

③自身の生活とはかけ離れた土地や文化にすむ人々をイメージした、俯瞰的思考と実践が出来ない。

④多数決の原理から離れて少数派の意見を十分に取り込みダイナミックな組織運営を行う力が無い。リーダーシップの不在。

 

キーワードにまとめるとするならば、日本人の特徴は、同質性重視・水平的協調性重視・事なかれ主義・体制維持重視、と言えます。創造性の育成や、はっきりとした自己主張・議論能力の養成、リスクテイク・管理能力の育成と言ったことは、中等教育に置いてもまるで軽視されていることがわかります。

 

過剰な効率性と無難さが成長性を阻害する

多くの予備校・受験塾でなされているカリキュラムは、所謂管理教育です。

 

厳密に単元毎に管理され、たくさんの課題を与えられ、それをこなして吐き出すと言う、非常にマニュアル化されたやり方をとっています。

 

多くの場合このやり方は無難で、一見安全策のように見え、そして非常に退屈です。過剰にマニュアル化されたカリキュラムにあっては突出した資質を伸ばしたり、興味深い対象との出会いを通じて急成長のきっかけを得ることはまず不可能です。

 

「○○死ね」(○○の中には塾予備校の名前が入る)と学生が叫ぶのにはそういう理由があります。退屈であっても、それが実践的であったり、長期的な将来に渡り合理であれば良いのですが、実際のところそれは数年先のことに最適化されたものなので、無意味なことをたくさんやらせているばかりか、事実と異なるものを刷り込まれることも少なくありません。

 

すこし指導経験がある人間ならわかりますが、成長の経路は平坦であったり、努力に比例して淡々とのびて行くものではありません。あるとき頭の中で何かが繋がったり、掴んだりしたとき、一気にのびて行くタイミングというものがあります。つまりその過程は試行錯誤そのものであり、あくまでリスクを伴うものなのです。

 

もちろん頑健なカリキュラムにそって学べば、特に言語系の科目についてはのびて行く傾向があります。ただしそれもあくまで文法の構造や構文解析的な内容をやっている間のみであって、テーマ別の文章の理解や、作家の背景も考慮した上での理解というのはまずふまえておらず、当然そうであればsenseは身に付きません。

 

ご父兄は偏差や席次、合否結果と言ったもののみに目を奪われがちです。つまり家庭を全部省略した、表情の一切無い量的な情報です。しかしこればかりを眺めていると、次第に何が大事なのかを見失い、表情の無いmachineのような学生を作り上げることに繋がってしまうのです。 ではそのリスクテイク能力とは具体的になんなのか、次のエントリーで記したいと思います。

 

 


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