モーツァルト アヴェ・ヴェルム・コルプス K 618
モーツァルトは1791年の12月にこの世を去っていますが、そのわずか半年前の6月、あたかも自分の死とその後を予見するかのような、どこまでも天上的な作品を残しています。名作「レクイエム」と並ぶ最期の宗教曲「アヴェ・ヴェルム・コルプス」です。バーデンで病気療養中の妻、コンスタンツェの世話をした友人の合唱指揮者、アントン・シュトルへの感謝を込めてこの曲は作曲、献呈されました。合唱と弦楽にオルガンのみというシンプルな編成で、長さも46小節しかありませんが、そこに描かれるているのは、この世のしがらみを越えた清澄で透明な世界です。悲痛な「レクイエム」と比べると、すべての闘いを終えて天に帰ったようなやすらぎに満ちていま す。半音的で美しい旋律に自然で絶妙な転調と、モーツァルトの特徴が詰まったような魅力があります。最晩年の透徹とした心境もうかがえます。