出稼ぎ帰りの電車内でのこと。

通過列車待ち合わせの停車時間に急ぎホームの自販機で飲み物を購入する人ひとり。彼は2本のペットボトルを抱えて社内に戻り、一本を知り合いと思われる人に渡しました。

それはそれで、2人の関係は上司と部下か取引先とそこへの売り込みをかけている営業マンかと私は想像したのであります。

ところが、次の駅で彼らが私の隣に座りまして、ウオークマンで聞いていたブラームスのあいだから話の内容が聞こえてきたのです。

どうも、2人はサラリーマンではなく、就活セミナーかどこかの帰りらしく、その飲み物を買ってきた兄ちゃんは営業志望らしいのです。彼が「偉そうなこというわけじゃないんですが…」と前置きして話し始めたのが次のようなこと。曰く

『ペットボトル150円って、そんなに高くないじゃないですか。でも、貰ったほうはそれ以上の恩義を感じるものですから、人の心をつかむ手段としては悪くないんですよね』

返報性の法則ですか…。まあ、確かにそういう理論は成り立ちますし、古くからある営業手法です。この手のことは営業関連のビジネス本にもかいてありますので、それを聞きかじったのでしょう。

でもね、そんな小ワザというか姑息な手段ばかり覚えてつかめるもんじゃ無いですよ、人の心は。

そもそも、そんなことネタバレさせちまったら、相手はアンタのことをこれからどう思うんでしょうか?よしんば善意でやってあげたことでも、何かウラがあると思うんじゃないですか?本人の意思に反して、信用ならん人間だとさえ思われると考えないのでしょうか。

自慢げに話す彼の話を聴きながら、こんなことを考えていなければ社会で成功できないなんて思う若者ばかりになったら、この国はウンザリするような奴らばかりになりますね。そんなもので人の心が操れるなんて絶対思っちゃいけませんぜ。

相手の若者も「すごい営業マンですね」なんておだてているのでイヤになってしまうんです。就活セミナーとかバカ高いゼニ取って一体ナニを教えて、どういう人間を育てようとしてるんでしょうか。妙な小ワザばかりの若者なんか社会には不要だと思いますけどね。