〈本をめぐる冒険〉の第2回です。週末更新のコラムてきなものです。日曜日のお昼ぐらいの更新が一番多いかもしれません。
さてさて今回は、本に線は引く? 引かない? という質問です。あるいは書き込みはする? しない? でもいいです。要は本になにか書き込みをするかどうかということです。
これも個人的にはどちらが多いのか気になるところです。みなさんどんな風に読書をされているんでしょう。わくわく。早速コメントどぞー。
本に書き込みをするということについて、あとでもう少し考えますが、まずはぼく自身のことを書くと、基本的に書き込みはしないです。線も引かないですし、しおりがわりにページの端を折り曲げるのをドッグイヤーというんですが、それもしません。
その代わりに必要に応じてメモを取ります。外出中なら、携帯電話のテキストメモにページ数とかを書いておく。家や喫茶店なら手書きですが、いわゆるメモ帳ではなく、B5のコピー用紙がなぜか好きなので、それを使っています。メモを取って、読み終わったら空白に落書きして捨ててしまうので、メモ自体もそれほど重要なものではないですね。
ちなみに、メモに書いている内容は、登場人物が複雑な場合は登場人物のメモ、ブログに引用で使う場合があるので、ぐっときた文章のページ数、あと一番多いのは、難しい漢字や気になった単語を書いておく場合です。これは後で詳しく調べたりもします。
それから、小説の中に出てきた音楽や小説、映画などをメモしておいて、後から聴いたり観たりもします。これもまた読書の楽しみの1つですよね。本を読めば読むほど読みたい本は増えていくんです。とりあえずそんな感じです。
ぼくがなぜ線を引かないかと考えると、本は大切にするもの、という固定観念があったからだと思うんですね。図書館の本ももちろんそうですし、自分の本も大切に汚さないように読んできました。むしろ、「えっ、線なんか引くの?」という感じに近い。
ところが、本の読み方のような本を読むと、本には線を引けと書いてある。その内、3色ボールペンで引くのがいいと話題になる。大学の先生なんかも本に線を引けと言う。自分の本の読み方と、違う読み方があるのがずっと不思議でした。
今は自分の中で、この謎は少し解決されています。一口に読書と言っても、楽しんで小説を読む場合と、知識を蓄えるために学術書を読むのとでは、微妙に異なるということです。そして、アマチュアとプロフェッショナルの違いも関わってきます。
アマチュアとプロフェッショナルというのは、読みが浅いか深いかではなく、そこで得た知識を再現する必要があるかどうか、ということです。ぼくの知っている大学の先生は、ほとんどみんな本に線を引き、ドッグイヤーをがんがんします。なぜだと思いますか? 単にそういう性質なのではなく、必要に迫られているからなんです。
文学研究は、論文というものを書きます。その時に、「小説のあそこがよかったんだよな~。あれ、どこだっけな・・・」と一々探していたら、時間がいくらあっても足りないんです。ドッグイヤーを探していく。ぱっとページを開く。引用したいところに線が引いてあって、その横にその理由が書いてある。そうすると、すぐに文章が書けます。
先行研究といって、他の研究者が書いた論文を読む時も、その意見に自分が納得したかどうか、反対ならその根拠も書いておく。ドッグイヤーにしておく。そうすると、ぱっと開いてすっと書けます。
そうなると絶対的に、本は買って、線を引くべき、ドッグイヤーはするべき、ということになります。もし本が汚れて嫌なら、もう1冊買えばいいんです。単にそれだけの話です。
文学研究に限らないですが、それを再現する必要がある場合、たとえば文章を引用したりする場合、メモを取るより、線を引いて、ドッグイヤーをした方が便利なんです。メモはどうしたって失くなってしまいますから。
小説とそれ以外の知識を蓄えられる本はどちらが再現の必要性が高いかというと、後者だと思います。新書や専門書、学術書など知識の本の読書は、線を引いて、ドッグイヤーにしておくと、後から参照もしやすいんです。
人間はどうしたって忘れます。忘れた時に、自分が気になったところをすぐ参照したい、そんな時に線を引いておくとすごく便利なんですね。
その点、小説の場合は、一部分だけ参照してもあまり意味はないですし、その時自分がなにを感じたか、もそれなりの価値はありますが、あまり重要ではないような気がします。
忘れてまた読みたくなったら読めばいいですし、そうなると逆に線が書いてあると邪魔になります。ぼくの場合は小説の読書がメインなので、ほとんどまったく線は引かないということになります。
第1回では、本は買うか図書館か、ということを考えましたが、本を買うメリットとしては、こうした書き込みができることや、あとはぼろぼろにするのを覚悟で風呂場に持ち込んだりもできるということがあります。
今回の結論としては、本に書き込みをするかしないかということは、本の内容を再現する必要があるかどうかが大きく関わってきて、線を引いておくと、のちのちの参照により便利である、ということになるかと思います。
みなさんは本に線を引きますか? ぼくは線を引かないので、わりと引かない方をプッシュしてしまったかもしれません。もちろん小説でも線を引いてもいいんですよ。自分にしっくりくるやり方をするのが一番いいです。
感動したところや、気になったところなどに線を引いている方も大勢いらっしゃるかと思います。コメントお待ちしております。こんなペンを使っているよーなど、なにかこだわりがあれば、あわせて教えてくださいね。
次回は、「お気に入りのブックカバーは? ーー旅の仲間のブックカバー」です。また日曜の昼頃の更新になると思いますので、お楽しみに。
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