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三浦しをん『まほろ駅前多田便利軒』を読みました。
三浦しをんも、色々読んでいます。器用な作家だと思います。こちらは最近映画化されたことでも有名な、直木賞受賞作です。映画もなかなか面白いです。
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これは簡単に言ってしまえば、三浦しをん版『池袋ウエストゲートパーク』なんですよ。多田という、便利屋を営む男のところに、かつてのクラスメイトである、行天という男が転がりこんで来ます。
追い出せばいいんですが、過去にちょっとしたことがあって追い出せないんですね。2人ともどうやら結婚に失敗しているらしいことが分かります。
そうして言わばいくあてのない2人が、日常に見え隠れする様々な謎というか出来事と関わりあっていきます。犬の飼い主を探したり、娼婦を助けたり、ヤクザとモメたり。そうした短編がいくつか入っている、連作の小説です。
「まほろ市」というのは、架空の都市ですが、神奈川との県境という設定や、作者が住んでいるという情報などから、「町田市」がモデルになっているのではないかと言われているようです。
そう聞くと、何を隠そうぼくは育ったのが町田市なので、なんだか嬉しい気がしましたね。別段、町田市っぽい描写があるわけではなかったですが。ハコキューくらいですかね。小田急のことでしょう。
あらすじはあまり触れませんでしたし、ミステリー的にとらえると弱いということは、じゃあ面白くないかといえばそうではないんです。特に最後の短編が非常によかったです。
この小説は、ストーリーや謎ときではなく、キャラクターがいいんです。つまり、多田と行天という、2人の男の関係性がいいわけですが、多田は不器用で怒りっぽく、他人の気持ちとかには鈍感です。
行天は真逆で、天真爛漫さと凶暴さを備えているキャラクター。簡単に人を殴ったりします。でもへらへらしてる感じがあったり。他人の気持ちには敏感です。
行天が転がり込んできて、一見、行天が救われたように見えるわけですが、一方で、多田も救われているというか、変化が起こっているわけです。行天がいなくなったらどうなるかで、それが分かります。
多田と行天の関係性は、恋人や父子など、ぎくしゃくしながらも、強い絆で結ばれている関係性のメタファー的なものとしても読み解けるような気がします。
たとえば、行天がカップラーメンをゴミ箱に捨てるんです。汁を少し残したまま。ちょっとしたはずみで、汁が床にこぼれてしまうんですね。
多田は怒鳴ります。汁は捨ててから、ゴミ箱に入れろって言っただろ、と。行天は平気そうな顔をしていますが、夜中にこっそり床を拭くんです。そしてそれを多田は寝たふりして見てるんです。
こうした、お互いが素直でない大人の、奇妙な関係性は面白いです。2人の性質が真逆なだけに、物事に対するアプローチの仕方が違うのがいいんですよねえ。
ミステリー的なものを求めたり、大感動を求めるとあれですが、多田と行天のキャラクターに興味を持った人は、ぜひ読んでみてください。続編もあるようですので、いずれ読んでみたいと思います。
おすすめの関連作品
リンクは『池袋ウエストゲートパーク』で。
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ぼくもシリーズの途中までしか読んでいませんが、結構読みやすくていいですよ。ドラマにもなってましたね。