「悪」と戦う/高橋 源一郎
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高橋源一郎『「悪」と戦う』(河出書房新社)を読みました。
高橋源一郎は不思議な作家ですね。ぼくはほとんどの小説を読んでますが、ずっと不思議さが消えません。『さようなら、ギャングたち』を読んでいる人は、ぼくの言う意味が、なんとなく分かってもらえると思いますけども。
さようなら、ギャングたち (講談社文芸文庫)/高橋 源一郎
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ぼくの中のなんとなくの分類で、高橋源一郎は村上春樹や吉本ばなな、なんかと同じ所にところにおさまっていて、現実とは違う、もう一つの世界への境界を越えているという共通点があるような気がします。
現実を一歩踏み越えている、それは時に精神的なものであり、時に詩的なものなわけですが、普通だったらファンタジーになってしまうわけです。
そこを現実とうまくリンクさせながら、文芸作品としてのバランスを保っている。
高橋源一郎は、言葉に対するセンスが人一倍すぐれていると思うんですが、特に『さようなら、ギャングたち』では、文芸作品にしかできないこと、たとえば普通、動くはずのないものを存在として動かしたりしていて、ぼくはびっくりさせられました。
そろそろ内容に入っていきますが、『「悪」と戦う』は説明しづらい作品なんですよ。基本的には、3歳のこどもが、「悪」と戦うということでいいと思うんですが、その戦い方が、あたたたたぁっ! というバトルものではないわけです。
最初はちょっとはしょりますが、3歳のこどものところに、お姉さんというかよくわからないひとがきて、世界がダメになりそうだと言うわけです。隙間におっこちちゃったよと。その3歳のこどもがなんとかしないと、もう2度とパパやママ、弟には会えない。
そこでなんとかしようとするんですが、夢の中の話のようになって、3歳のこどもが、いつの間にか成長している。そこで、ひどい目というか、たとえばいじめの現場にいるとか、そういった状況でなにができるか、という話がいくつか続きます。
ヒロインというか、女の子が出てくるんですが、その女の子がすごく変わっている。どこが変わっているかは、まあ実際に読んでみてください。
で、結論ですが、大傑作だとか面白かったとか、そういう感じではないんですよ。なにこれラノベ? と言われそうな雰囲気もあるんですが、面白いです。興味を持った方は、読んでみてもいいと思いますよ。活字が大きいのですぐ読めます。
高橋源一郎の言語感覚に注目です。あと小説の構造の巧みさというか、そういった部分で楽しめるかとは思います。エンターテイメントとしてはちょっと弱いかもしれませんね。
逆にこの作品を読んで気に入った人は、他の作品も読んでみるといいかと思います。ちょっとエロそうなタイトルや内容のもありますが、エロくはないです。なんだか変なだけです。たぶん。