大阪フィル第575回定期演奏会、今年で指揮者から引退を表明している井上道義、最後の大阪フィル定期演奏会(ザ・シンフォニーホールではこの後もある)、井上のライフワーク、ショスタコーヴィチ、それも声楽入りの交響曲第13番「バビ・ヤール」、前半もロシア関係のもの、バス歌手のティホミーロフ、男声合唱のオルフェイ・ドレンガーはN響と同じ、曲目もN響とほぼ同じ、来月の大阪フィル、インバルは都響と同じマーラーの交響曲第10番クック全曲版をやるもの、大阪フィル77年の歴史でバビ・ヤールをやるのは初めて、おそらくプロのオーケストラでは関西初演だろう。ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのガザ虐殺と、新たな戦争の時代に、ショスタコーヴィチがソ連の雪解けの時代に書いた作品が重く響く、大阪フィルの定期演奏会は6年ぶりだが、オケのアンサンブルは6年前と比較にならない精緻ぶりで金管のミスもほとんどない、尾高忠明の薫陶で確かにオケとしてレベルアップを痛感。

 J・シュトラウスⅡの、ワルツ「クラップフェンの森で」、ロシアにJ・シュトラウスⅡが行った時に作曲、カッコウの音色など素晴らしい。ステージ・オーケストラのための組曲、ショスタコーヴィチの映画音楽をアトフミャンが1950年代に編曲したもの、8曲から5曲抜粋、愉快なもの、マンドリン、アコーディオンなど入り、痛快なものを聴かせてくれた。

 交響曲第13番「バビ・ヤール」、ショスタコーヴィチが雪解けの時期に、ソ連批判をしたもの、バビ・ヤールは女の谷の意味、ユダヤ人虐殺がナチスにより行われたもの、ソ連でもユダヤ人弾圧はあり、ソ連当局はバビ・ヤールで殺されたのはロシア人、ウクライナ人もいると改竄を強要、しかし60年後のロシアのウクライナ侵攻を思うと何とも、ともかく、バスのティホミーロフの存在感、オルフェイ・ドレンガー61人の合唱はスゴイ、この曲、ハイティンクやロジェストヴェンスキーの録音で知っていたが、バビ・ヤールだけでなく、第2楽章以降もソ連批判、日本はソ連の末期そっくりと言われて20数年、似たような官僚独裁、腐敗政治のもとで、ユーモアでのアイロニー、商店にて、での女性たちの姿、恐怖、そして、立身出世しないことが立身出世という終楽章、大変なものであった。しかし、音が消えてえげつないブラヴォー飛んで興ざめ、その後は井上道義に一般参賀もあり、大満足の大阪フィルであった。