あるピアニストのお話。
子供の頃、地元の(それなりの)有名な先生にピアノを習っていた。レッスンは厳しい感じで、内容もよく分からないし、何かと強制する……と、ありがちな(今でいう悪いレッスンの典型の)ものだったそう。
ピアノや音楽自体は好きだったし、その道に行こうとは思っていたけど、子供の時からずっと、ピアノレッスンに行くことが日常生活の中でとにかく一番嫌いだったらしい![]()
地方だと(田舎ほど先生が少なくなるので)あまり先生を選べないですし、親もどうしていいか分からない、というのはよくあるんですよね。
親も先生も、その子を音大に行かせたかったので、地元のピアノコンクールを度々受けさせていたわけですが、
その子にとってのコンクールというのは、大嫌いなレッスンや日々の練習とは違う、唯一気楽に楽しくピアノを弾ける場所。
反抗の気持ちもあったのか、その時ばかりは!レッスンで教えられたことを完全無視し、レッスンで教えられた事とは全く違う、自分の好き勝手に自由に伸び伸びと弾いていたそうな![]()
先生はその場にいるけど、コンクールが終われは違う曲に取り組むわけで、そんな感じだったにも関わらずコンクールの結果はいつも良かったので、
結果が良ければ先生も文句は言わない(言えない)![]()
とまあ、そんな日々のピアノ生活を送っていたそうです。
後々、違う先生を経由しつつ、無事に音大に入り、ようやくイヤなレッスンから解放されたのかと思いきや、大学でもまた同じような事が起こります。
大学の先生からもレッスンではボロくそ。成績も限りなく下(上のクラスの中ではあるけど)。先生から全然評価されない落ちこぼれだったらしい。
しかし不思議と、音大の優秀な同級生達からは演奏する度に「さすが〇〇ちゃん!」と言われていたそうで、本人的には「いや私成績ビリなんだけど…」と、何故そう言われるか分からなかったらしいですが、初見などの基礎系が得意だったり、自由な演奏に別の何かを感じていたのでしょう。
そしてまたまたコンクール。先生のアドバイスもさほど聞かず、自分の好きな曲を、自分の好きなように弾く、という相変わらずのスタイル。そうするとまた良い結果が出るわけです。
その結果を先生に伝えると、
「その選曲でよく通ったわね...」
(当時は王道系の曲だと通りにくかった)
「あなたが通るなんて、不思議だわ」
(成績上位の音大の友達よりも結果が良かった)
そんな感じの生活をしながら何とか無事に音大を卒業し、成績優秀な同級生が他に何人もいたにも関わらず、結局数年経った時点で、音楽で生計を立てられている(音楽を現役で続けている)のは同級生の唯一自分だけだった、、という![]()
コンクールという本来一番緊張するものが、自分のおかれた事情や環境によって(初期段階で)一番自由で楽しい場所、とインプットされる。人生って何がプラスに働くか分からないものです。
時代も変わり、今はこんな感じのお話もだいぶ無くなったように思いますが、音楽は本来人前で弾くもの。そして誰かを楽しませるものであり、自由であることが前提。その原則から外れて、何かプラスのものが生まれることはないのです。
