よく「一番難しいピアノ曲って何ですか?」みたいな質問ありますが、
正確な事をいうと、そんなのは存在もしないしナンセンスな話であって、難易度なんてどの方向から見るのかによって全く違うということになります。
ただ、それだと話がつまらないですから、私はこのように答えるようにしています。
「あえていうなら、やっぱり
ラフマニノフじゃないか」
それも有名なピアノ協奏曲ではなくてピアノソロ、とくにショパンからの系譜である練習曲&前奏曲集やピアノソナタ。
ピアノを弾く難しさというのは「技術面」の比率はそこまで大きくなくて(今の人は技術的には皆弾けてしまうので)、やはり本当に難しさは「音楽面」ということになります。音楽としてきちんと成り立たせるレベルに持っていけるかどうか(音楽の基本的な事がきちんとできるかどうか)、そして曲のポテンシャルを一定以上引き出すことができるかどうか。これらの曲はその難易度が恐ろしく高い。しかも聴く人が聴けば一瞬で能力が見抜かれるという怖さ
ラフマニノフの練習曲や前奏曲は、Youtuberをみてもあまり見つからないし、発表会やコンクール等でアマチュアの方が弾くのもほとんどいないし、プロのピアノリサイタルですら似たような状況。音大生が卒業試験などでピアノソナタを弾くのは見かけるけど。一部の曲(前奏曲23-5、練習曲39-5、ピアノソナタ第2番)を除いてほとんど演奏されていないのです 音楽自体はこれ以上なく素晴らしいのに。。
ラフマニノフといえばピアノ音楽のロマンとピアニズムの極致 やはり難易度が高すぎるためにずっとマイナーであり続けているのか。
たしかに、誰もが初聴でよさがすぐに分かるという代物では無いけれど(一度や二度聴いて良さが分かる人はよほどのセンスの持ち主)ここまでマイナーである理由は何なのだろうか? 作曲された時代のせいか、巨匠ピアニストの録音が少ないのも大きな理由かもしれません。いい録音が少なければ弾く人も聴く人も少なくなる......
そんなことをずっと前から考えていまして、そして10年以上前からいつか「究極のラフマニノフCD」を作ろうと思っていました。それがようやく実現!
私がプロデュースした究極のピアノCD「サイレント・ラフマニノフ」(ピアノ:冨田楓)が10月にリリースされることになりました
このCDはラフマニノフの(ポップス系でいう)バラード系の曲を集めたアルバム。言い換えれば「究極のヒーリング・ミュージック」。
とにかく美しいです。このような美しさがあったのか、ピアノとはこういう音楽もあったのか、きっと多くの人が知らない体験が得られると思います。
一応お伝えしておきますが、静かな曲だからといって弾くのが簡単になるわけではありません むしろ音楽的には難易度が格段に上がるといってもいいでしょう。技術やパワー、華やかさで押し込むことはできず、音楽のつながりや流れは高度なものが求められ、なによりも歌のセンス、一切のごまかしはききません。
CDは10月発売ですが、9月8日(日)と13日(金)に先行発売のコンサートがありますので、生でも聴いてみたい方、早く手に入れたい方はぜひお越し下さい。ご予約はプレイガイド等でも受け付けていますが、メール classic@mori-music.com でも受け付けております。
2024年
9月8日(日)
開演14:30
チャージ¥3.000
客席少なくアットホームな空間。お食事やドリンクも 何といっても一番最初にCDが手に入ります笑
9月13日(金)
開演19:00
@マリーコンチェルト(中板橋)
チケット 一般¥4.000 学生¥2.500
リサイタル向けの良質な70席のホール。残券無かったらすみません。
ピアニストの冨田楓を簡単にご紹介。
経歴は芸大と芸大院のピアノ科卒(以上)。彼女はとにかく超の付くストイックなタイプ。やるべき課題があればきっと何時間でも弾き続ける。やはり今どき稀有なのは「一切の邪念が無い」ストレートなタイプであるということ。真っすぐ飛んでくる音、何よりも「音の透明感」は何にも代えがたい。そしてピアノを弾かなければ明るくていつもニコニコ。そんなピアニストです
参考までに曲をいくつかご紹介。
練習曲 「音の絵」 Op.39-8
冨田楓いわく「万華鏡のようなハーモニー」
これ以上のピアノ曲があるのだろうか? と思えるほどの超傑作。聴いては全く分からない技巧の高さ(簡単ではないかと思わせるほど素晴らしい演奏ということ)、音楽性にいたっては恐ろしいほどの高い難易度が要求されます。
ピアノソナタ 第2番 第2楽章
このソナタは音大生が卒業試験などでよく演奏します。第2楽章はいわゆる泣ける系の旋律を持つ美しい名曲。この曲をどこまで美しく弾けるのか。他の演奏との比較が出来るという点でも、この冨田楓の演奏を聴いて欲しい曲です。
練習曲 「音の絵」 Op.33-3
きっちり分かれた二部構成。荘厳なフレーズと遠くで呼応する鐘の音。後半は静かで壮大なアルペジオでこれ以上なく美しく奏でられる。CDに収録された冨田楓の演奏は関係者とスタッフ間の評価がとびきり高く、これはぜひコンサートでも聴いて欲しい。
前奏曲 Op.32-2
付点のリズムが一曲を通して繰り返される。このような同じリズムや音形を繰り返すのはラフマニノフが好んだ大きな特徴。さりげないカッコよさと心地よさ。
前奏曲 Op.23-4
ラフマニノフの全作品の中でも、もっとも穏やかで優しさに満ちた旋律を持つ曲。シンプルなテーマに始まり、徐々に変化しながら、加わりながら、花が咲くように広がってきます。まさに今回のCDの象徴ともいえる究極のヒーリング・ミュージック。
最後に余談ですが、CDの製作のお話
録音された音源は最終入稿までに複数のオーディオで聴いて何度も確認します。一般的なオーディオ、最もよく聴かれるだろうiPhone(私もこれ)、車のオーディオ(車にしてはかなりいいオーディオ)、そして普通の人が購入できる範囲の最高レベルのオーディオ。
このオーディオで、しかもハイレゾで目を閉じて聴くと、もう別世界。これで聴いた作品33-3なんて、もう重力すら無くなり、大自然の空を飛んでいました