昨日は1日中散歩とホテルでゆっくり過ごしていました。ザルツブルクでの2つ目の公演はM.ホーネック指揮のピッツバーグ響です。ピッツバーグ響はマゼールやヤンソンス時代は来日していましたが、この25年以上は来日しておらず、久しぶりになります。ザルツブルクに来て、米国のオケを聴くのは珍しいですが、この公演を選んだ理由は、当初の予定ではブロンフマン(66歳)が「皇帝」を弾く予定で、紙の公演カタログではそのように書いてありましたが、音楽祭のHPネットを見たところ、なんと「ラフマニノフ3番」に変更になっていました。ブロンフマン(当時44歳)と言えば、2004年のゲルギエフ指揮・ウィーンフィルのラフマ3番の壮絶な演奏が思い出されます↓。(こちらがその映像のリンクです)

あれから20年が経ち、ブロンフマンがどんなラフマニノフを聴かせてくれるか楽しみでした。席の位置はブロンフマン狙いの最高の席です↓。

 ラフマニノフの第1楽章の第1主題では、おとなしいタッチで、オケも抑制を効かせてしました。後半部の難しいパートでは、ブロンフマンは野生的な叩きではなく、芯のはっきりしたクリアな音でした。2004年の映像に見られるようなエネルギッシュな動きはあまり無く、円熟のピアニストと言う感じでした。第2楽章のメランコリックな曲でも、ブロンフマンはパワーで押さない演奏で、ホーネックのピアノとソロのコントロールが上手かったです。肝心の第3楽章ですが、ブロンフマンは徐々にパワフルな叩きになるものの、2004年の体全体を動かす演奏ではなく、少し落ちついたスタイルでしたが、ブロンフマンらしい迫力はコーダ手前から壮絶な演奏になり大団円となりました。演奏後の会場はとても盛り上がってました↓。


後半のマーラー5番は3週間前にホーネック指揮による演奏(PMFオーケストラ)を聴いたばかりです。

オーケストラが異なると、どのような違いになるか注目していましたが、想像以上の違いがありました。Tpのファンファーレがうまく決まると、Tuttiの部分ではPMFオーケストラと比べ、深くて柔らかいサウンドが飛び出してきます。テクニックと楽器の質の違いによるものと思われます。第2楽章では短い序奏の後に続くVnの激しい動きのある第1主題で、コンマスの横の女性奏者の弦が切れてしまうハプニングがあり、予備と交換するのかと思ったのですが、第2プルトの男性奏者が演奏中に5分くらいかけて直していました。楽章のラストパートでは宇宙観を感じる表現に描かれていて、ここでコンサートが終わっても良いくらいの充実感です。第3楽章に入る前にまたハプニングがありました。マーラーの演奏が始まってから、どこからか虫のような音(電子音)がうっすら鳴っていて、会場の男性観客の1人が立ち上がって、「音を出している人は止めてください」と勇気ある発言をし、ホーネックはしばらく演奏を始めませんでした。やっと音が消えると、第3楽章が始まり、ここではホルンが大活躍しますが、首席の立奏も素晴らしかったですが、ホルン・セクションの全体音が重層的で聴いたことの無い独特のサウンドでした。特に華やかなコーダは分厚い大合奏で圧巻でした。第4楽章は無から始まるVaの演奏はPMFの時と同じアプローチでしたが、このオケの演奏はMETやPMFオケとは数段上のテクニックがあり、映画音楽に入り込むような没入感がハンパなくありました。第5楽章でもHrnよる第1主題は綺麗に奏でられ、金管セクションの複層的なサウンドが鳥肌が立つほど見事で、単なる鳴らし屋的な演奏でないことが理解できました。クライマックスではシンバルは2人が担当し、壮大なコーダでは速度を上げて圧巻のラストでした。


アンコールはPMFオケと同じで「ばらの騎士」でしたが、この演奏はウィーンらしさは無く、米国のオケらしい演奏でした↓。


カーテンコールは盛り上がってましたが、日本のようにソロ・カーテンコールは滅多にありません。終演後、マエストロにお会いしたところ、この後はピッツバーグ響とウィーンやイタリアなどでツアーで、曲目は毎日のように異なるそうです。例えば、「トゥーランドット」の管弦楽版(約20分間)をホーネック自身が編曲して、歌手無しでトゥーランドットを演奏するそうです。これも聴いてみたかったです。


(評価)★★★★ ブロンフマンの素晴らしいピアノとピッツバーグの金管サウンドを楽しめました

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演 


M. ホーネック指揮

ピッツバーグ響

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番

マーラー:交響曲第5番

独/Y.ブロンフマンp

〈アンコール〉

R.シュトラウス「ばらの騎士」よりワルツ《編曲版》