7/4と7/5の2日間、フルシャ指揮・都響を聴きにいきましたが、この2回の公演で、オーケストラのコンサートは生ものだと実感しました。総評すると7/4は駄演、7/5は好演でした。元々は7/5のみ行く予定でしたが、友人の体調不良で、代わりに筆者が7/4公演も行くことになったのです。


今回の曲目は「月刊都響」p.43で、フルシャが「ブル・ブル・プログラム」と言ってますが、ブルッフのVn協奏曲とブルックナー4番「ロマンティック」です。どちらも、ロマンティックな雰囲気のする聴き馴染みの良い曲です。最近の都響は「ベト8、ドヴォ8」とか、「ベト6、ショスタコ6」など語呂合わせのような洒落た企画が多いような気がします。


ブルッフのソリストは42歳の五明佳廉で、若い時は天才として扱われたようですが、ヨーロッパで彼女の名前をあまり聞いたことが無いですし、今回は初の鑑賞になります。第1楽章の冒頭のソロから渋い深い音で入りますが、音が外れているところが散見されていて、オケのTuttiの方が劇的で、聴きごたえがありました。第2楽章はブルッフ最高峰の美しい旋律がありますが、ここでの五明のVnは音の艶は感じますが、心に刺さりませんでした。第3楽章の重音奏法の部分は少し馬力不足感が否めず、この曲の良さがあまり出ていませんでした。アンコールはピアソラで、音が少し外れても不協和音と共にきちんと聴ける曲でした。五明は輪郭のはっきりしているロマン派の曲よりは、現代音楽の方が合っているのではないでしょうか。


前半のフルシャはメガネをかけていましたが、後半のブルックナーではメガネをかけて登場します。冒頭に伸びやかで美しいHrnが出て欲しかったのですが、今日のHrnのキズや不明瞭な音が多く、期待感が後退します。「ブルックナー・リズム(2+3)」が出てきて、大合奏のところでは、今日は全体的に弦楽セクションが大活躍でした。コーダのHrnもうまく決まらず、がっかりしました。リハの映像では↓、きちんと演奏できていたのですが、残念です。

 

細かくは次回のブログに書きますが、第3楽章のホルンが活躍する「狩のスケルツォ」などでHrnのキズやTrpが滑ったりと、今日の金管セクションは厳しい結果でした。フルシャのタクトはあまり細かい指示を出さず、オケの自律性を引き出すようにしていました。「月刊都響」p.44のフルシャのインタビューでは「ブルックナーを独裁的に指揮することはできません。もちろん指揮者は方向性を示す必要がありますが、大部分はオーケストラの中から有機的にでてこなければならないからです」と言ってます。それに対して応えられていたのは、弦楽セクションで、特にCbの暴れ方は凄かったです。今年の都響は演奏能力を感じる公演が多かったですが、この日はその実力がきちんと出ていなかったように思えます。サントリーホールは満席だったようですが、ブルックナー公演にしては、カーテンコールの熱気は弱かったと思います。むしろ、昨年のミンコフスキーのブル5の珍演奏の時の方が盛り上がってました。今日の公演を「超弩級の名演!」と目と耳を疑うようなことを書いている音楽評論家がいますが、この方が寄稿する音楽雑誌はオワコン化していくと思います。明日の公演では復活していることを願います。


最後にこちらの下記の最新映像は先週の「キッシンゲンの夏」音楽祭で、病気のソヒエフの代わりに、マルクス・ポシュナー指揮によるベルリン・ドイツ交響楽団のブル4の映像です。フルシャとはアプローチは異なりますが、このくらいの聴き応えが欲しかったです↓。なかなか良い演奏だと思いますが、7/5の都響はこの映像より素晴らしい演奏でした。


《追記》この日の公演ブログは「超弩級名演」と言う音楽評論家もいれば、過去最低のブル4と言う方もいます。感性は人それぞれですが、後者の主張の方が納得感があります。


(評価)★★ 前半も後半も心に刺さらない演奏でした

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演 


出演
指揮:ヤクブ・フルシャ
ヴァイオリン:五明佳廉
東京都交響楽団
曲目
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調 Op. 26
ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調 WAB104 「ロマンティック」(コーストヴェット:1878/80年
ピアソラ:タンゴ・エチュード第3番(ヴァイオリン・アンコール)