今日は悪天候の中、紀尾井ホールにJapan Horn Sound(以下、JHS)聴きに行きました。タクシーが開場時間の10分前に着いたのですが、紀尾井ホール前には大行列ができていたのは、今日の公演が満席かつ自由席だからです。なぜ、全席自由席なのかは分からないです。日本を代表するホルン奏者の福川さんがリードするJHSは2020年3月のコロナ禍でコンサートが中止になっていた時に、日本のホルン奏者が集まって録音しようと言うことで誕生しました。今日のメンバーは日本のオケを代表するトッププレイヤーが24人も集結していて、かなり貴重な機会です↓。

まだオーケストラがシーズン中なのに、これだけのホルン奏者が一堂に集まれるのは驚きです。例えば「ベルリン・フィルの12人のチェリスト」は定期演奏会への影響を避けるために、シーズン中以外にツアーをしますが、今日のメンバーは定期演奏会が控えてる奏者が多くいるのに、この日のために演奏するのは、世界的にも珍しいコンサートです。JHSはコロナ禍の時にレコーディングしてから、コンサートが再開したので、メンバーが一度に集まる機会が無くなってしまいました。4年ぶりに復活して、昨年12月のクリスマス時期(12/23&24の第九マチネなどの本番後)に2枚目のアルバムの録音をしましたが↓、今日はこのアルバムから中心とした構成で、JHSの結成以来初のコンサートとなりました。



前半1曲目の「ルパン三世」は暗転した中でドラムだけの演奏で始まり、8人のホルン奏者とピアノによる演奏が加わり、福川さんがバンドリーダーとなって、適宜、メンバーに指示を出していました。福川さんは高音域を中心に担当して、ブラスバント風の演奏でした。録音風景が↓こちらの映像になります。

2曲目の「リベルタンゴ」は元神奈川フィル・ホルン奏者の大橋晃一さんによる編曲で、今日は会場にいらしていて、ステージ上でのトークで「ずっとホルンを吹いていると大変だから、各奏者に休みがあるように編曲している」「福川さんには難しいパートしている」などとお話しされていました。このリベルタンゴはバンドネオンの鍵盤の細かな動きをホルンで再現しているので、見るからに難しいそうな編曲で、福川さんは主旋律を中心に吹いていました。前半最後はジブリ映画の組曲「天空の城ラピュタ」ですが、19人の奏者が登場し、紀尾井ホールで聴いたことの無いような大サウンドがどんどん飛び出てきます。特に「風の谷のナウシカ」の部分はジョン・ウィリアムズのような壮大な映画音楽のように聴こえてきました。今日のコンサートは紀尾井ホールではもったいなくて、次回はサントリーホールでやって欲しいです。

(前半の19名のホルン奏者たち)


後半の1曲目は吹奏楽の大家・A.リードの「エル・カミーノ・レアル」で、4人の奏者による演奏で、スペイン音楽のコード進行で、行進曲のような勢いのある音楽です。カスタネットなどの打楽器が使われていて、さらにスペイン感が増していました。この曲と次の曲の「フィンランディア」は福川さんは降りていました。フィンランディアは今日の曲目の中で唯一のクラシック音楽かつオーケストラのための曲です。冒頭のホルンの序奏は9人による演奏で、通常のオケのコンサートでは聴けない迫力がありました。しかし、動きの早い、細かく刻む弦楽パートをホルンで吹くのはかなり難しそうで、フィンランディアをうまく再現するのは厳しいと感じました。次回はワーグナーやブルックナーのホルンの名シーンを中心に聴いてみたいと思いました。今日の最後の曲は24人のホルン奏者が全員による「オペラ座の怪人」抜粋版の立奏でした。序奏の有名な旋律から24人全員が吹いているので、ホールの床が振動しているような爆音でした。福川さんが中央で演奏しながら軽くリードはしていましたが、指揮者無しで、うまく演奏が合っているのが驚異的です。今日は15時から開場前の18:10くらいまでリハをやったらしいので、21:20までの今日のコンサートはきつい1日だったと思います。「オペラ座の怪人」のレコーディング映像は↓こちらです。


(後半の24名のホルン奏者たち)


アンコールの1曲目は「花は咲く」で、冒頭は8人の奏者が演奏しますが、その後、福川さんが登場し、後ろのプルトでソロ演奏すると、次々とホルン奏者が出てきて、ソロパートを演奏します。この曲をリモート演奏した映像が↓こちらになります。


アンコールの最後はジャズの名曲、ルイ・プリマの「Sing Sing Sing」でこちらも24人が力を完全に出しきるような大熱演でした。この曲が今日の白眉でした。


繰り返しになりますが、今日のように関東の著名なオケのホルン奏者24人が集まるチャンスは稀有なことで、こんなに幸せになれるコンサートは珍しいです。次回のJHSの公演も必ず行きたいと思います。今日の評価は★満点ですが、今年は既にこれで6回目で、かなり大名演が多い年のようです。明日から評価をさらに厳し目になります(^^)。


(評価)★★★★★ ホルンの大迫力サウンドを堪能できました

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演 

《曲目》

アニメ「ルパン三世」よりテーマ (大野雄二 作曲/挟間美帆 編曲)

リベルタンゴ(アストル・ピアソラ 作 曲 / 大橋晃一編曲)組曲「天空の城ラピュタ」(久石譲 作曲/大橋晃一 編曲)

エル・カミーノ・レアル (アルフレッド・リード 作曲 小林健太郎 編曲)

フィンランディア(ジャン・シベリウス 作曲/庄司燦 編曲)

「オペラ座の怪人」セレクション(アンドリュー・ロイド・ウェバー 作曲)
《アンコール》菅野よう子: 花が咲くルイ・プリマ: Sing Sing Sing