今日もN響定期Bプロを聴きにサントリーホールに行きました。今月のルイージによる定期演奏会はどれも充実した内容でした。コンマスがA(マロ)、 B(川崎)、C(郷古)が3人が揃い、曲目はルイージの母国・イタリアから始まり、ドイツ、デンマークと北上していくように構成されていました。Aプロのレスピーギはかなりの名演でしたし、Cプロのメンデルスゾーンはライプツィヒのゲヴァントハウスの楽団員から聞いた話だと「ゲヴァントハウスでも、メンデルスゾーンを演奏する時はそれなりの準備と仕込みが必要」と言われていて、今月の曲目はかなりのこだわりがあったと感じております。Bプロもブラームスの大曲とピアノの巨匠による演奏で充実していました。N響のBプロはある時期からは、毎回、前半はソリスト付きのコンサートになってしまい、その為、マーラーやブルックナーのような大曲を聴けなくなり、NHKホールで大曲を聴く機会が多くなってしまったのが不満点でした。しかし、昨日と今日の演奏会はこの不満を払拭してくれます。前半のブラームスは、昨日のブログの印象とあまり変わりませんので、宜しければ、こちらをご覧ください↓。

昨日の違いとしては、第1楽章でブフビンダーは少し弱い音でしたが、第2主題からは本気になってきました。第3楽章では少しオケの音のキズがありましたが、昨日同様、これだけの正統的なブラコンを聴ける機会は貴重だと思います。


後半のニルセンの交響曲第2番「4つの気質」はルイージの得意曲だそうですが、あまり実演を聴く機会はありません。標題の「4つの気質」は「四体液説」とのことらしいですが、「四体液質」は大学の一般科目「心理学」の講義で、人間が持っている4つの体液に4つの気質が対応していることについて、覚えさせられました↓。


黄胆汁質(第1楽章)は攻撃的・激しい気質、粘液質(第2楽章)は冷静・知的、黒担汁質(第3楽章)は寡黙・神経質、多血質(第4楽章)な陽気・活発な気質であるとされていますが、現代の人間に関するパーソナリティの研究では、このフレームワークは科学的な根拠はないとされています。確かに人間はそんな単純ではありません。また、ニルセンの交響曲を聴いていると、上記の気質と楽章の曲想がきちんと対応していない部分もあると感じました。今日の曲目解説には、「ニルセンにインスピレーションを与えたのは、『4つの気質を描いた滑稽な絵画』だった」そうで、この絵画を見たことはないですが、この絵画からこの交響曲が構成されているのであれば、納得できます。第1楽章は、冒頭から攻撃的な旋律で、その後、壮大な音楽と激しい音楽が入り乱れながら展開しています。コンマス川崎は、腰を上げながら、オケを牽引していました。第2楽章は一転して、落ちついた優しいロマンティックな演奏になります。第3楽章はメランコリックで、憂鬱で悲壮感が漂う旋律で始まり、苦悩や嘆きを感じるパートから、徐々に解放されていくイメージで展開されていました。ルイージのこの楽章のオケの歌わせているところが秀逸でした。第4楽章は気楽でコメディ要素のある曲想で始まり、行進曲的な演奏になりますが、中間部では急に鬱になったような気分になり、最後は明るい行進曲的な雰囲気で終わりました。人間の躁鬱的な面を表したかったのでしょうか(曲目解説では「たった一度、彼らしくなく熟考する」と書いてありました)。オーケストレーションとしてはイマイチな部分がある交響曲ですが、N響の演奏はキズもなく、素晴らしかったです。「4つの気質」と言うよりは「多重人格」をテーマにした交響曲でした。今日で今シーズンのBプロ定期は最後で、来月のBプロはマサト指揮なので行きません。


(評価)★★★★ ブラームスもニルセンも希少な名演だと思いました

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演 


出演
指揮:ファビオ・ルイージ
ピアノ:ルドルフ・ブフビンダー
NHK交響楽団
曲目
ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 Op. 15
ニルセン:交響曲第2番 ロ短調 Op. 16 「4つの気質」