ベルリンと言えば、ベルリン・フィルの本拠地のフィルハーモニーホールですが、1963年に完成し、古さを感じない、今でも革新的な建築デザインのホールです。大ホールは2400人ほど収容できますが、ホールの敷地が贅沢に使われているので、休憩時間は、全員がゆっくり歓談できますし、寒い時のクロークは、当然ですが、ほぼ全員分預かってくれます。しかし、東京のサントリーホールの大ホールは約2000人ですが、クロークで約600人分しか収容できないと言う、何ともお粗末な施設とサービスです。このホールについてはNHKなどで何度も取り上げられですので、詳しく書きませんが、ステージ裏のカンティーナは演奏後の楽団員が飲食をできるようになっていて、最近はYakitoriもありました(おそらくタイ産の鶏で加工されたタレ付きの焼鳥で、あまり美味しくないですし、これと同じ焼鳥をベルリンのホテルの朝食で出すところもあります)。


今日の本題は、来シーズンからティーレマンが音楽監督になるベルリン州立歌劇場について、少し深く取り上げたいと思います。来シーズンの発表は5/13にあるようです。

このベルリン州立歌劇場の内部は豪華に見えますが、第2次世界大戦中には完全破壊されて、今の劇場は数度の改修工事後のものです。この劇場でワーグナーやR.シュトラウスらが指揮し、その時の奏者のお弟子さんが今の楽団員であることが多く、楽団員と食事をしていると、必ず、R.シュトラウスや、この劇場で初演されたO. ニコライの「ウィンザーの陽気な女房たち」やベルクの「ヴォツェック」話が出てきて、良い意味での伝統が若い楽団員たちにも継承されているのが分かりますし、このオケの独自の音が出てくるのでしょう。この点で、新国立劇場の歌劇場付きのオケがないのは、歴史や伝統がうまく受け継がれない点でオワッていると思いますので、新国立劇場オペラは、既に前から議論されてますが、世界基準として、歌劇場付きのオケを創設すべきでしょう。

仲良しの楽団幹部と楽団員がベルリン州立歌劇場を色々と案内してくれましたので、その様子もレポートします。ヨーロッパのコンサートやオペラの休憩時間は社交場ですので、日本のコンサートホールやオペラハウスの数倍以上の休憩スペースが用意されていて、しかも、事前に飲食とテーブルの予約ができます。3月の新国立劇場の「トリスタンとイゾルデ」では長い休憩時間(45分間)のために、幕が閉じた後、観客の方々が走って椅子取りゲームしてる滑稽なシーンを見ましたが、あんなシーンはこちらではありません。演奏を聴いた直後にあの椅子取りゲームは世界的な恥だと思います。


(ベルリン州立歌劇場のバルコニー階のサロン)


(ベルリン州立歌劇場の地下のレストラン)


ちなみに、休憩時間の事前予約ができるところは増えていて、有名どころですと、ベルリン・フィルハーモニー、ベルリン州立歌劇場、ウィーン国立歌劇場、ウィーン楽友協会、ザルツブルク音楽祭、バイロイト音楽祭、バイエルン州立歌劇場などで可能ですので、新国立劇場の日本人のように走って焦る必要はありません。


ここまでがこの劇場の表の話ですが、この劇場の敷地面積と規模には脱帽です。毎日、何らかの演目を回すだけの人材や設備がさすがに整ってます。

ウンター・デン・リンデン通り沿いにあるこのベルリン州立歌劇場の左側には、↓の事務局やリハ室、会議室、食堂、ロッカーなどがある大きな3階建のビルがあります。

ここには何度かいきましたが、新国立劇場と規模の差を感じたのは、スタッフ全員が利用できるカンティーナ(食堂)の広さで、新国立劇場の5倍以上あり、公演中はスタンバイのエキストラやダンサーがコーヒーを飲んでいたり、指輪の休憩中は楽団員が軽食を食べていました。筆者も食べてみましたが、安くて美味しいです↓。ベルリンらしく、きちんとVeganメニューもあります。



この食堂のあるビルから地下で歌劇場につながっていて、その間に、舞台美術装置を保管する地下倉庫がハンパなく大きくて、これによって、毎日のように異なる演目が可能になるのでしょう。ブランデンブルク門から徒歩5分くらいの好立地にこんなに贅沢なスペースがあるのが、素晴らしいですし、これがこのオペラ劇場の力の源泉なのでしょう。



この地下道を通って、歌劇場側に入ると、楽屋があります。この入口には、オケのメンバーの出席表があり、乗り番のメンバーの名前の横にはチェック印が入っていて、入館した時に楽団員がサインをして、メンバーが全員揃っているかが、一目瞭然で分かるようになってます。


楽屋をさらに進むと、ちょうど、シャーガーのメイク中でした↓。

 

楽屋からオケのピットに入ると、こんな感じです。


さらに、メルケル元首相などのVIPが鑑賞される場合はバルコニー(日本式の2階席の下手側)に貴賓室があります↓。ここでは暖かい軽食と美味しいワインなどを頂くことができます。


このようなスペースがふんだんに使われている点で、このオペラハウスのケイパビリティを感じます。最後に、公演後に出演者のサインを求める日本人が多いですが、場所としては、オペラハウスの真裏に「A」と書いてあるアーティスト用の扉があり、ここから歌手らが出てきますので、意外とあっさりサインがもらえます。日本の春祭やサントリーホールのような厳重体制ではありません。

(↓のAと書いてあるこの扉から歌手陣らが出てきます。)

例えば、ワーグナー名歌手のアニャ・カンペはここから普通に歩いて自宅に帰って行きます。以上、今後のベルリン旅行に少しでも参考になればと存じます。