RIAS室内合唱団主催の「ヨハネ受難曲」(ドイル指揮・ベルリン古楽アカデミー)を聴きにフィルハーモニーに行きました。昨日は旧東側のクラシカルな雰囲気のコンチェルトハウスでしたが、今日は旧西側のモダンなフィルハーモニーのホールです。「ヨハネ受難曲」と「マタイ受難曲」はヨーロッパのイースターシーズンに演奏されることが多いですが、東京でも今週末にBCJがマタイ受難曲を演奏する予定です。また、ベルリンのフィルハーモニーでのヨハネ受難曲はラトル指揮・セラーズ演出による演奏を2回鑑賞しています。

↑の写真のように、通常はコンサートとして使うステージに最小限の舞台演出で、かなり考えられた展開(演技など)で演奏されました。演出のP. セラーズはその演出を「儀式化」と表現していて、渾身のプロダクションになっています。

日本でもこのような演出付きの受難曲をやって欲しいです。このラトル指揮・セラーズ演出のヨハネとマタイの公演は筆者の人生のTop10に入ります。

(2019年3月: ラトル指揮・ベルリンフィルのヨハネ受難曲。ラトルがベルリンの首席を退任してから最初の公演でした)


RIAS室内合唱団はベルリンを拠点とするラジオ局系の合唱団で、カラヤンの録音でもたびたび共演している由緒ある団体で、月に1回くらいの頻度でフィルハーモニーホールで定期演奏会と特別演奏会があります。40人ほどの合唱メンバーは、年齢・国籍が多様で、iPadの楽譜を見る人が多いですが、紙の楽譜をめくっている人もいて、自由な感じがしますが、合唱は引き締まっていて、終始、素晴らしいものでした。ヨハネ受難曲の第2部はシンメトリーな構成ですが、特に39番の合唱での”Ruht”(お休みください)のドイツ語の発音は日本人ではなかなか発音できなそうな秀逸な発音でした。そして40番の最後の合唱ではソリストも参加しての大円団でした。指揮のドイルは、ハーディングのような癖のない指揮ぶりで、軽快に進めていました。ベルリン古楽アカデミーによる演奏も素晴らしく、古楽器のプロフェッショナルさを感じます。オルガン奏者は合唱部分を口ぐさみながら楽しそうに演奏していました。今日の白眉は、30番のアルトのアリアの部分で女性チェロ奏者との演奏は切なさが溢れています。女性チェロ奏者は楽器を床に置かずに、小さなチェロを抱えながらの演奏でしたが、この楽器はこの上ない良い音が出ていました。受難曲の重要要素であるエヴァンゲリストも安定感があり、本場ドイツでのヨハネ受難曲を堪能できました。この合唱団と古楽アカデミーのコンビでの来日公演を望みます。


(評価)★★★ RIAS室内合唱団と古楽アカデミーの余裕のある素晴らしい演奏でした

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演

J.ドイル指揮 
バッハ:ヨハネ受難曲 
独/S.アリスティドゥS、D.バルベリBs、M.H.ラインホルトMs、F.ジーファースTほか

RIAS-Kammerchor

Akademie für Alte Musik Berlin

Justin Doyle Dirigent

Simon Bode Tenor

Sarah Aristidou Sopran

Dominic Barberi Bass

Marie Henriette Reinhold Mezzosopran

Florian Sievers Tenor

Matthias Winckhler Bass