今日は14時に東京芸術劇場でマーラーの「死生観」をテーマにしたマーラーの交響曲を聴いた後、家でブログを書いてから、19時からのサントリーホールでの「自然観」をテーマにした「田園」と「春の祭典」を聴きに行きました。普段、東京フィルをなるべく避けてますが、昨年のミョンフン指揮「オテロ」のオペラ演奏会形式が素晴らしかったので、今日はミョンフン指揮と言うことで期待度は高いです。しかし、会場の熱狂とは異なり、筆者からすると、申し訳ないですが、今年初のダメ公演でした。ミョンフン指揮ためか、コンマスは三浦さんと近藤さん、さらにVa首席に須田さんが乗ってる時は良いはずなのですが、今日の東京フィルはダメなところが出まくりでした。今回の定期演奏会の初日ですが、リハの時間をきちんと取っていたのかが、かなり疑わしいです。


前半の「田園」の編成は12-12-10-8-6で、この12が今日の仇となるような気がしました。後半の「春の祭典」は14-14-12-10-8でしたが、1stVnの後ろのプルトの4人の女性からほとんど音が出ていなく(コンマスの三浦さんと近藤さんが3倍以上の音を出していましたが)、結果、マイナス2名くらいの音量なので、前半・後半ともに1stVnの主旋律がきちんと描かれてませんでした。そのため、今日の演奏は全体として音のバランスが悪く、午後に聴いた都響との基礎的演奏能力の格差がはっきりしました。


田園の第1楽章は冒頭のホルンの音が汚くて(楽譜の版の違いの影響もありますが)、今日のホルンは枚挙にいとまがないほど滑ってました。ミョンフンは力を抜いた、落ちついた指揮で、後半の春の祭典に備えるためなのでしょうか、あまり激しいタクトは振らずに、アコーギクなど無しで、シンプルな演奏でした。第2楽章でもいきなりホルンのキズから始まり、フルートはくすんだ音で、田園感がありません。第3楽章ではミョンフンの指揮も何の創意・工夫もなく、隣のお客様が眠り始めました。第4楽章の嵐のシーンで、1stと2ndVnからの音が悪く、非常にバランスの悪い演奏でした。最終楽章くらいは綺麗に決まって欲しかったのですが、残念な結果でした。この曲を聴き終わると、森林で癒された居心地になるのですが、今日は全くそんな感じにはならなかったので、休憩時間はシャンパン(ローラン・ペリエ)で癒されました。サントリーが日本に輸入しているローラン・ペリエはウィーン国立歌劇場のバーやホテル・インペリアルの朝食で出てきますが、クセがないので、癒されるシャンパンです。


後半は、サントリーホールのステージに隙間が多いなと一瞬思いましたが、先程書いたように、春の祭典で14型は物足りないです。筆者の体験談で申し訳ないですが、10年以上前までは春の祭典は苦手な曲で、ストラヴィンスキーだと「火の鳥」の方が好みでした。ところが、ラトル指揮・ベルリンフィルの秀逸な「春の祭典」によって、今はこの曲が大好物です。ラトル指揮・ベルリンフィルの演奏は、東京・川崎で2回、ベルリンで3回、バーデン・バーテンで1回に行く位、春の祭典がストラヴィンスキーで1番好きな曲になりました。ラトル指揮の春の祭典に比べると、今日の演奏は田園に続いて、緩く雑なものでした。

〈以下、今日の東京フィルで感動された方は読まない方が良いと思います〉

冒頭のファゴットから体をなしていないくらい滑って始まり、途中で帰りたくなりました。ここからはホルンをはじめ、滑るシーンが多いのですし、スピード感が弱く、引き締まった演奏ではないので、あまり感想を書きたくないですが、第1部の「大地の踊り」のラストパートだけは勢いと迫力があり、うまく決まってました。第2部も、Vnセクションからの音が弱く、Cbからの音の方がよく聴こえてきたくらい音のバランスが悪いです。マエストロ・ミョンフンは、どうしてここまで酷い演奏を許しているのでしょうか。サントリーホールで聴いているのに、春の祭典らしい音圧がなく、オケとしてのパワー不足である上に、演奏能力は低いです。第2の前半では、また眠るお客様がいて、不眠症の私でも眠くなりました。「祖先の儀式」でのホルンのミスは決定的な痛手です。先月、ホルン首席の山本さんが定年退職された影響でしょうか。この曲は不協和音を優れた演奏で楽しむものだと認識しておりますが、不協和音×ミスの連続だと、こちらには雑音の塊にしか聞こえません。ミョンフンの神通力もこの曲ではあまり発揮されずに、筆者的にはとても残念な演奏でしたが、ブラボーは多く、それに応えて、「大地の踊り」がアンコール演奏されました。確かにこの踊りの音楽が唯一まともに聴けました。しかし、今日の午後の都響(東京芸術劇場)と比べると、音響条件は良いにも関わらず、東京フィルの演奏能力はかなり酷いです。奏者の能力とやる気の差以外にも、楽器のクオリティの差も違いがはっきりしました。今シーズンの東京フィル定期は興味深いものがあり、あと1公演を買ってしまいましたが、それ以降はしばらく行かないようにします。前回の東京フィル公演にもいましたが、やる気のない後列のVn奏者を見たくないです。このオケはボラティリティが高いと思っていましたが、ミョンフン指揮だからと言っても必ずしも良くないことが分かりました。春の祭典の後のブラボー喝采に腹落ちせず、会場を後にしましたが、私の脳と耳がおかしくなってしまったのかと悩みながら帰りました(^^)。評価は今年最低の評点(★★)ですが、ここまで酷い公演はなるべく避けていたのですが、グルメと同じで蓋開けてみないと分からないですね。今晩はこれを聴いて寝ることにします。 


(評価)★★東京フィルのダメな点が出てしまいました。ミョンフンのカリスマ性も薄いです。

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演


出演
指揮:チョン・ミョンフン
東京フィルハーモニー交響楽団
曲目
ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 Op. 68 「田園」
ストラヴィンスキー:バレエ音楽『春の祭典』