先週月曜日(2/6)に88歳で小澤征爾さんが他界されましたが、インバルは今週金曜日(2/16)に88歳になり、2/16の定期演奏会はインバルの88歳記念となってます。今日のコンサートは88歳記念のプレ・イベント的なコンサートで、祝典序曲に加えて、交響曲の「8番」と「8番」と洒落た企画になってあります。交響曲第8番を2つ選曲するとするなら、ハイドンやモーツァルトでは物足りないですし、ブルックナー、マーラー、ショスタコーヴィッチの8番ですと、1回の演奏会で2つの交響曲は入りません。そうなると、ベートーヴェン、シューベルト、ドヴォルザークあたりが候補になりますが、今日のベト8とドヴォ8は順当な選択だと思います。ベト8は作曲家本人が一番お気に入りの交響曲と言われてますし、ドヴォ8は大学の時の音楽の講義で「ドヴォルザークの7番まではブラームスの作法が影響されていて、新世界はアメリカの新天地の影響があるので、8番が最もチェコ音楽らしい交響曲」と聞いた記憶があります。今日のプログラム・ノートでも、寺西さんが「この作品はドヴォルザークが意識して独創的なスタイルと書法を試み、伝統的な交響曲の論理的な作法から離れて、(中略)民族的な交響曲にふさわしい独自の論理的手法を追求している」としています。この2つの交響曲が一度のコンサートで聴けるのは珍しいですし、ドヴォ8は筆者の交響曲ベスト3に入るお気に入りですので、今日は最後まで演奏会を楽しめそうです。


都響のコンサートの会場に入ると、いつものように木管セクションが調整していて、休憩時間も調整しているので、本番へこだわりが感じられます。前半1曲目の「大学祝典序曲」は、ブラームスがポーランドの大学から名誉博士号授与されたことの返礼として作曲されました。今日の演奏は、祝祭的かつ風格を感じるものでした。この曲は超有名曲ですが、実演で聴いたのは、2010年のネーメ・ヤルヴィ指揮・ベルリンフィル以来で、あまり演奏されることが少ないんでしょうか。久しぶりにこの曲を聴けて良かったです。2曲目のベト8は、ベートーヴェンが恋愛面で絶好調だった頃に作曲されたと言われていますが、この交響曲はベートーヴェンらしい重さや暗さ、深刻さがあまり感じられず、幸せオーラのある曲です。この曲でも都響の演奏は安心して聴いていられますし、良い音の塊が次々と出てきていました。特に第3楽章は、優雅で幸福感満載で、気軽に聴ける心地良い演奏でした。都響の秀逸なアンサンブルは、ドイツのオーケストラで言うと、フランクフルト放送響に近いレベルではないでしょうか。


後半のドヴォ8は、この半年間で4回目で、かなりハイペースで聴いてます(昨年10月のチェコ・フィル、11月のウィーン・フィル2回)。全体としてスコアに忠実な指揮で端正な演奏でしたが、インバルはチェコ・フィルの首席指揮者でしたから、この曲を比較的得意としているかもしれません。第1楽章では適度なアコーギクを効かせており、フルートとチェロのアンサンブルは秀逸でしたし、コーダの劇的な展開も素晴らしい演奏でした。第2楽章の中間部のコンマス・山本さんのソロも美しくて、チェコの田舎の村の風景がよみがえります。最終楽章でもフルートの柳原さんが大活躍で、昨年のウィーン・フィル来日公演のアウアーのソロより上手かったと思います。コーダでは高速かつ引き締まった演奏で大団円となりました。昨年のチェコ・フィル来日公演のドヴォ8にやや不満点がありましたが、今日の都響は極めてクリアな音を出していて、不満点は一切ありませんでした↓。ソロ・カーテンコールはありまして、ブラボーが多かったです。


88歳になるインバルの指揮はエネルギッシュで、今月から新たなマーラー・チクルスを始めるようですが、「人生100年時代」を体現するような指揮者になりそうです。2/16の88歳の誕生日の定期演奏会ではサプライズが起こりそうな予感がしますが、会場で配布されるプログラムにはバーンスタインの交響曲の歌詞は9ページほどの文量がありますし、加えて8ページの関連するエッセイは読み応えがあるので、今週金曜と土曜日の都響にいらっしゃる方は、早めに会場入りして、プログラムを事前に読まれた方が良いと思います。


(評価)★★★★ 爽やかな気分になるコンサートでした

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演

曲目
ブラームス:大学祝典序曲 Op. 80
ベートーヴェン:交響曲第8番 ヘ長調 Op. 93
ドヴォルザーク:交響曲第8番 ト長調 Op. 88