今日は、ショパン国際ピアノコンクール(以下、ショパコン)のファイナリストと共演するワルシャワ国立フィルと前回(2021年)のショパコンの指揮を担当したボレイコ、前回のショパンコンの覇者であるブルース・リウによるショパンのコンチェルト2番を聴きにサントリーホールへ行きました。都内の大雪の影響がなくなり、久しぶりの外出です。



冒頭の曲は20世紀を代表するポーランドの作曲家ルトスワフスキによる「小組曲」で、ショパンから曲目変更になって、ルトスワフスキになりましたが、初めて聴く曲ですので、楽しみでした。オケのチューニングから少し粗い音が出ていて、N響や都響の方が格上感を感じます。この曲はポーランドの放送局からの依頼されたもので、ポピュラーなテイストです。第1曲の「笛」はピッコロが鳥の鳴き声を表現し、弦楽セクションの激しいところは嵐のようで、自然を描写しているような曲です。第2曲の「万歳ポルカ」は民俗的な旋律で明るいテイストであるのに対し、第3曲の「歌」は夜を表現しているように思えます。第4曲の「踊り」は祝祭感のある曲で、ポーランドらしい旋律でした。このようなポーランドの珍しい曲をポーランドのオケがやってくれるのは嬉しいです。ですが、オケの音の解像度が粗く、おそらく楽器の質も良くないので、後半のベト7は期待薄になりました。

2曲目のコンチェルトでは、ブルース・リウがゆっくりステージを歩いて登場し、FAZIOLIを使用しての演奏です。昨年10月にブルース・リウによるショパンのコンチェルト第1番を聴いた時はトーンハレ管による演奏でしたが、この時はトーンハレ後半が素晴らしい交響曲(ベト5)を演奏したので、ブルース・リウのコンチェルトの印象が薄かったです。今日のコンチェルト2番は、完成度の低いオーケストレーションの曲で、1番ほどインパクトはありませんし、ピアノソロが際立つところはあるものの、オケとソロのマージが弱い印象があります。冒頭からオケが少し乱れた演奏をして、リウが繊細なタッチで明晰な音を出してきます。第2楽章はショパンが作曲当時に恋に落ちていたとされていますが、甘い旋律をリウがうまく表現していました。第3楽章は、楽しい曲想なので、オケも笑顔で楽しそうに演奏して欲しいのですが、そのような方は僅かで、暗い印象の多いオケメンバーでした。ラストパートでのコーダ前とコーダのリウのテクニックは冴えていました。しかし、2021年のショパコン直後の来日リサイタルでのリウは魂が込められた演奏で、会場全体を惹きつける力を感じましたが、昨年10月と今回のリウの演奏はその時より3割くらい魂が抜けた演奏で、心に響く力をあまり感じませんでした(次回のリウの公演は行くのをやめることにしました)。アンコールは指揮者のボレイコに促されて、2曲のショパンでしたが、最後のノクターンはコンミスが立ちながら主旋律をヴァイオリンで弾いて、リウが両手でピアノ伴奏をする編曲版でした。コンミスのカデンツァ部分がありますが、この時はリウの演奏がないので、ふざけてリウがコンミスの席に座り、コンミスがリウの椅子に座りながらの楽しい演奏でした。今日の公演もリウ・ファンの女性が多く、ノクターンのアンコールの後は、多くの方によるスタンディング・オベーションでした。


前半のオケの乱れや粗さもあるので、大名曲のベト7はパスして、「予防的措置」として帰宅することにしました。隣の男性の体臭もきつかったので、余計に帰りたくなりました。ベト7は2018年8月にK.ペトレンコ指揮ベルリン・フィルでによる圧倒的な名演を聴いたので、それ以来、「新世界」「チャイ5」などの超名曲と同様に、名演が期待できない限り、なるべく避けるようにしていましたので、これで良かったと思います。


次回のワルシャワ国立フィルの来日は2026年2月で、ショパコン入賞者ガラ・コンサートの予定で、次のショパコン入賞者らが演奏しますので、これはチケットが争奪戦となる人気公演になると思います。


(評価)★★★ ブルース・リウのアンコールは良かったです

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演


出演
指揮:アンドレイ・ボレイコ
ピアノ:ブルース・リウ
ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団
曲目
ルトスワフスキ:小組曲
ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 Op. 21
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 Op. 92
《アンコール》
ショパン:エチュード Op. 25-1 「エオリアン・ハープ」(ピアノ・アンコール)
ショパン(サラサーテ編曲):ノクターン Op. 9-2(ピアノ・アンコール)